新規の仕事は受け付けないと言っておきながら、木曜の午後に仕事の打ち合わせの予定が入っていた。 本学で経済学を講じている石川康宏先生(このブログでは「ワルモノ先生」という通称で繰り返し登場しているが)と共著で本を出そうという企画が持ち込まれたのである。 ワルモノ先生は人も知るマルクス主義者である。 それも “代々木の森の” マルクス主義者である。 『前衛』に資本論について研究論文を寄稿するような、「保証書付き」の正統派のマルクス主義者である。 そういう方から私に「いっしょにマルクスについての本を書きませんか?」というオッファーがなされたのである。 これはお受けせざるを得まい。 私は社会理論としてのマルクス主義の政治的有効性にはひさしく懐疑的であるが、カール・マルクスというひとの天才的知性には高校生のときから変わらぬ敬意を抱いているからである。 その人の立てた理論が歴史的反証事例によって失効し