Tu-154 (航空機)
Tu-154(ツポレフ154;ロシア語: Ту-154は、ソ連で開発され、2013年までロシアで生産されていた[1]3発ジェット旅客機。
北大西洋条約機構 (NATO) の命名したNATOコードネームでは、「ケアレス(careless:不注意な、軽率な、の意)」と呼ばれた。
概要
編集Tu-154は、ツポレフ設計局が世界市場への進出を目指して開発したTu-134双発旅客機の拡大発展型である。同機で採られたジェットエンジン2基を機体後部両側に備えるという方法を踏襲し、垂直尾翼基部に3基目のエンジンを追加した尾部集中装備方式の機体である。この方式はボーイング727やホーカー・シドレー トライデント等各国の旅客機が採っており、非常にスマートなデザインとして一時期大変好まれた旅客機のスタイルであった。Tu-154M型になってからは、第3エンジンの空気取り入れ口が縦長の楕円形とされ、この機体の特色となっている。 同時期に空を飛んでいたホーカー・シドレー トライデントやボーイング727とは規模感やエンジンの設置方式は似ているが[注釈 1]、下反角のついた主翼や不整地着陸を意識した三軸ボギーの主脚を有するなどの特徴がある。
既に初飛行から40年以上が経過しているが、同時期に初飛行が行われたアメリカ合衆国のボーイング737のようにエンジンやアビオニクスなどを改良した最新型が相次いで投入され、エンジンを新型に換装し騒音対策を施し、さらにアビオニクスを近代化させたTu-154Mシリーズが旧東側諸国を中心に運用され続けた。生産は1990年代に入ると後継機のTu-204の生産が開始されたこともあり、1998年以降は少量に留まっているものの2013年まで行われた。
主翼下にエンジンを懸垂しないスタイルから、駐機状態での胴体部の高さが低く、運用にあたって特別な地上設備を多く必要としない[3]という特色があるために、設備の整わない空港での運用が容易で、そのためもあってかかつての共産圏の航空会社などで現在も多数が使用されている(しかし、旧共産圏は、マクドネル・ダグラスのMD-80シリーズに置き換える例も多い)。
日本にも騒音対策を施したTu-154Mシリーズが多数飛来しており、日本へはウラジオストク航空がウラジオストクとハバロフスクから新潟へ路線を就航させていた。騒音対策がなされていないTu-154B-2もかつては多数飛来していたが、現在は日本の騒音規制の法律上の問題から、政府専用機など許可を得た特別機以外は飛来できなくなっている。
また、石油系燃料に代わる代替燃料を動力とすることを目的に開発し、1機のみ生産された試験機のTu-155は現在ロシアで開発中の宇宙旅客機の母機としても使用されている。
2020年10月28日、アルロサ航空で使用されていた最後の機体が、ノボシビルスク-ミールヌイ間でラストフライトを行い、ロシア各地から航空ファンが集まり満席となったという。[4]
派生型
編集Tu-154
編集1966年に発表され、1968年10月4日に初飛行した機体でエンジンはNK-8-2 (9,497kg)。アエロフロートは1971年5月に貨物輸送機としての運航を開始し、翌1972年2月9日に旅客輸送を開始した。
Tu-154A
編集1973年に発表され、1974年4月からアエロフロートで使用開始し、翌年から運用開始された。エンジンはNK-8-2U (10,496kg)、燃料搭載量は39,750kg、電子機器として自動着陸装置を搭載しカテゴリーIIまでは対応している。
Tu-154B
編集Tu-154Aの装備を近代化し、最大離陸重量を98,000kgに増加させ、客室を延長し、座席数を増加させた機体。
Tu-154B-2
編集Tu-154Bにアメリカ·コリンズ社製自動操縦装置を装備した機体。
Tu-154M
編集エンジンをD-30KU-154-II (10,614kg) に変更、燃費を向上させることにより航続距離を延長、前縁スラットを小型化し、スポイラー面積を拡大、APUの位置変更、エンジンの空気取り入れ口の開口部の拡大、慣性航法装置 (INS) 3基の標準装備、等の近代型改修を行った機体。1984年から生産が開始され、その後1990年代に入り、アビオニクスを中心に更に近代化を施された改良型のM-LuxやM-100が投入された。
Tu-154Mシリーズは、比較的機齢が新しい上に、EU諸国で適用されている騒音規制である「ステージ3」や「ステージ4」などの騒音規制もクリアしている為、旧型の機体の更新の進んでいないかつての東側諸国の航空会社などで現在も多数使用されている。
Tu-155 / Tu-156
編集スペック
編集Tu-154
編集- エンジン: クズネツォーフ設計局製 NK-8 ターボファンエンジン×3
- 推力: 93.2 kN (20,950lb)
- 座席数: 158-167
- 最大離陸重量: 90,000 kg
- 巡航速度: 975 km/h (527kt)
- 航続距離: 5280 km (2850nm)
Tu-154M
編集- エンジン: ソロヴィヨーフ製 D-30KU-154-II ターボファンエンジン×3
- 推力: 103.6 kN (23,380lb)
- 座席数: 180
- 最大離陸重量: 100,000 kg
- 巡航速度: 950 km/h (513kt)
- 航続距離: 6600 km (3563nm)
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Tu-154B-2 コクピット
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Tu-154B-2 客室
運用国
編集- 中国人民解放軍空軍 - 空軍34師(もと中国聯合航空として運航していた機体を電子偵察機に改造)。胴体下部にフェアリングを備えており、合成開口レーダー、ELINTシステムを装備しているとみられている[5]
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アエロフロート・ソビエト航空塗装のTu-154B-2
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アエロフロート・ロシア航空(旧塗装)のTu-154M
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ウラジオストク航空(旧塗装)のTu-154M
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ウラジオストク航空(新塗装)のTu-154M
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ブルガリア航空のTu-154M
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タジキスタン航空のTu-154M
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プールコヴォ航空のTu-154M
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カヴミンヴォディアヴィアのTu-154M
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インターフルークのTu-154M
事故
編集1994年以降、判明しているだけで16機が事故・誤射・テロによる墜落を起こし1720人が死亡している[7]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ Rabinowitz, Jason (February 26, 2013). “Last Tupolev TU-154 Delivered – 16 Years After Production Ceases”. Airline Reporter 14 APRIL 2018閲覧。
- ^ 渡辺光太郎 (2021). “ロシア航空史に燦然と輝いたTu-154という価値”. 月刊AIRLINE 41 (1): 104.
- ^ エンジンを翼下に懸垂する形式の機体はどうしても胴体部の地上高が高くなるため乗降口が高い位置に来る。このため大型のタラップやボーディング・ブリッジといった設備が必要になる。また、エンジンの地上とのクリアランス(隙間)を確保しなくても良い分、脚を短く出来るため、機体の重量/強度的にも優れる。一方でエンジンの整備に特別な足場を必要とするというデメリットが生ずる
- ^ Вести. Ту-154 выполнил последний пассажирский рейс в РоссииロシアTVのニュース(2020年10月28日放送)
- ^ “中国のSu-30や爆撃機、情報収集機が先島諸島の周辺を飛行、空自機が対応”. Flyteam (2016年11月26日). 2023年12月16日閲覧。
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 179-180. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ Recent Tupolev-154 crashes(2010年4月13日時点のアーカイブ)
関連項目
編集Tu-154同様、尾翼付近にエンジンを3発設置する旅客機。