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ヒットマンのペインのレビュー・感想・評価

ヒットマン(2023年製作の映画)
4.3
“みんなどこかちょっとずつイカれてる。
少しでもイカれ方が合う人を探すか、自分のイカれ具合にハマる人を見つけよう”

コーエン兄弟やスティーヴン・ソダーバーグ(『アウト・オブ・サイト』等)、後年のウディ・アレン(『教授のおかしな妄想殺人』等)をまぶしたようなラブ・クライム・コメディ。

一見、ゆるっと軽い雰囲気に包まれた小品の体をなしていながら、ふと暗黒面に踏み込む瞬間が多々あり、これまでのリチャード・リンクレイター監督作同様、人生哲学が炸裂する。『スクール・オブ・ロック』でも共に仕事をした、サンドラ・エイデアーの編集の見事さ、主演・脚本も兼ねたグレン・パウエルの企画力も光る。

撮影は、かの『6才のボクが、大人になるまで。』以降から組み続けているシェーン・F・ケリー。その『6才のボク~』以降、“誰もが認めるマスターピース”的なるものを撮るのを自ら放棄したかの如く、特異で幸福(しあわせ)な老後キャリアを積むリンクレイター監督に目が離せない←

前々作の、“ケイト・ブランシェットひたすら可愛い映画”こと『バーナデット ママは行方不明』は、嫌いではないものの、流石にフックが無さすぎる映画で困惑したが、Netflixと組み出した次作の『アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー』では、お得意のロトスコープアニメを駆使した美しい自伝的作品を撮りあげた。からの本作『ヒットマン』(Netflix)である。これまたジャンル映画的枠組みの中で、軽やかに己の作家性を貫いていて感心させられた。

哲学的であり、映画論映画でもある本作『ヒットマン』。劇中でモンタージュされた殺し屋映画は計8本→『拳銃貸します』『メカニック』『殺しのテクニック』『殺しの烙印』『拳銃は俺のパスポート』『続・夕陽のガンマン』『ダイヤルMを廻せ!』『ヒットマンズ・レクイエム』…。

しかしグレン・パウエルは、今年現時点でも、『恋するプリテンダー』『ツイスターズ』『ヒットマン』と日本公開され、目覚ましい活躍ぶり。自身の“幅”の広さを見せつけている🕺

年間ベスト10を選ぶ際には、どれか1本に絞らねば…とも思わされるくらいで、『ツイスターズ』もどこまでも正攻法な現代娯楽作として最高だったが、本作『ヒットマン』はグレン・パウエルの持ち味が最も発揮されている…うーん🤔
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