経済学史研究 2017年2月号 (2017年01月25日付) 毎日新聞 朝刊 (2015年12月13日付) 週刊東洋経済 2015年12月12日号 (2015年12月07日付)1 週刊ダイヤモンド 2015年11月21日号 (2015年11月16日付) 月刊Voice 2015年12月号 (2015年11月10日付) 序文:緊縮――個人的な体験 第1章 緊縮・債務・教訓劇の初歩 なぜ緊縮なのか? 本当は公的債務危機ではない ビル・ゲイツ、債務に関する2つの真実、そしてゾンビ それでは「あのすべての債務」は重要ではないのか? 債務とデレバレッジの分布? 本書の要約 第Ⅰ部 われわれはなぜみんな緊縮しなければならないのか? 第2章 米国:大きすぎて潰せない?――銀行家・救済・国家批判 発生源:レポ市場と銀行取り付け 付帯的(コラテラル・)損害(ダメージ):米国スタイル 増幅器:金融(デリ)派生
「織田信長のマネー革命」は信長の経済政策(金融だけじゃなく)について書かれている。一見、経済との関係が見えない行動についても経済の側面から書かれていて、なるほどそういう意図があったのかと思うことが(特に比叡山焼き討ちについて)あった。それと、信長が現在にも通じる経済システムを整備したということで、経済(特に通貨)のシステムがどのように成立するのかについても触れられている。 金融システム 金融に関しては信長が日本で『初めて体系的な通貨制度』を作った。具体的には1569年の法令で『中央政権としては初めて金、銀を通貨として使うことを決めた』、『金と銀、銅銭の交換比率』を明確に定めた。これによって貨幣の安定化とともに『遠隔地の物流を促進した』。 非効率を嫌った 信長は中間搾取や非効率を嫌ったと考えられる。政策としては、枡の大きさの統一、関所の撤廃、石高制(『簡単に言えば、年貢を銅銭ではなく米で納め
同著は、それらの論文を一般の人にも分かるように書き下ろしたものだ。しかし、素人向きとはいえ、中身は十分科学的で、しかもショッキングで、これを読むと、ギリシャの人々が過酷な緊縮財政に抗議して立ち上がった理由もよく分かる。 一般的には、不況はうつ病や、自殺や、アルコール依存や、感染症などを引き起こすと考えられている。しかし実際には、ひどい不況でも、国民の健康状態や死亡数に変化のない国もある。 それどころか、そういう国では、お金がないのでお酒や煙草が買えないことが幸いして、アルコールやニコチン由来の疾患が減ったり、あるいは、車を売って歩くようになったため、国民がより健康になったりということさえ起こっている。 この差は、ひとえに経済政策の違いからくるという。国民の健康状態の良し悪しには、いろいろな要素が関わっているが、この2人の学者が発見した確かなことが一つある。それは、経済危機にも関わらず、国民
現時点の日本と世界の経済問題の主要論点を鋭い着眼点で批評した一級の経済論である。ポール・クルーグマンが「低成長と格差の時代を終わらせることができる。本書はその福音となるだろう」と賛辞を送ったのもよく理解できる。 アベノミクスで最も成果をあげた大胆な金融緩和=リフレーション政策(デフレを脱却し低インフレを実現することで雇用と経済成長を安定化させる政策)をさらに強化し、また不十分であった「第三の矢」(=成長戦略)を改善すること。 このようなアベノミクスの中のよい部分を進化させる「ネオアベノミクス」は、(リフレの強化、成長戦略の見直し、再分配政策の構築といった三点の)政策イノベーションを通じてオープンレジームを構築することである、と整理することができる。 序章では世界経済での経済論争が俯瞰されていて、その論点が「成長」vs「停滞」、あるいは「成長」vs「格差」といった対立軸をもったもので、いずれ
経済書としては異例の13万部――フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』(みすず書房、訳・山形浩生ら)が、日本でも売行きを伸ばしている。とはいえ、本文だけで600ページもある分厚い本だけに、読み始めたものの挫折した人や、購入するのをためらっている人も少なくなさそうだ。そんな中、「たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!」と、図表に注目した解説書が登場した。 『図解ピケティ入門』(あさ出版)。2015年2月20日、発売。1300円(税別)。著者は、経済学者の高橋洋一・嘉悦大学ビジネス創造学部教授。元財務官僚で、内閣参事官も務めた。 同書は第1章で、『21世紀の資本』に登場する図表のうち、「本当に重要」なもの21枚を著者がピックアップし、視覚に訴えながら解説を加えている。これらの図は、ピケティ氏が集積した、20か国、300年分のデータのいわばエッセンスだ。そこから現れた「格
