ベンチャー育成など産業活性化が目的の産業革新機構。設立8カ月の「1兆円ファンド」の投資が決まらない。大手企業の業績が回復基調にある中、存在意義が問われる。 「ベンチャーや大企業に埋もれた有望な技術と人材を組み合わせ、日本の産業構造を変革する」 そんな目的を掲げて設立された官民ファンド「産業革新機構」。1兆円規模の投資余力を持つ巨大ファンドだが、肝心の投資先が決まらない。 昨年7月の設立から8カ月が過ぎたにもかかわらず、「5月までにはいくつかの案件が決まる見通しだ」と心もとない状況が続いている。 機構は政府出資820億円に加え、東芝、武田薬品工業、東京電力など大手企業19社から100億円の出資を受けた。政府の2010年度予算でも、要求の300億円から減額されたとはいえ90億円の予算がついた。「投資実績がゼロにもかかわらず、事業規模を拡大する必要があるのか」と財務省の担当者が首をひねる始末だ。