「コブウシ」の版間の差分
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'''コブウシ'''('''瘤牛'''、''Bos primigenius indicus'')は、[[ウシ|家畜牛]]の一種。'''ゼビュー'''(ゼブー)、'''ゼビュー牛、犎牛'''(ほうぎゅう)<ref>{{Cite web|和書|title=コブウシ(瘤牛)とは |url=https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%96%E3%82%A6%E3%82%B7%28%E7%98%A4%E7%89%9B%29-1166965 |website=コトバンク |accessdate=2022-03-29 |language=ja |first=世界大百科事典 |last=第2版,世界大百科事典内言及}}</ref>などとも呼ばれる。[[南アジア]]で家畜化された家畜牛の一系統である。熱帯地方を中心に、南アジア、[[アフリカ]]、[[マダガスカル]]、[[フィリピン]]、[[インドネシア]]、[[インドシナ半島]]、[[近東]]で飼育され、近年では[[北アメリカ]]や[[南アメリカ]]にも導入されている<ref name=ddh44>動物大百科10 p44</ref>。 |
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'''瘤牛'''(こぶうし)は、[[アジア]]の畜牛の原種の一つ。 |
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現在、世界で飼育されている家畜牛は大きく2系統に分けられる。1つはヨーロッパおよびアジア北部をその源とするコブ無し家畜牛の系統であり、もう1つの系統がこのコブウシの系統である。コブウシは耐暑性があり、熱帯性の病気や害虫に対する抵抗力が強いため、家畜化された南アジアから、東南アジア・西アジア・アフリカなどの高温地域に導入された<ref name=ddh30>動物大百科10 p30</ref>。 |
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コブ無し牛との身体的差異は、幅の狭い[[頭骨]]を持つ点、背中にコブを持つ点.長く垂れ下がった[[耳]]を持つ点、等である。加えて、首の下の長く垂れ下がった胸垂や、オスでは明確な陰茎鞘、メスではヘソ近くのたるんだ皮膚などを持つことが多い。[[和名]]の元となっている背中のコブはオスの方が大きく、[[ガウル]]や[[バンテン]]のコブが[[脊椎]]の棘突起で支えられているのとは異なり、[[筋肉]]もしくは筋肉と[[脂肪]]のみによってできている<ref name=ddh44 />。[[角]]は頭骨の両側のやや離れた位置から真っ直ぐに上方(もしくはやや後方へ)伸びる<ref>動物大百科10 p34</ref>。 |
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[[インド]]をはじめアジア南部に多く、[[ヒンドゥー教|ヒンズー教徒]]などに神聖視されている。 |
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== 歴史 == |
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'''ゼブー'''('''ゼブ''')、'''インド牛'''とも呼ばれる。 |
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[[ファイル:IndusValleySeals.JPG|thumb|left|インダス文明の[[印章]]に瘤牛の姿が見える(左側中段)。このほか、瘤牛の[[牛車]]を象った[[テラコッタ]]の[[玩具]]も多数出土している。]] |
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[[歴史時代]]に先立つ古い時代から[[インド亜大陸]]での分布が確認されており、今も昔も[[アジア]]の南部地域で数多く飼育されている。 |
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[[バビロニア]]南部の[[ウル]]の遺跡からは、紀元前3000年のものとされる[[インド (曖昧さ回避)|インド]]からコブウシを輸入したことを示す図が発見されている<ref>動物大百科10 p32</ref>。 |
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*肩に瘤と、胸から腹にかけて肉垂れがある。 |
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牛は、古くは[[インダス文明]]の担い手、その後は[[バラモン教]]や[[ヒンドゥー教]]を始めとするインド発祥の諸宗教の信仰者に神聖視され続けており、とりわけインドの人々にとって「牛」と言えば第一に瘤牛であった。 |
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*体高1.3-1.5メートル。 |
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*家畜の牛の一品種で、ヨーロッパ系の牛とは異なる。 |
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== 分類 == |
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家畜種としてのコブウシには[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]により{{Snamei|Bos indicus}} の学名が与えられていたが、現在ではかつて{{Snamei|Bos taurus}}とされていた[[ウシ|コブ無し系家畜牛]]と共に、両者の共通の祖先である[[オーロックス]]の学名{{Snamei|Bos primigenius}} が使用されるようになってきている。ただし{{Snamei|Bos indicus}} という表記も依然として一般的である<ref name=ddh30 />。 |
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== 利用 == |
