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性能アップに反比例して価格をダウンさせたGPSウォッチ

2024年11月に発売されたGPSウォッチ「カロス/ぺース プロ」。このウォッチは5万円を切る低価格で、スマートフォンの登山地図アプリ同様の登山情報を確認できる便利アイテムです。
こうしたガジェットは、最新モデルほど性能がよいのが常。最近はその性能アップに比例して、いや、ときには性能アップ以上に、価格もアップしています。しかしこの「ペース プロ」は、性能アップに反比例して、価格をダウンさせています。
アンダー5万円で、カラーマップのナビゲーション機能を装備

カロスは2014年に米国で創業。2018年以降、GPSウォッチを次々と発売。現在は中国で開発、製造が行なわれています。
先行ブランドのガーミン、スント、ポラールでカラーマップのナビゲーション機能を装備したモデルは、10万円前後。いわゆるハイエンドモデルのみでした。それを、カロスは5万円弱の「エイペックス2」や7万円弱の「エイペック2 プロ」というミドルクラスのモデルで実現し、注目を集めました。
今回の「ペース プロ」は、それら既存モデルよりも、さらに高精度なGPS機能と長時間バッテリーを搭載させています。
「ペース プロ」のスペックは、ハイエンドモデル並み

- 商品名
- カロス/ペース プロ
- 価格
- ¥49,940
- 重量
- 49g(シリコンバンド)、37g(ナイロンバンド)
- ディスプレイ
- 1.3型AMOLEDディスプレイ、タッチスクリーン
- 防水性能
- 5ATM ※ダイビングは不適
- 使用温度
- ー20~50℃
- バッテリー
- 全システムオン38時間、日常使用最大20日間
- 衛星システム
- GPS, GLONASS, Galileo, Beidou, QZSS ※全システム2周波
- マップ
- グローバルマップ、Topo(等高線の入った地形図)ダウンロード可能
2025年1月現在、価格と機能のバランスがすぐれているGPSウォッチのひとつが、このペース プロです。それは、カロスの既存モデルのみならず、多くのGPSウォッチが見劣りするレベルです。

でもペースシリーズは、どちらかといえばランニングに適したモデルです。ですが、私は「ペース3」という3万円台の、マップ表示のないナビゲーション機能を搭載したモデルを1年間愛用。ランニングだけでなく、実際に登山でも使っています。
だからこそ新発売されたペース プロの機能を見て、「これは登山で、かなり使えそう!」という予感を得て、今回、約1カ月余りをかけて、いくつかの山を登ってテストしてみました。
結果、ペース プロはランニングだけでなく、登山でも最高レベルで機能するGPSウォッチだと確信しました。そこで、どんなところが登山に向いていると感じたのか、5つの理由を紹介したいと思います。
登山に向いている理由1:ガジェット音痴でも使える簡単操作!

そもそもGPSウォッチの操作が複雑でわからなかったら、登山で使える情報を表示してくれても、無意味です。
でもGPSウォッチを使わない人に聞くと、「どのボタンが、どの機能のためのものなのかがわからない……」という操作のハードルが理由で、使用を諦めてしまう人が案外多くいるのです。
私自身も、いくつかのブランドのGPSウォッチを集めてテストする際、それぞれに操作方法が違うので、迷うこと必至。なので、その気持ちがわかります。
そんな人にオススメなのがカロス、そしてペース プロです。上写真でわかる通り、装備されるボタンはたったの2つ。

右上はダイヤルで、長押しでロック解除、短押しで複数のアクティビティを表示(上写真)。回して選択、押して決定。右下の赤色のボタンは、短押しで前の操作に戻るバックボタン。長押しすると、搭載された複数のツールを表示(下写真)。選択と決定はダイヤルを短押し。
アクティビティやツールは自分が使うものだけを、スマートフォンのカロスのアプリで選択して表示可能。またマップを表示した際は、ダイヤルで縮尺の変更が可能(2つ上写真のように+⇔-が表示されるのでわかりやすい!)です。

ちなみに設定でタッチスクリーン機能を常時オンにしおけば、ツールやアクティビティの選択、決定をタッチで行なえます。いわゆるスマートウォッチと同様の操作性のよさなので、スマートフォンを操作できれば(つまりほぼ誰でも)、すぐに迷いなく使えます!
カロスは、スマートフォンと連携した現在のスマートウォッチの登場以降に創業し、GPSウォッチを開発。だから、これまでのウォッチ=腕時計の操作に固執していないのです。
ユーザビリティを探求したカロスのペース プロは、山で使いこなすハードルがかなり低いんです!
登山に向いている理由2:山でちょうどよいサイズと軽量性

