アイキャッチ画像撮影:西海太介(メマトイの一種)
人の涙が好物!?メマトイとは

山を歩いていると、顔の前、特に目の辺りをブンブン飛んでいるハエのような虫に出くわすことはありませんか?そのうるさい虫こそが、今回紹介する「メマトイ」です。メマトイの生態や、山での対策をお伝えしますので、登山時の参考にしてみてください。
コバエの一種メマトイについて

メマトイとは、ハエ目の昆虫のうち、目の周りにまとわりつく習性があるものの総称になります。「クロメマトイ」や「マダラメマトイ」など、日本には十数種が生息しているとされ、体長は一部の大型種を除いて基本的に2mm程度の小さなハエです。
ブヨやアブのように吸血はしませんが、しつこく目の周りにまとわりつくことから、メマトイと名付けられています。
時には目の中に入ることもある、うっとおしく厄介な昆虫。
なぜ目の周りを飛び回るの?

なぜ執拗にメマトイが目の周りを飛び回るかというと、その狙いはなんと私たちの「涙」と言われています。
涙に含まれる栄養素には、タンパク質やミネラルをはじめ多くの養分が含まれています。彼らにとっては、涙が良いエサになるため、舐めようとして近づいてくると考えられています。
しかし、その実態は研究があまり進んでおらず、不明な点が多い虫です。1989年の日本の研究例(石川県白山自然保護センター)では、発酵バナナを使用したトラップでメマトイ類を調査したところ、「標高が低いところに多く生息し、オスのメマトイが多く捕獲された」と発表されています。

その後、オスが誘引された事例から、『涙に含まれる成分に「メスが出すフェロモン」に類似する成分が含まれているのではないか?』という仮説も立てられてきました。ただ実験はバナナを使用したものであるため、涙との因果関係も含めてまだまだ不明確な点が多く、真相はつかめていません。
注意!寄生虫を媒介
東洋眼虫を媒介

メマトイは「東洋眼虫」という線虫(寄生虫)を媒介する恐れがあります。感染率は2~4%ほどで、主にはイヌやネコ、タヌキなどの結膜嚢に寄生しますが、1957年には日本初の人体症例が報告されています。症状としては、かゆみや充血が多いのですが、飛蚊症、慢性結膜炎などを発症するケースも報告されています。
ただ、メマトイは目の前に飛んでくるので発見しやすく、その都度振り払うようにすれば、感染症を過度に恐れなくても大丈夫でしょう。
目に入ってしまたときの処置

振り払っていても、しつこいメマトイが目の中に飛び込んでしまった場合は、まず水でよく目を洗い流してください。洗い流した後、特別問題がなければそのままでも大丈夫ですが、痛みや違和感等の異常があった場合は病院へ行くことをおすすめします。
メマトイの生息場所と活動時期
遭遇しやすい場所

メマトイに遭遇しやすい場所としては、森林の内外や川沿いがあげられ、傾向として高地よりも低山帯に多く分布しています。また、メマトイはなぜかツヤツヤした黒光りするものに集まりやすく、目はもちろんカメラのレンズなどにも集まる習性があります。理由は解明されていないことも多く、まだ謎の多い昆虫です。
活動時期と遭遇しやすい時間帯

メマトイは全国に分布しており、春から夏にかけて活発に行動します。具体的に調べられたことはほとんどありませんが、ブユのように朝晩に活動が集中するようなことは少なく、1日を通して活動している傾向がみられるため、登山道で遭遇する機会も多いでしょう。