近代化に伴う「世界」の広がりは自他の認識を強固にし、他者を陳列し掌握するという欲望は「博物館」という装置を作り上げていった。 そこには帝国主義・植民地主義という政治性が色濃く反映していた。 また一方で、博物館は、歴史の暴力をいまに留め伝える役割を果たしつつある。 われわれは、いま博物館という装置を如何に考えていくべきか。 時代ごとの思想と寄り添ってきたその歴史と、アイデンティティを創出する紐帯としてのあり方。双方向からのアプローチにより「博物館」という存在の意義と歴史的位置を捉えかえす。 序―なぜ帝国主義・植民地主義と博物館を問うのか 石井正己 Ⅰ 帝国主義の欲望を担った博物館 「帝国」という空間における博物館を考える 中見立夫 帝国主義的博物館に刻印された「欲望の社会史」 全京秀 Ⅱ 帝国日本で生まれた博物館の歴史 奈良の古物をめぐるイメージとナショナリズム―正倉院御物を中心に 角南聡一