上写真左は私が1年間使用しているペース3、右はペース プロです。ディスプレイのサイズは、ペース3が1.2型でペース プロは1.3型と、やや大きめ。
またペース3はメモリー液晶を採用。省電力のために、光源として環境光や太陽光を使用するもの。強い直射日光の下ほど、クリアに見えます。一方のペース プロは、最新のGPSウォッチが採用しているAMOLED(有機EL)。解像度が飛躍的に上がり、暗い場所でもはっきりと文字や地図を確認できます。
ディスプレイの鮮明さの違いもありますが、ペース プロの1.3型という大きすぎない、でもちょっとだけ大きいサイズが、歩きながら、時に走りながら情報を見るのに、ちょうどいいです。

いわゆるアウトドア用を謳うGPSウォッチは、頑健さゆえに、総じて大きく、厚く、結果的に重くなりがちです。しかしペース プロは、46×46×12.25mmの本体サイズで、シリコンバンド仕様の重量が49g、ナイロンバンド仕様なら37gしかありません。
冒険的登山をするなら、MILスペックのような強度が必要かもしれません。ですが、ノーマルルート=登山道を登る山行やトレイルランニングには、オーバースペックだと私は感じます。
それよりも装着していることを忘れる、またはストレスを感じないレベルのフィット感と軽さを装備している方が、デイハイクや縦走登山では使いやすいと思います。ペース プロには、その装着性のよさが秀逸です。
ランニング向きにつくられたことが、通常の登山にもマッチしています。
登山に向いている理由3:コース逸脱や分岐を高精度GPSでナビ

登山の際に困ること、危険に陥る最大のポイントは、自分が現在どこにいるのかがわからなくなることです。だから紙の地形図や登山地図、最近であれば登山地図アプリで、現在地をマメに確認する必要があります。
グループ登山であれば、ガイドやリーダーに、その確認をおまかせしても問題ないかもしれません。でも、ソロや登山経験の多くない者同士の登山であれば、おまかせではなく、自分で確認する必要があります。
何度も登ったことのある山や、高山の登山道のようにルートが明確なら道迷いの心配は少ないです。でも初めての山、久しぶりの山、特に枝道、分岐がいくつもある標高1500m以下の低山は、こまめな現在地の確認が必須です。

とはいえ、大切だとわかっていても、うっかりミス、確認忘れをてしまうこともあります。
そんな時に機能するのが、登山地図アプリやGPSウォッチが案内してくれるアラート機能です。ペース プロも、事前にアプリやPCで予定ルートをつくっておけば、そのルートから外れると上写真(左)のように音声とバイブ、そして表示でお知らせしてくれます。またルート上の分岐が近づくと、同様に音声、バイブ、表示でカーナビのように案内もしてくれます(写真右)。
この機能を使えば、道迷いに陥る可能性は、かなり低くなるでしょう。
見えないルート、見にくいルートも問題なし

ちなみに今回は視界5mくらいの霧の中、伊豆大島・三原山の裏砂漠の登山道を歩きました。森があって、道や踏み跡がわかれば、「こっちだな!」と思えますが、景色が見えず、踏み跡らしきものしかない、だだっ広い砂漠では、「こっちかな?」としか思えません。
上写真がまさに、その時です。そこで機能してくれたのが、事前につくったルートと現在地、進行方向、通ってきたトラックが確認できる、ナビゲーション機能でした。
目視できない分岐地点が近づくと、アラームで教えてくれ、予定ルートと実際に歩いている方向が重なる向きに歩くことで、コースを逸脱することを防げました。これは霧だけでなく、日の出前や日没後に歩かなければならなくなった時に、ヘッドライトの光だけで登山道を歩く不安や道迷いの可能性を、大幅に低減してくれそうです。
ハイエンドモデルに搭載される最新GPSチップ採用

コース逸脱、ルート案内等を含むナビゲーション機能は、登山地図アプリにも装備されている機能です。でも、ポケットやサコッシュに入れたスマートフォンを、億劫がって取り出さない……ということが、案外多くありませんか?
現在地確認やアラートに気が付かなければ、せっかく高精度な位置情報を提供してくれても、意味がありません。
その点で、GPSウォッチは手首に装着しているので、現在地をこまめに確認できます。実際、スマートフォンよりも、GPSウォッチの方がちょこちょこ見て、確認するようになるんです。私自身がそうで、最近は、ほとんどGPSウォッチでしか、現在位置を確認していません。
さらにペース プロは、ハイエンドモデルが搭載する最新GPSチップを装備。加えて、GNSSという高精度な衛星測位システムと、森やビル等の障害物に囲まれていても精度を保つ2周波システムを選択可能です。