世界政治・世界経済のなかでの日本を簡潔に知りたい人にはかなり便利な一冊。外交とは貿易と安全保障の二頭立てである、というのが高橋さんの見立て。 その結論は至ってシンプルだ。貿易では自由貿易志向、安全保障では日米同盟を基軸にして同じ民主主義的な制度をもつ国々との連携を重視すること。これである。そこから演繹して、前者ではTPP参加を前提にして交渉すること(政治的な例外事項も考慮)、後者では集団的自衛権の行使は当然(国家の正当防衛なので)というのが高橋さんの現状の結論である。 個人的にはもっと詳細で専門的な記述がほしいところだが、一般の読者にとっては実にハンディな形で、いわば地政学と経済学の総合である「地経済学(Geonomics)」とでもいうべき視点が提供されていて、いまの日本の国際的な位置を考えるときにいい考察の材料だろう。 いくつか各論で個人的なメモを以下に書いておく。 1 経済制裁の目的は
経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策 著者:デヴィッド・スタックラー 出版社:草思社 ジャンル:経済 経済政策で人は死ぬか?—公衆衛生学から見た不況対策 [著]デヴィッド・スタックラー、サンジェイ・バス 「借りたものは返す」、これは社会常識だ。しかし経済危機下ですべてを犠牲にしても、債務返済を最優先すべきだろうか。この書物は、著者たちが公衆衛生学の観点から経済・財政政策に問い直しを迫る、問題提起の書だ。その基礎は、「ランセット」をはじめ、科学・医学系専門誌に掲載された著者たちの学術論文だ。 彼らは世界各国で実施された経済・財政政策の影響を、丹念にデータを拾って検証する。その結果、人の生命と健康に決定的な悪影響を及ぼすのは、不況そのものではなく、不況期に採用される無謀な緊縮政策だということを実証研究に基づいて説得的に示す。 興味深いのは、経済危機下でも住宅、医療など社会保護への
■「松方財政」に遡る現代への警告 7月14日、日銀は5年4カ月ぶりにゼロ金利政策を解除した。デフレ(一般物価の継続的下落)が終焉(しゅうえん)し、この先も景気の拡大が続くと判断したからだ。これに対し、著者は、3月9日の量的緩和に続く一連のリフレ(緩やかなインフレ)政策からの転換は時期尚早だと警告する。根拠は、最新の計量経済学を駆使した実証分析ではなく、過去の政策分析から引き出した歴史の教訓にある。 すでに昭和恐慌の研究で実績がある著者は、歴史を明治14年の政変で大蔵卿となった松方正義の経済政策、いわゆる「松方財政」まで遡(さかのぼ)る。「松方財政に対する誤った評価」がバブル崩壊後の平成大停滞の源流、と考えるからだ。 松方財政は、一般には激しいデフレ政策(紙幣整理)で貿易赤字(正貨流出)を縮小し、不況によって“捻出(ねんしゅつ)”した農村の余剰労働力を都市の新興産業に誘導する構造改革によって
今年もそろそろ終わりですが、この年末年始を利用して読んでいただきたい経済書を選んでみました。今年出版されたものの中からベスト10方式で厳選します。 ●第10位 『日本を救ったリフレ派経済学』(原田泰/日経プレミアシリーズ) 今年の国内経済問題の多くは、アベノミクスの成果と消費増税をめぐるものに終始した感があります。アベノミクスとは、3本の矢から成るもので、具体的には金融政策、財政政策、成長戦略です。アベノミクスの指南役といわれる浜田宏一イェール大学名誉教授(内閣府参与)によれば、それぞれの政策の評価はA、B、Eの順、つまり「ABE(安倍)」だそうです。本書では、最高のA評価を与えられた金融政策の成果を、実体経済の多様な回復傾向として具体的に解説しています。 ●第9位 『官愚の国』(高橋洋一/祥伝社黄金文庫) 筆者の高橋氏といえば当代きっての経済政策通でしょう。本書は2011年に出版されたも
とてもためになる本。負の所得税とベーシック・インカムの差異と類似点も明瞭に解説されていて勉強になる。ベーシック・インカムが勤労インセンティブ、または賃金労働(勤労インセンティヴと等価の問題ではない)の問題とどう関連しているかが、本書の中心的なテーマだろう。後者の賃金労働(の制度的前提=福祉国家の理念そのものと山森氏は指摘している)については、ベーシック・インカムの構想は、僕の考えでは理念的な意味で対立したものだと思う。 もっとも実践的な制度設計では共存可能だろうけど。これは本文中でもバートランド・ラッセルがかなり明白に言い切っている、ことを山森氏は紹介している。日本でも生存権の認承が、賃金労働と無縁な形で認められるべきだとする主張はあった。例えば養老年金問題に関する福田徳三と桑田熊蔵の論争を参照されたい。福田は後にラッセルの考えも自分の中でこなし、「日本のラッセル」ともいわれた。 山森氏の
