仕事の外に居場所をつくるのは、生きるうえでの戦略として、重要であろう。私的なところに親しい人がいないとなると、結局居場所は職場ひとつということになる。が、別に他人がいなくとも、ひとりの時間であれそこに居場所という名を付けることはできる。自分は、生涯を通じて、恐らくは仕事の外に、ひとりで落ち着く時間を設けるという方向を突き進みながら、どうにか世の中を生き抜いてゆこうとするのであろう。とはいっても、やはり十代二十代のうちに、親友や恋人を得られた人たちを羨望せずにはいられない。仕事なんて二の次で、もっと温かく、すぐそばにあって欠かすことのできない存在のために生きている人たちを、自分はこの歳になってただ指をくわえて眺めるばかりである。