新入社員の鈴木が、きゅうりの糠漬けを売りさばいている。 最初に気づいたのは、うちの部署の古株である田村さんだった。昼休みにコンビニで弁当を買って戻ってくるなり、「あの子、なんか売ってるよ」と言う。何を売っているのかと訊ねると、「糠漬けらしい」とのことだった。 昼休みが終わる頃、俺も喫煙所の帰りに覗いてみた。給湯室の前で、鈴木がタッパーを手にして立っている。タッパーの中には、瑞々しい緑色のきゅうりが綺麗に並んでいた。「1袋500円です」と書かれた手書きのメモが、デスクの端に置かれている。 正直、意味がわからなかった。新入社員が、自作の漬物を会社で売る。そんな話、聞いたことがない。 「鈴木、それ何?」 「糠漬けです。私、家で漬けてるんですけど、たくさんできるので……」 「それを、売ってるの?」 「はい。無農薬のきゅうりを使っていて、無添加です。市販のものより美味しいと思います」 彼女は営業部の
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