なぜ新宿御苑でなくてはならなかったのか。「庭」は,特に都会の中の庭園は喧騒の中の憩いの場である。これは新宿御苑の場合,その意味合いはさらに強い。周囲を高層ビルに囲まれているが,新宿御苑自身も木々が多く,高層ビル群に対抗するかのごとく庭園を覆っている。結果的に庭園の中は外界から隔絶された空間となっている。それでも空を見上げると,木々の上から見下ろしてくる高層ビル群が見えてしまい,人によっては「せっかくの庭園の景観を高層ビルが壊している」と批判的であるが,私は逆だ。高層ビルが垣間見えるからこそ,新宿御苑の外界からの隔絶が際立つのである。 都内の他の庭園ではこうはいかない。六義園や清澄庭園では周囲に高層ビルがなく,そこが高評価ポイントではあるが,新宿御苑のような詩情とは別種である。また最近ではスカイツリーが見えてしまうので,そう完璧な景観でもなくなったように思う。浜離宮庭園は比較的新宿御苑に近い