記事:じんぶん堂企画室 1980年代の柄谷さん=本人提供 書籍情報はこちら ――前回は、理論的な集大成として取り組んだ「言語・数・貨幣」の連載中に精神的に追い詰められて1983年秋に連載を中断した当時のお話をお聞きしました。(第17回参照) その柄谷さんが、「群像」85年1月号から新たに取り組んだのが「探究」です。 柄谷 「探究」を始めたのは、ウィトゲンシュタインの影響が大きかったと記憶しています。「探究」というタイトルもウィトゲンシュタインの『哲学探究』から来ている。彼は、体系的な哲学者の対極にある人でしょう。僕も、体系をつくろうとするのはやめて、そのときどきに考えたことを書こう、と思った。それで、何を書くかも決めずにタイトルだけを決めて始めた。 《ウィトゲンシュタイン(1889~1951)は、オーストリアの哲学者。ケンブリッジ大学教授。分析哲学の形成と発展に大きな影響を与えた20世紀最