江戸文化と編集工学をそれぞれ専門とする田中優子、松岡正剛両氏は日本をめぐり、発想の「おおもと」を江戸に求めて対話を交わしてきた。本書は『日本問答』と『江戸問答』に続く完結編。現代を問う方法を探る問答である。 三つのテーマをもとに話は進む。一つは、私たちはなぜ競争から降りられないのか。戦前の昭和日本は軍事拡大と領土拡張に走ってアジアの関係を破壊し、戦後は国内で経済発展に邁進(まいしん)して自然と人間の関係を破壊した。生活と文芸と文化が一体化した、江戸の文明を切り捨てて、近代化の競争に突き進んだ結果だ。