平経盛(たいらの つねもり、1124~1185)とは、平安時代後期の武将・歌人である。
平忠盛の三男で、平清盛の異母弟。平家物語で有名な平敦盛の父。
母親の身分が高くなかったことや、争いを好まない控えめな人物だったことから、官位は異母弟の平教盛・平頼盛に比べて遅かった。貴族化する前の伊勢平氏では珍しく、武勇より和歌や管弦に秀でるなど風流をこよなく愛した。自らも歌集を編んだ他、百人一首にも名を残す藤原清輔・徳大寺実定・藤原俊成らとも親しく、平家滅亡直後に編纂された「千載和歌集」では、異母弟の平忠度と共に詠み人知らずとして自作の和歌が入選した。その40年後に編纂された藤原定家の「新勅撰和歌集」では、晩年に任じられた役職から修理大夫経盛の名義で、世間にはばかることなく無事に名前入りで歌が載せられている。
経盛は、父・忠盛が当時社会的地位の低かった平家の名を上げる創生期から、兄・清盛によって繁栄を極め、その死後に一門が没落の一途を辿り、壇ノ浦で滅亡するまでの一部始終を見届けた数少ない人物である。平家一門が栄華を極めていた頃は、歌合わせに参加して和歌を詠んだり、得意の笛や琵琶を演奏するなど穏やかな日々を送っていたが、そんな平和なひとときは一家の大黒柱である兄・清盛の病死によって崩れ去る。
清盛の死後は平家一門の長老となった経盛だが、一転して逆賊となり、都を追われた平家一門の中で、経盛は「ふるさとを 焼け野の原に かへりみて すゑもけぶりの なみぢをぞゆく」という和歌を詠んだと、平家物語には記されている。住み慣れた六波羅の屋敷に火を放ち、若い頃から兄・清盛の元で苦労して築いた栄華が一瞬にして灰燼と化したことを、彼は諸行無常の思いで見つめたに違いない。
経盛の悲劇はまだ終わらなかった。一ノ谷の合戦で、経盛は安徳天皇を庇護するため海上に止まっていたが、一ノ谷で戦っていた息子の経正、経俊、そしてまだ16歳の末子・敦盛と3人の息子が相次いで戦死してしまう。彼にとって救いだったのが、敦盛を討ち取った熊谷直実が、その死を哀れんで首を丁重に経盛の元へ送ったことである。とは言え、我が子に先立たれた老父・経盛の悲しみは如何ばかりであっただろうか。生きる気力を失った彼はその翌年、平家最後の戦いとなった壇ノ浦の戦いで、同じく一ノ谷で息子の平通盛を失った弟の教盛と手を取り合って入水、海の水底へと消えていった。
2012年の大河ドラマ「平清盛」では、先年の連続テレビ小説「カーネーション」のヒロインの夫役で知られる駿河太郎(笑福亭鶴瓶の息子)が演じた。初登場した時から、父・忠盛や兄・清盛に誰だっけ?とその名を忘れられそうになるなど、存在感の無い人物として、かえって注目されるようになった。その後も、その場にいるのにたびたびスルーされそうになるなど、影の薄さは相変わらずで、清盛の側近・平盛国に「ちゃんと出番がある」とフォローされることもあった。九条兼実らに和歌などの勝負を受けさせられた時には、得意の笛を披露するも、最大の見せ場は弟の忠度に持って行かれるなど、中途半端な扱いを受けることも多い。その一方で、自分より先に参議に昇進した弟・教盛の出世を喜ぶなど、弟思いの謙虚で心優しい人柄も見られた(どす黒い嫉妬のオーラが全開だった、下の弟・頼盛とは対照的である)。
経盛が影が薄いのは、なにも大河ドラマだけに限ったことではない。広辞苑では、兄の清盛は言うまでもなく、弟の教盛・頼盛・忠度は載っているのに、なぜか経盛だけは広辞苑に記事が無いのである(次兄の平家盛も広辞苑に名前は無いが、家盛は早死したために詳しい人物像がよくわかっていない)。ちなみに、子の敦盛は有名人であるため、こちらはちゃんと広辞苑に名前が載せられている。いずれにせよ、その扱いがどこかのアニメの主人公に似ているためか、実況では経盛が出てくるたびに\アッカリ~ン/のコメントが流れてくる。いい人だけど不憫なところは確かに通じるものがある(その不幸度は段違いだが・・・)。
吉川英治の小説「新・平家物語」では地味ながらも、長期にわたって登場するため出番もそこそこ多い。本作では忠盛の次男で、忠盛と祇園女御の間に生まれた子供という設定になっており(つまり清盛の同母弟)、史実と違う点もある。若い頃は病弱で大人しい性格から、清盛にとっては頼りない弟だった。清盛の死後は、平家の最長老として一門の栄枯盛衰を見届け、弟・教盛が先に戦死したため、清盛の妻・二位の尼こと平時子が安徳天皇を抱いて海に飛び込むと、それに従うように入水した。
これを原作とする1972年の大河ドラマ「新・平家物語」では、少年時代を郷ひろみが、成人後は古谷一行が演じた。郷ひろみはこれが芸能界デビュー作であり、同年11月に初シングル「男の子女の子」が大ヒットして有名になる前のことである。また、古谷一行にとっても、ブレイクする前の映像が残っている数少ない出演作であり、NHKが映像を残している本作の総集編は、ともにレアな映像作品と言っても過言では無い。
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2 ななしのよっしん
2012/09/26(水) 11:22:50 ID: a7XImKQYlp
3 ななしのよっしん
2012/10/05(金) 17:35:39 ID: v5zweMv3wJ
小説の「新・平家物語」では平家滅亡を見届けたりと
なかなか重要な人として描かれてるんだね
今回その役目は盛国に取られそうだがwww
でも記事にあるように「平家草創期から滅亡までを見届けた平敦盛の父」
と考えると胸が熱くなるな
4 ななしのよっしん
2014/12/22(月) 16:40:38 ID: FUzQOM9+p7
新平家だと老経盛として都落ちあたりから一気に出番が増えるな
しかしこの薄さは何事だw
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最終更新:2025/01/31(金) 15:00
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