今回、1周波のシステム時に一度だけ、狭い谷間のルート上を歩いているのにコース逸脱のアラームがされる間違いがありました。ですが、それも2周波システムを選択していれば間違いはなかったのかもしれません。
2つのモードの違いは、精度とバッテリー稼働時間です。1周波が最大38時間、2周波が最大31時間なので、深い森歩きが多い場合や初めて登る山の時には、より精度の高い2周波システムを選ぶ方がよさそうです。
5万円を切る価格で2周波システムを装備したGPSウォッチは、カロス以外では、数えるほど。ペース プロは、その中で、さらに高精度を誇っています。障害物となる森歩きが多い低山では、ペース プロの高精度が機能してくれます。
登山に向いている理由4:高低図や等高線表示地図を見られる

私が約1年使っているペース3は、ナビゲーション機能を装備していますが、そのマップには上写真のように事前に設定した予定ルート(赤)と実際に通ったトラック(青)の表示しかされません。この時は、敢えてコースを逸脱して、他のコースを進んだ時の表示です。
予定ルートと現在地がわかるので、これでも十分です。でも……。

同じ場所で、ペース プロのマップを見ると、予定ルート以外に、実際にある他のコースも、すべて表示してくれます。上写真がそれです。ペース3と異なり、予定ルートが青、トラックが赤の表示なので、ちょっと混乱しますが……。
この表示を見ると、ペース プロの方が「いいなぁ」と思います。さらに、等高線も表示してくれたらサイコーなのになぁと欲も出てきます。

とはいえ、マップ表示で右上のダイヤルを回すと、予定ルートを進んでいれば上写真のように高低図が表示されるので、等高線がなくても、問題はないのです。この先、あとどれだけ登らなければならないかを目視できるだけでなく、数字でも総上昇量と現在までの上昇量を教えてくれます。だから、等高線よりもわかりやすいのです。
でも、予定ルートを逸脱したら、この高低図は意味がなくなるので、予定ルートを変更しがちな私は、やはり等高線の表示が欲しい……スマートフォンを取り出して、登山地図アプリで確認すればいいだけなんですが……便利なGPSウォッチの便利さを最大限味わいたい……。

なんて思って、ちょっとだけ不満を輸入元の担当者さんにお知らせしたら、「ペース プロで表示されるマップは、デフォルトでは等高線のないGoogleマップ的なもの」だけだそうですが、なんと「等高線入りの地形図を表示したければ、アプリから同期させればよい」と教えてもらいました。
公式HP上にあるマニュアルを読まずに、簡単操作でマニュアル不要!と思っていた私が、怠慢でした。
ペースシリーズは、ロードのランニング向けのウォッチなので、多くのユーザーは道がわかれば問題ないんですよね、きっと。でも同期させたら、上写真のように、しっかり等高線が表示されました。
これなら予定ルートを変更しても、スマートフォンの登山地図アプリ同様に使えます!よかった!!
予定ルートの方向も表示してくれていました!

さて、コースを変更して進んでいて気がついたのが、現在地を示す青矢印から青線の予定ルートに向かって伸びている赤破線です。上写真に、「コレ!」と黄色矢印で追記した先にある赤破線です。
当初はなにを意味しているのかわからなかったのですが、さらにコースを外れて行った時にも予定ルート方向に赤破線が伸びていたので、“予定ルートに復帰する際の方向”だと理解できました。
今回の私のように、コースを変更した場合は不要ですが、間違えてコースを逸脱して、そのことに気が付かずに進んでしまった場合に、活用できそうです。スマートフォンのアプリと違って、ペース プロは繰り返しコース逸脱のアラートが出ないので、この赤破線が出たら、コースを逸脱中と覚えておけば、見逃しミスも防げるでしょう。
万が一に備えて、メーカーもいろいろなことを考えてくれています。
登山に向いている理由5:USB Type-C 充電アダプター付属

これまでのカロスのGPSウォッチ、また他社GPSウォッチも、専用の端子を備えたUSBケーブルで充電の必要がありました。これが、案外面倒です。スマートフォン充電用にType-Cケーブルを装備していても、GPSウォッチ専用充電ケーブルは忘れてしまった……なんてことも、よくあります。
そうしたトラブルを少しでも防ぐためなのでしょう。ペース プロはType-Cケーブルで充電できるアダプターを付属しています。もしType-Cケーブルを忘れても、アダプターさえ持っていれば、同行者や山小屋のスタッフ、利用者にケーブルを借りて充電することができます。
ちなみに専用充電ケーブルは付属していません。アダプターがあれば、誰もが持っているはずのType-Cケーブルで充電できるので、不要になるものを増やさないメーカーの姿勢を、私は評価します。
予定ルート作成は、専用アプリよりヤマレコやYAMAPで!

