楳図かずお先生に初めて会ったのは、1969年、私が19歳のときでした。 当時、マンガ専門の編集プロに勤めていた私は、高田馬場のビルにあった楳図先生の仕事場に原稿を受け取りに行くことになりました。高田馬場駅から早稲田松竹方向に少し歩いたところにあるビルの前に着き、エレベーターのボタンを押そうとしていたら、そこに、どこかに出かけていた楳図先生がやって来ました。まだ赤白ボーダー柄のTシャツは着ていなかったはずです。 「原稿をいただきにあがりました」と挨拶すると、楳図先生は「仕事場は4階(3階だったかも)だから、エレベーターで上がってきて」と言って、ご自身は階段に向かいます。「え?」と思って、あわてて後を追いました。だって、いくらなんでもマンガ家の先生が階段を昇っていくのに、若造のこっちがエレベーターを使うわけにはいかないじゃないですか。 あわてて楳図先生の後を追いましたが、その足の速いこと、速い