「行動遺伝学」の版間の差分
←新しいページ: 「'''行動遺伝学'''(こうどういでんがく、{{Lang-en-short|Behavioural genetics}})は、生物学においての、遺伝要因から規定される生物の行動を研究する遺伝学の一分野である。環境要因との相互作用や、遺伝要因に基づいて個体の外部に形成される環境の影響などについても研究を行う。 == 概要 == 人間の行動は、心理的影響を含め…」 |
編集の要約なし |
||
30行目: | 30行目: | ||
* [[進化心理学]] |
* [[進化心理学]] |
||
* [[犯罪生物学]] |
* [[犯罪生物学]] |
||
* [[生殖の善行]] |
|||
{{Genetics |expanded}} |
{{Genetics |expanded}} |
||
{{生物学}} |
{{生物学}} |
2024年2月2日 (金) 04:17時点における版
行動遺伝学(こうどういでんがく、英: Behavioural genetics)は、生物学においての、遺伝要因から規定される生物の行動を研究する遺伝学の一分野である。環境要因との相互作用や、遺伝要因に基づいて個体の外部に形成される環境の影響などについても研究を行う。
概要
人間の行動は、心理的影響を含めて全て遺伝子に関係する。行動遺伝学では、双生児研究やモデル生物を用いて、それらの人間の行動に関する遺伝子の影響を間接的・統計的に研究する。個々の行動特性によって遺伝子の寄与度は異なり、また、行動遺伝学において非遺伝的な環境は共有環境と非共有環境に二分され、行動研究におけるアプローチには集団間を調査するものと個人間を調査するものが存在する。
歴史
行動の違いを遺伝から考察するアプローチの起源は、フランシス・ゴルトンによる、一卵性双生児と二卵性双生児の心理の違いに関する研究である。行動遺伝学と言う単語が初めて書名として利用されたのは1960年の事であり、その後1970年に行動遺伝学(雑誌)が発刊された。[1]
20世紀の分子生物学の発展に伴い、双生児研究やモデル生物の研究の他に、マイクロアレイや次世代シーケンサーなどの技術の進歩によって一塩基多型を調査する事が可能になり、またゲノムワイド関連解析などの手法が用いられ、エピジェネティクスの概念も織り込まれるようになり、21世紀以降、様々な技術の発展と共に様々な分野に影響を与えている。
普遍的な知見
古典的な行動遺伝学には、以下の3つの原則的な知見が存在する。
- 遺伝の普遍性
- あらゆる行動の個人差には遺伝の影響が見出される
- 共有環境の希少性
- 家族が共有する環境の影響は押しなべて少ないか全くない場合が多い
- 共有環境の優位性
- 環境の影響の大部分は一人ひとりに固有で状況的な環境である[2]
また、単一の遺伝子によって大きな効果が発生するわけではなく、多くの小さな効果を持つ遺伝子が影響している事、年齢的に安定的な形質は遺伝的である事、知能の遺伝率は発達とともに拡大する事などが確認されている。[3]
また、パーソナリティ因子である新規性追求に関係するDRD4遺伝子や不安や神経質、うつ病に関与する5HTT遺伝子が確認されており、インスリン様成長因子2受容体は知能指数に関係する可能性が指摘されている。
ハタネズミにおいては、バソプレッシン受容体とオキシトシン受容体が他個体の記憶・識別や一夫一妻制、あるいは一夫多妻制の社会行動に影響する事が認知されている。[4]
脚注または引用文献
- ^ “History of Behavior Genetics|John C. Loehlin,Handbook of Behavior Genetics pp 3–11” (2009年3月25日). 2024年2月2日閲覧。
- ^ “行動の遺伝子研究―最近の動向 |安藤寿康,Japanese Psychological Review 2022, Vol. 65, No. 2, 205–214” (2022年). 2024年2月2日閲覧。
- ^ “行動の遺伝学-ふたご研究のエビデンスから |安藤寿康,日本生理人類学会誌 Vol.22,No.2 2017, 5 107 - 112” (2017年). 2024年2月2日閲覧。
- ^ “シリーズ「遺伝子」4遺伝子と社会行動 |西森克彦” (2022年). 2024年2月2日閲覧。