ペース プロだけでなく、GPSウォッチ、登山地図アプリを活用する最大のメリットは、現在地を確認できることだけではなく、予定ルートの作成、自分や他の登山者のが登ったルートを調べて、山行前に確認することにあると思っています。
なんとなく、このコースで……とボンヤリした予定で登山をするのではなく、基本のルートを調べ、天候や体調悪化の場合のルートを想定、コースタイムを参考にスケジュールを具体的に立てることが、安全を高めるからです。

その点で、カロスのGPSウォッチは、スマートフォンのアプリでルート作成できる仕様ではあるのですが、登山ルートの作成には不向きです。
上写真①のように等高線や山、滝、ポイントとなる駅や名所、建物は地図に表示されますが、登山道は表示されません。でも②のようにスタート地点や経由地をタップすると、表示されていない登山道を通るルートは表示されます。ただし、そのルートが複数ある場合、どのルートを選ぶかはアプリが決定し、変更もできません。
一方で、過去に自分が通ったトラックは保存や同期できるので、③のようにそのトラックをルートとして使用することは可能です。

トラックは、アプリ側に同期されて保存されています。上画像は、スマートフォンの画面で縦スクロールで表示されるものの一部を、左右に分けて表示したものです。左の黄色ラインが実際に通ったトラックで、ライン上に表示されている数字は距離です。この時は途中でラップボタンを押したため、1キロごとのラップの数字が、その地点から変わっています。
このマップの右上の「・・・」をタップすると、GPSウォッチと同期できるルートのリストに保存されます。
でも、大きな画面でマップを見たい時のためにスマートフォンの登山地図アプリも動かすなら(私は保険のために動かします)、ヤマレコやYAMAPで予定ルートを作成すれば、同じデータを使えます。
やり方はちょっとだけ手間ですが、ヤマレコ、YAMAPで作成した予定ルートをGPXデータ(GPSの位置情報をソフトウェア間で交換するためのデータ)に変換して、カロスのアプリにダウンロード。そして、GPSウォッチに同期させるのです。
ヤマレコ、YAMAPは日本の山の情報が豊富ですし、コースのデータも確かで、予定時間まで確認できるのは、皆さんご存知の通りです!なにより予定ルートを作成しやすいアプリです。
山頂の標高を比べてみると、精度は十分でした!

今回、1カ月ほどペース プロを使用し、テストをしました。その間に登った山は4山で、その標高とペース プロ、ヤマレコで記録された標高を比べると下記のようになりました。

ヤマレコは、使用するスマートフォンに搭載されたGPSチップの性能に左右されます。そのため、GPS性能に劣るスマートフォンでは、もっと誤差が生じるでしょう。
私は2024年末に発売されたばかりのAQUOS sence9に替えたばかりだったこともあり、そのGPSチップの精度が高く、補正もされているのでしょう。かなり正確です。
しかしペース プロも十分に高精度といえる範囲で測位していることがわかります。±5mの誤差なら、十分です。
「ペース プロ」をメインに、登山地図アプリをサブに!

今回、4つの山で、ペース プロとペース3、そしてヤマレコを同時に動かして使ってみました。その結果、ペース3は予定ルートを歩くだけなら機能する基本モデル。ペース プロは、ほぼほぼスマートフォンの登山地図アプリ同様に使える高機能モデル。しかも登山地図アプリとは個別に動かせるので、仮にスマートフォンのバッテリーが切れたり故障をしたりしても、登山情報を表示してくれるので安心です。
そして視認性、操作性のよいペース プロを登山中のメインのナビとして活用。登山地図アプリを、細かな地図情報を確認するためのサブにするのがよいと感じました。
10万円前後のハイスペックモデルにしかできなかったことのほとんどを、5万円のミドルクラスモデルでできるようになったのは、本当にありがたいことです。
最後に、この記事では登山に関する機能についてだけ書きましたが、スマートフォンと連携して、メールやLine、電話等の通知も受け取れるので、スマートウォッチ同様に日常使いも便利です。
それでは皆さん、よい山旅を!
カロス ペース プロ
価格 | ¥49,940 |
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重量 | 49g(シリコンバンド)、37g(ナイロンバンド) |
ディスプレイ | 1.3型AMOLEDディスプレイ、タッチスクリーン |
防水性能 | 5ATM ※ダイビングは不適 |
使用温度 | ー20~50℃ |
バッテリー | 全システムオン38時間、日常使用最大20日間 |
衛星システム | GPS, GLONASS, Galileo, Beidou, QZSS ※全システム2周波 |
マップ | グローバルマップ、Topo(等高線の入った地形図)ダウンロード可能 |