ラストエリクサー症候群とは、ゲーム中の貴重なアイテムを最後まで取っておいて結局使わないという
「もったいない病」のことである。
ラストエリクサーは人気ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズに出てくる(初登場はFF6)アイテムで、味方全員のHPとMPを全回復(蘇生と状態異常の回復は不可)してくれる非常に貴重なアイテムである。
ゲーム中で最強格の回復アイテム、または危機を立て直す最終兵器とも呼べる代物。
ゲーム内のお店では一切売っていないため、宝箱などから手に入れるしか入手方法がない。
そんなゲーム中屈指のレアアイテムを、ここぞという場面まで使わずに温存したままゲームを進め続け、ラスボス戦でも結局使わずにゲームクリアまで所有したままでいることを俗に「ラストエリクサー症候群」と呼ぶ。
決断力の麻痺、貯めこみ、というのはゲームの世界に限らず現実世界でもありうることで、損失を回避したいあまりリスクを取らない行動をとることを心理学では「損失回避バイアス」と呼ぶ。
または選択肢が多いほど、不幸を感じやすくなる状態のいわゆる「選択のパラドックス」と関連していると言われる事もある。重要な選択肢が多くなると時には、決断を先送りにしてしまったり必要な行動を起こしにくくしてしまうのである。
または上記と逆に、「価値が低いと思っていたアイテムを何も考えず消費・売却・廃棄してしまい、後で本当にそれらが必要な場面に直面して泣きを見た」という事例は「逆ラストエリクサー症候群(逆ラスエリ)」と呼ばれる事もある。
主にゲーム中で入手できる数が著しく限られる貴重品&一度使うと無くなる消費アイテムや、一点もののユニークアイテムが特にラストエリクサー症候群の対象になる事が多い。
皆さんご存じ大人気ゲーム「ポケモン」。その中でも超レアアイテムである「マスターボール」はポケモン捕獲率100%という代物。基本的にメインストーリーで1個しか入手できないという、間違いなくラストエリクサーよりも貴重なアイテムである。使いどころが悩ましいアイテムではあるが、ミュウツーなどのレアポケモンに使うのが一般的。ストーリー外ではIDくじなどの運要素も絡むが複数入手が可能で、さらにサブロムを駆使して入手した分をメインロムへ輸送するなど複数入手に苦心するトレーナーもいるという。
技をポケモンに覚えさせることができるアイテム。
買い物で手に入るわざマシンもあるが、ダンジョンに落ちていたりジムリーダーに勝利した証としてゲットするわざマシンは強力な技が覚えられる代わりにゲーム中1個しか手に入らないユニークアイテムである事がほとんど。特に初代の頃は「がまん」「10まんボルト」「だいもんじ」など、このアイテムを使うしか覚えられる手段が存在しない強力な技もあった為ある意味マスターボールに並ぶレアアイテムと化しており、最後まで使用を躊躇うトレーナーもいた。こちらもサブロムを駆使して複数入手する手法がとられることもある。なお、使ってもなくならない「ひでんマシン」も存在する。
第一世代から第四世代までが使い捨て仕様で、第五世代から第七世代まで全てのわざマシンが使ってもなくならないように仕様変更。第八世代ではわざマシンに加えて従来の使い捨て仕様の「わざレコード」が登場。さらに第九世代では再び使い捨て仕様となったが、素材をもとにわざマシンを作成することが可能となり、全てのわざマシンの複数入手が可能となった。
ドラクエシリーズの「種」アイテム、ファイナルファンタジーシリーズの「〇〇アップ」アイテム、MOTHER2の「〇〇カプセル」、世界樹の迷宮シリーズの「宝典」アイテム、シャドウハーツシリーズの「刻印」などといった風な、キャラクターのステータスの基礎値を底上げさせるアイテム全般。キャラクターを限界ステータスまで強化するには欠かせないアイテムだが、もったいなくて使用を躊躇ってしまうことが少なくない。
宝箱から拾ったり強力なモンスターを倒せばドロップする事もあるのでがんばれば数を揃えられる作品もあるが、希少価値が高くてなかなか使いたくない、という事例はラストエリクサーやマスターボールと並んで起こりうることだろう。
