ボブ・ディラン(Photo by Alvan Meyerowitz/Michael Ochs Archives/Getty Images) ローリングストーン誌による「歴代最高のアルバム500選 | 2020年改訂版」の関連企画として、重要作の制作過程に焦点を当てた記事を公開する。今回は9位のボブ・ディラン『血の轍』(原題:Blood on the Tracks、1975年発表)について。集中的な絵画の勉強、私生活とアーティストとしての自身とを同時に襲った危機、日の目を見るに至らなかった複数のレコーディングセッションが、いかにこの古典的傑作へと結実していったかを解き明かす。(※以下の記事は、2015年のRS誌ディラン特集号が初出) 絵画の勉強から学んだこと 1974年の春、ディランはカーネギーホールへと戻ってきた。1961年にコロンビアと契約を交わした数日後、自身初となる小さなリサイタルを