ちくま文庫の仲間入りでまずはおめでたいことです。といってもまだ発売前なので手にしてません(笑)。以前の単行本のときはろくなコメントをしてないことに気が付き、当時よりもいま現在の方が、より重要な著作だと思いここでご紹介。なぜ重要かというと、一部の心無い(本当に空っぽだと思うが)人たちの生活保護バッシングをみるにつけ、日本の貧困問題へのいわれなき罵倒が目立つからだ。 さて本書は09年9月に初版だから、世界経済危機後一年後に出ていて、ちょうどいまから三年前だ。最初に言い切りたいが、僕が読んできた対談本の中でも屈指の出来だと思う。 飯田泰之さんは経済学者で、雨宮処凛さんは作家で社会運動家的な側面が強い。雨宮さんは当時、プレカリアート運動でも著名だった。なんとなく水と油的なイメージがあるが、本書の対談はかなりかみ合ってて面白い。ただだいぶ編集の手が入っている印象もある。なぜなら同時期に、雨宮さんが佐
ちょっと考えてみてください。もし、あなたの会社の重役にこんな人物がいたとしたら、会社はどうなってしまうでしょう? その人物はとにかく責任を負うのを嫌がり、目標を明確にするのを拒み続けます。それでも何か問題が発生して責任を取らされそうになると、あらゆる理屈を使って自分には責任がないことを主張して、いつの間にか責任をうやむやにしてしてしまいます。しかもこの人物は社内政治に長けていて、彼の責任を追求したり、彼に問題を解決する能力と権限があると指摘した人は、左遷されて閑職に回されてしまうので、誰も彼のことを批判できず、その問題はいつまで経っても解決しません。 もしこんな人物が幹部だったら、その会社はお先真っ暗でしょう。 ところが困ったことに、我が国の中央銀行である日本銀行は、こんな人物のような行動を繰り返す組織らしいのです。 今回取り上げる「デフレ不況 日本銀行の大罪」の著者である田中秀臣氏は、長
後藤新平が関東大震災のときにいかに考え、いかに行動したか。当時の後藤新平についての記録を整理し、大震災翌日の内務大臣任命からの120日に焦点をあててた編集(後藤新平研究会)のセンスが光る好著である。この120日は虎の門事件による山本内閣の瓦解によって区切られるのだが、同時に僕の調査したかぎりでもまさに後藤の退場と同時に当時のマスメディアの多くは震災への関心を失った(記事が急減する)。日本人は忘れやすい国民だ。だが後藤新平は高橋是清とともに何度も現代の日本で語られ続けてもいる。この忘却と想起のバランスがどのような教訓をわれわれに与えるだろうか? さて後藤は大臣任命直後にすでに予算規模30億円の巨額で、「欧米最新の都市計画」を採用すべし、と復興政策を独力で案出している。しかも9月4日にはさらにその案は具体性をもつ。今日でも意義があるので下に後藤が9月6日に閣議に提出した「帝都復興の議」の要点を
日本ではなぜかグローバリズムは評判が悪い。私はかつて、本書『反グローバリズムの克服-世界の経済政策に学ぶ』(八代尚宏著/新潮選書)でも分析されているTPP(環太平洋経済連携協定)を扱った本のうちで、どれだけが「反」でどれだけが「賛」かを調べたことがある。TPPという言葉が書名に入っている84の本のうち、「賛」は15しかなかった。しかし、トーマス・フリードマンの世界的ベスト・セラー『レクサスとオリーブの木』で、オリーブはローカルな文化、土地、人々の象徴だが、トヨタのレクサスはグローバリズムの象徴である。日本は、グローバリズムの旗手であって、同時に、世界でも反グローバリズムの気分の強い国である。 このような状況に対して、本書は、グローバリズムの効用を分析し、反グローバリズムでは、経済はじり貧になるだけだと説く。ただし、本書は、「反グローバリズム論」がいかに誤っているかを論争的に述べるというより
『AKB48の経済学』の中国語訳(簡体字)である『AKB48的格子裾経済学』(AKB48のチェック柄のスカートの経済学)の訳者である江裕真さんの訳者序文を、中国人留学生のテイイさんの協力を得て全文を日本語訳しました。 訳者序文 AKB48はなぜモーニング娘。を超えられたのか? 江裕真 私はモーニング娘のファンです。 学生時代、一番人気の「LOVEマシーン」の歌声を聴いて知っていました。 それからずっと、モーニング娘。の成長記録を興味深く見続けてきました。その一方で、ファンに熱狂的に迎えられているAKB48という大人数のメンバーがいるグループ誕生して、マスメディアから「国民のアイドル」と呼称され、私の心にこのグループに対するたくさんの疑問が生じてきました。 以前、その疑問を親友と討論しましたが、やはりこの『AKB48の経済学』の著者と同じような結論になったのです。従来のアイドルの観念と違い、
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