また、ゲームによってはストーリーを知らない作品を初見でプレイする時に貴重なドーピングアイテムを投入して強化させたキャラが離脱して二度と戻ってこなくなり、投資したアイテムが無駄になってしまうという悲劇もあるので、こうした初見殺し要素もドーピングアイテムを「必要なタイミングが来るまで取っておきたい」「育成方針が固まるまで温存したい」と使われなくなるために一役買っていることがある。
なお、ほとんどのゲームで当てはまると思われる話だが、ステータスを強化するアイテムは装備品などによるプラス補正が小さいゲーム序盤のうちから使った方が相対的に恩恵が大きい。宝の持ち腐れに陥ってレアアイテムと一緒にアイテム欄を圧迫するくらいならば、好きな推しキャラをどんどん強くしよう。
シューティングゲームでは画面を飛び交う弾幕を消滅させたり、強力な攻撃を繰り出したりといったボムが搭載されていることが多い。
その、ボムを使わずにミスしてしまう事例を「抱え落ち」と呼ばれる。
「風来のシレン」「不思議のダンジョンシリーズ」などのローグライクゲームでは、ミスしたら手持ちのすべてのアイテムも装備品も消滅してしまい1からのリスタートとなってしまうタイトルが多い。
そのため、上記の「抱え落ち」と同様でレアアイテムや使えば生存できたはずのアイテムを出し惜しんだまま不慮の事故や判断ミスでレアアイテムを含むすべてを失ってしまう、という失敗がローグライクゲームの世界では数多い。必要な場面に直面したら、使えるものはすべて使い最適な判断を下して生き延びていこう。
スパロボシリーズでは「リペアキット」「プロペラントタンク」のような、HPやEN、武器の残弾やパイロットの精神ポイントなどを回復する効果を持つ使い捨てアイテムと同じ形式の強化パーツが登場する。装甲や運動性など機体のステータスを強化するパーツの代わりに、使い捨てアイテムを搭載して回復手段を持たせることが可能、という事である。
多くは「終盤の強敵や最終面に取っておきたい」と残したまま一度も使用せずクリアしてしまうことになるが、熟練プレイヤーの場合はこの消費アイテムを上手く使いこなしてやり込みプレーや速攻クリアを実現する事もある。
近年のシリーズでは「1マップで1回のみ使えるが、ステージクリア後に戻ってくる(=使用しても無くならない)」方式に変わったのだが、強化パーツの売却も可能になって以降のタイトルではさっさと換金されてしまう事も多いかもしれない。
またシリーズによっては、大金を投じて改造した機体や自軍のエースとして活躍したパイロットが離脱してしまい二度と戻ってこないという悲しみもあるので、強いけど原作で裏切ってたキャラや離脱しそうな機体を迂闊に改造したり戦闘へ出撃させることができない、というジレンマも発生する。
(参考 →「クワトロは裏切りません」)
なお近年のシリーズでは、永久離脱する機体が改造されていた場合は改造に費やした資金が払い戻される親切設計になった。
ラストエリクサー症候群はゲームのみならず、リアルの生活や仕事でも無関係ではない。
捨てるのがもったいない、いつか必要になるかもしれないと思って、何か月も何年も使っていない日用品(家電、衣服、靴、化粧品、本、ゲームなど)を手放せずに貯めこんでしまう。その結果無駄なものを溜め込んでしまったり家の中を圧迫したり、といった弊害が出てしまう。
「家電や衣服は腐らないし…」と思うかもしれないが、物は月日が経てば必ず劣化する。靴が加水分解で突然崩壊することもある。しかもトレンドは年々変化するため、服や靴が流行遅れで周囲にダサいという印象を与えかねない。
または高級なワイン(酒)やおいしいお菓子を「特別な日に食べよう(飲もう)」と冷蔵庫にずっと保存し続けたまま賞味期限を過ぎてしまったり、商品券や会員カードのポイント、電子マネーなどを使わずに未使用のまま利用期限切れまで腐らせてしまったりと、身近にもラストエリクサー症候群と同様かそれに近い事例は見受けられる。