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[[File:PCWBS-water.JPG|thumb|220px|[[タミルナドゥ州]]で荷車を牽くコブウシ(2008年)]] |
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インドのヒンドゥー教社会においてはコブウシの肉を食用とすることは[[食のタブー#牛|文化的な禁忌]]であるが、乳の食用や[[輓獣]]や乗用獣としての利用はタブーではなく、広く利用される。また、糞も燃料や堆肥として利用される。角はナイフの柄に加工される。 |
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一方で、暑さや病気に強いことから熱帯地域での肉牛種の改良に利用されている。 |
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インドの8割を占める[[ヒンドゥー教]]の信者が体内に無数の神が宿るとして崇拝しているため、 牛に危害を加えようとしているとして運んでいる人に教徒が襲撃する事件が起きている<ref>「ヒンドゥー至上主義、牛肉輸出大国インドに逆風」,朝日新聞,2017年4月24日.</ref>。 |
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[[ブラジル]]の[[:Category:肉料理|肉料理]]である[[シュハスコ]]では、コブ肉の部位を調理したクッピン (cupim) が供される。<!-- リンク先のシュハスコ内の表に記述あります。 --> |
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== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
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* D.M.ブルーム 『動物大百科10 家畜』 [[平凡社]] 1987 ISBN 4-582-54510-6 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[オーロックス]] |
* [[ウシ]] |
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* [[オーロックス]] |
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* [[インダス文明]] |
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コブウシ(ゼブー) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Bos primigenius indicus Linnaeus, 1758 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
コブウシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Zebu Humped cattle Indicus cattle |
コブウシ(瘤牛、Bos primigenius indicus)は、家畜牛の一種。ゼビュー(ゼブー)、ゼビュー牛、犎牛(ほうぎゅう)[1]などとも呼ばれる。南アジアで家畜化された家畜牛の一系統である。熱帯地方を中心に、南アジア、アフリカ、マダガスカル、フィリピン、インドネシア、インドシナ半島、近東で飼育され、近年では北アメリカや南アメリカにも導入されている[2]。
特徴
[編集]現在、世界で飼育されている家畜牛は大きく2系統に分けられる。1つはヨーロッパおよびアジア北部をその源とするコブ無し家畜牛の系統であり、もう1つの系統がこのコブウシの系統である。コブウシは耐暑性があり、熱帯性の病気や害虫に対する抵抗力が強いため、家畜化された南アジアから、東南アジア・西アジア・アフリカなどの高温地域に導入された[3]。
コブ無し牛との身体的差異は、幅の狭い頭骨を持つ点、背中にコブを持つ点.長く垂れ下がった耳を持つ点、等である。加えて、首の下の長く垂れ下がった胸垂や、オスでは明確な陰茎鞘、メスではヘソ近くのたるんだ皮膚などを持つことが多い。和名の元となっている背中のコブはオスの方が大きく、ガウルやバンテンのコブが脊椎の棘突起で支えられているのとは異なり、筋肉もしくは筋肉と脂肪のみによってできている[2]。角は頭骨の両側のやや離れた位置から真っ直ぐに上方(もしくはやや後方へ)伸びる[4]。
歴史
[編集]歴史時代に先立つ古い時代からインド亜大陸での分布が確認されており、今も昔もアジアの南部地域で数多く飼育されている。
バビロニア南部のウルの遺跡からは、紀元前3000年のものとされるインドからコブウシを輸入したことを示す図が発見されている[5]。
牛は、古くはインダス文明の担い手、その後はバラモン教やヒンドゥー教を始めとするインド発祥の諸宗教の信仰者に神聖視され続けており、とりわけインドの人々にとって「牛」と言えば第一に瘤牛であった。
分類
[編集]家畜種としてのコブウシにはリンネによりBos indicus の学名が与えられていたが、現在ではかつてBos taurusとされていたコブ無し系家畜牛と共に、両者の共通の祖先であるオーロックスの学名Bos primigenius が使用されるようになってきている。ただしBos indicus という表記も依然として一般的である[3]。
利用
[編集]インドのヒンドゥー教社会においてはコブウシの肉を食用とすることは文化的な禁忌であるが、乳の食用や輓獣や乗用獣としての利用はタブーではなく、広く利用される。また、糞も燃料や堆肥として利用される。角はナイフの柄に加工される。
一方で、暑さや病気に強いことから熱帯地域での肉牛種の改良に利用されている。
インドの8割を占めるヒンドゥー教の信者が体内に無数の神が宿るとして崇拝しているため、 牛に危害を加えようとしているとして運んでいる人に教徒が襲撃する事件が起きている[6]。
ブラジルの肉料理であるシュハスコでは、コブ肉の部位を調理したクッピン (cupim) が供される。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- D.M.ブルーム 『動物大百科10 家畜』 平凡社 1987 ISBN 4-582-54510-6