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ウシモツゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウシモツゴ
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
: モツゴ属 Pseudorasbora
: ウシモツゴ P. pugnax
学名
Pseudorasbora pugnax
Kawase & Hosoya, 2015[2]
ウシモツゴ(世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ

ウシモツゴ(牛持子、Pseudorasbora pugnax)は、条鰭綱コイ目コイ科モツゴ属に分類される魚類。

分布

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日本愛知県岐阜県三重県伊勢湾流入河川およびその周辺)[2]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)は、長良川水系(岐阜県美濃)[2]。以前は、伊勢湾流入河川および濃尾平野広域に分布していたと考えられている[2]。三重県では、1996年に初めて分布が報告された[3]

形態

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体長3.24 - 5.97センチメートル[2]。メスよりもオスの方が大型になる[2]。側線が不完全[2]。メスも含めて体側面の縦縞は不明瞭[2]

頭長は体長の27.5 - 31.9 %[2]

分類

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1963年に、シナイモツゴの未記載亜種として報告された[2]アロザイムミトコンドリアDNA16S rRNAおよびシトクロムbの分子系統解析でも、これらの独自性が支持されていた[2]。2015年に、新種記載された[2]

新種記載前の1999年に発表された野生個体(小牧市庄内川水系・日進市天白川水系・豊田市矢作川水系)および累代飼育個体(養老町揖斐川水系・春日井市の庄内川水系・西尾市の矢作川水系)の6地点計106匹のミトコンドリアDNAのD-loop領域の分子系統解析では、庄内川および揖斐川水系(Type I)、天白川水系(Type II)、矢作川水系(Type III)でそれぞれ単一のゲノム型のみで他のゲノム型がみられないという解析結果が得られた[4]

生態

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3月下旬から7月上旬にかけて、石の下に卵を産む[2]。2005年・2006年の三重県での観察例から、硬く平面的なもの(石・この観察例ではレンガが用いられた)の下部に好んで産卵することが示唆されている[5]。種小名pugnaxはラテン語で「攻撃的な・好戦的な・喧嘩っ早い」の意で、産卵期のオスが攻撃的で激しく争うことに由来する[2]。この性質に由来する方言名として「けんかもろこ」がある[2]

人間との関係

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和名は岐阜市での方言名「う志もろこ」に由来し、岐阜市から大垣市墨俣町・羽島市周辺では「うし」という方言名もあったとされる[6]

農地開発や河川改修による生息地の破壊、人為的に移入されたオオクチバスブルーギルアメリカザリガニなどによる捕食などにより生息数は減少している[1]

絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[7]

出典

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  1. ^ a b Hasegawa, K., Kanao, S., Miyazaki, Y., Mukai, T., Nakajima, J., Takaku, K. & Taniguchi, Y. 2019. Pseudorasbora pugnax. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T122055564A122055572. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T122055564A122055572.en. Downloaded on 23 February 2020.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Seigo Kawase, Kazumi Hosoya, "Pseudorasbora pugnax, a new species of minnow from Japan, and redescription of P. pumila(Teleostei: Cyprinidae)," 2015, Pages 289-298.
  3. ^ 河村功一・細谷和海 「三重県宮川水系から発見されたウシモツゴ」『魚類学雑誌』第44巻 1号、日本魚類学会、1997年、57-60頁。
  4. ^ 大仲知樹, 佐々木裕之, 長井健生, 沼知健一 絶滅危惧種ウシモツゴ集団に見られた mtDNA Dループ領域の著しい単型性」『日本水産学会誌』65巻 6号、1999年、1005-1009頁。
  5. ^ 鹿野雄一・北村淳一・河村功一 「絶滅危惧種ウシモツゴの繁殖生態と保全策,および近縁種モツゴとの比較」『魚類学雑誌』第57巻 1号、日本魚類学会、2010年、43-50頁。
  6. ^ 向井貴彦 「岐阜市における歴史遺産としての絶滅危惧種ウシモツゴ」『岐阜大学地域科学部研究報告』第39号、岐阜大学地域科学部、2016年、41-45頁。
  7. ^ 環境省レッドリスト2019環境省 ・2020年2月23日に利用)