またビジネスの分野でも、経営者やリーダーが必要な決断を必要なタイミングで下せなかった結果、チャンスを逃したり競合他社に商談の機会や市場シェアを奪われてしまったり、という事例も見かける事だろう。
登山に出て遭難してしまった登山家が遺体で発見されたときは、遺品の中に開封されていない携帯用食料や未使用の装備品を十分に抱えたまま凍死していた事例が少なくなく、この類のニュースが報道されると「もったいないと思ったのかもしれないけど、この食料を体が動かせて開封できるうちに食べれば生存できたかもしれないのでは?」と評される事もある。いざという時のために食料を残していたつもりが、その「いざという時」が訪れた時にはもうすでに食料を荷物の中から取り出したり、開封する体力すらも残されていなかった、というわけ。
もちろん体力が残っているうちに食料を食べて装備や道具を適正に使用すれば助かった可能性はあるし、最善を尽くしたところで結局間に合わなかったかもしれないしで、どうなったかは誰にもわからないのだが。
いずれの事例でも一つだけ確実に言えるのは、現実世界にセーブポイントは無いので使いたいと思った時は速やかに使用するのが最善手である。という事であろうか。
特に先述の登山の件や、病気やケガなど命に直結する場面に関しては、リアルの実生活ではゲーム画面のように自身の体力ゲージやステータス画面は見れないので、体力や判断力が健全なうちに最善の判断を自身で下すしかない。
一言で言えば「宝の持ち腐れ」のことわざを体現したような心理状態に陥る事がほとんどだが、中には「レアアイテムが無くても困ってない」などのケースも該当する事がある。以下に事例を紹介。
ラストエリクサー症候群の理由の筆頭。再入手が困難、もしくは二度とできないアイテムをほいそれと使うことができない。
その結果ラストエリクサーを使わずに敗北してしまったら、ラストエリクサーを使えば勝てる戦いでもレベルを上げて一番いい装備を揃えて、戦略を考え抜いて再挑戦するプレイヤーも少なくない。
未知のゲームを初見で遊ぶ場合はストーリー途中のボス戦でピンチに陥った時に「このあとにはさらに強いボスがいるんだろうな…」「ここでこんなに苦戦するなら、こんなとこでラストエリクサー使ったら後のボス戦なんて絶対勝てない」などと、先の読めない展開でつい考え込んでしまい、様子見を兼ねてアイテムの使用を躊躇ってしまう。
なおラスボス戦でもラストエリクサーを使わない場合は、ラスボスよりさらに強い裏ボスなどのエンドコンテンツに取っておきたい、アイテムコレクターとして最低1個はすべてのアイテムのストックを残してクリアしたいなどの事情・心理が働く事例もある。
ラストエリクサー自体が最上級の回復アイテムなので、プレイヤーによっては「使ったら負けかなと思ってる」という心理が働いてしまい、ボス戦でもないバトルや不慮の事故でもパーティが危機に陥ったらラストエリクサーなしで事態をつい切り抜けたくなってしまう。
いろんなゲームを長く遊んでいる経験豊富なプレイヤーともなれば、ラストエリクサーや「MOTHER2」のペンシルロケット20などといった強力なアイテムを使用する事に屈辱や敗北感を覚える人もいるのではないだろうか。「ここをノーダメージ(ノーミス)でクリアできないのはカッコ悪い」「アイテムなしで突破できてこそカッコいい」というような、完璧主義にも似た考え方から強力なアイテムや手段(スキル)を使用する事を「失敗」「ギブアップ宣言」と感じるようになるためである。
手元に揃った強力なアイテムをガンガン使って「俺TUEEEE!」を満喫するのも、ラストエリクサーのような救済要素を縛ってクリアするのも、ゲームの遊び方は人それぞれなので他人の視線や評価を気にせず自分が満足できる遊び方を選ぶのが良いだろう。
「デビルメイクライ」シリーズの消費アイテムや「ロックマンゼロ」のサイバーエルフなど、ゲームによっては「使ったら評価点が下げられてしまうので、どうしてもクリアできない時の最後の手段以外に使いたくない」という事例もある。
ラストエリクサーが登場するファイナルファンタジーシリーズに限らず、ほとんどのゲームはレベルを十分上げキャラクターを養成して一番いい装備やアイテムを揃えて挑戦すればラスボスにも必ず勝利できるようデザインされているので、レアアイテムがなくてもクリア可能だから使わない、ということ。
「ここぞという場面のために取っておきたい」という用心は大切だが、大抵はその「ここぞという場面」に一度も直面しないままゲームを完走してしまい、エンディングを見ながら「結局使わなかったな…」と振り返る事になるのである。
そもそもラストエリクサーの出番となるような「パーティ全員が戦闘可能だけどHP・MPが全員残りわずかしかなくなる」という状況自体、よほど高難度のステージや最高難易度モードでもない限りそうそう滅多に発生するものでもないだろう。またゲームを実際にプレーしたプレイヤーの感想に「HPやMPは回復できても、戦闘不能から蘇生できなかったり、状態異常を治療できないのが痛い」という意見もある。
ゲームによっては「どうやっても絶対に勝てない」ように設定されている、いわゆる負けイベントも存在する。
必ず負けるとわかっていればアイテムを使わずさっさと負ける、という最適な進め方もできるが、事前知識のないゲームを初見プレイで遊ぶ時はそれもわからず、強敵やHPが膨大なボスキャラが出現すると「まさかこれ負けイベント?」という疑いが浮かび、アイテムを無駄にしないようにしたくなってしまうのである。
とにかくケチ、いやドケチの産物と言える性質「ラストエリクサー症候群」。我慢や忍耐を美徳とする日本人らしい考え方ではあるが、悪く言えば上述の通り宝の持ち腐れ、単なる貧乏性である。
ラストエリクサーだろうがドーピングアイテムだろうが、そしてお金だろうが、持っているだけでは何も意味が無い。無駄遣いだったかどうかは、危機を乗り越えたりクリアした後から反省すればいいことである。ゲームオーバーになってしまったら、それを反省する機会すら無いことが多いのだから。
モノには使いどころが必ずある。ゲームでも実生活でも後悔を恐れず「今」この時を楽しみ、最善の結果を信じて行動しよう。
天国やエンディングにお金は持って行けないことを肝に銘じておきたいものだ。
この記事は第854回の今週のオススメ記事に選ばれました! よりニコニコできるような記事に編集していくために、 躊躇いも迷いも捨てられるようにしましょう。 |
掲示板
59 ななしのよっしん
2024/12/24(火) 22:54:44 ID: TKuocg8zZm
高価なエリクサーや希少なラスエリを使うような頃はHPの回復手段は結構あって、HP回復はおまけでMP全回復がメインな事が多い気もする(MPの大回復手段は割りと貴重)
HPは小ダメージの蓄積なら都度小回復すればいいし、コンスタントに大ダメージが来るなら希少なアイテムに頼ってるようでは数が足りなくなる
MPは長期戦や消費の激しい魔法を使う必要があって回復や防御で魔法を途切らせたくないような場合は少なくとも単体回復を使う機会が必ず来る
ただ全体回復の場合、同時にMPが尽きる場面があるか、同時回復で手数は浮くとはいってもPT人数分が上限と考えるとそこまで恩恵があるかってのでやはり使う動機が得にくい
60 ななしのよっしん
2024/12/25(水) 00:23:30 ID: wlupTjy+6B
負けバトルで強引に使わされるタスカルオールとかいう症候群回避策
61 ななしのよっしん
2024/12/25(水) 01:13:55 ID: XQ+MHFY6Zf
>ゲーム内のお店では一切売っていない
ラストエリクサーも一切購入できないというわけではなくとんでもない高額だったり手間がかかったりはするけど購入できる作品はある(GBA版4とか12とか)
なおエリクサーにも言える事だが基本的に大抵の作品で売ってもクッソ安く買い叩かれるので金策には使えない
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最終更新:2024/12/25(水) 03:00
最終更新:2024/12/25(水) 03:00
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