届け!30万人 山の安心をひろげるプロジェクト 第2弾 / 希望者全員にココヘリをプレゼント 限定ステッカーももらえる! / 今すぐ申し込む
雪山向けの行動食を雪上に広げる

夏と同じじゃダメ!?徹底考察でわかった「雪山向け最強行動食」のイロハ

美しくも厳しい銀世界が広がる雪山登山。そのような状況下で、登山者の体力を維持するために欠かせないのが「行動食」です。

しかし、一口に行動食と言っても、雪山と夏山はまったくの別物。低温下での行動となるため、選び方や注意点も異なります。

そこで、雪山に最適な行動食を探るべく、ライターと編集部が徹底調査。極寒の環境でも効率的にエネルギーを補給できる、最強行動食のヒントを考えてみました。

目次

出典表記のない画像はすべて筆者撮影・作成

エネルギー補給は安全登山の絶対条件!

雪山で行動食を補給する人

登山中のエネルギー源として欠かせない「行動食」。チョコレートやスナック、菓子パンなど、人それぞれお気に入りの行動食がありますよね!

そんな行動食ですが、雪山登山ともなると、その重要性が一層増すことはご存知ですか?

雪山はエネルギー消費が半端ない!

雪山のテント泊装備を背負う人

雪山のテント泊装備。重量は15kg以上にも

その理由は、雪山では夏山以上に多くのエネルギー(熱量)が消耗されやすいため。

ただでさえ登山は重い荷物を背負って長時間歩き続けるエネルギー消費の激しい運動です。さらに雪山では、以下の負担が登山者にかかってきます。

①体温が下がりやすい
低温で風が強い雪山では体温も下がりやすく、基礎代謝を上げて体温を維持するために、身体はたくさんのエネルギーを必要とします。

②荷物が重くなる
ピッケルやアイゼン、防寒着、スノーシューなど、雪山では装備が多く、重量も増します。それに伴い、運動強度が上がり、エネルギーを消費します。

③運動量が大きくなる

ラッセル(雪をかき分けて進むこと)やピッケル・アイゼン歩行では多くの筋肉を使い、その際にエネルギーを消費します。

これらの要因から、雪山では多くのエネルギーが必要となり、エネルギー不足は「疲労感の増加」 「集中力の低下」「体温の低下」 といった危険を招きます。

そのため、寒く厳しい雪山を安全に楽しむためには、行動食によるエネルギー補給が夏山以上に必須なのです!

ポイントは「凍らない」 「食べやすい」 「高カロリー」

雪山の行動食選びの3つのポイント

大切だからといって「とにかくいっぱい持っていけばいい」というわけではありません。バックパックの容量には限りがありますし、必要以上の行動食は重荷になります。

雪山特有の環境をふまえて、行動食を選ぶ上でも気をつけるべき3つのポイントを見ていきましょう!

その1)凍らない食品を選ぶ

雪山で凍ったおにぎり

雪山でカチカチに凍ったおにぎり。もちろん食べることはできません

まず凍らない食品、もしくは凍っても問題ない食品を選びましょう。

雪山は、気温が氷点下になる極寒の世界。1,000〜2,000m級の山でもマイナス10度、アルプスのような山ではマイナス20度を下回るような環境です。もちろん身の回りのモノも凍ってしまいます。

食品が一度凍ってしまうと、登山中に自然解凍するのは困難。極端ですが、 「行動食が凍って食べられるものがない…」となれば命の危険にもさらされます。

そのため、どんな食品が「凍りにくい」か 「凍りやすい」かを知っておくことはとても大切!これについては、後ほど詳しく検証結果をみていきます。

飲み水は保温水筒へ

凍ったペットボトル

ちなみに飲み水も凍ります。

夏山ではペットボトルをバックパックに外付けしている登山者を見かけますが、雪山ではNG。マイナスの世界では、あっという間にカチカチに凍って飲めなくなってしまいます。

飲み水は保温水筒に入れて、バックパック内にしまっておきましょう。

その2)グローブを付けながらでも、サッと食べやすいもの

動きながら行動食を補給する人

続いては、グローブを付けながらでもサッと補給できる行動食を選ぶこと。

夏山ではゆっくり腰掛けて食事をする場面も多いですが、雪山では立ち止まる時間を短くするのが基本です。これは停滞することで、体温があっという間に奪われていってしまうため。

また雪山では素手になることは基本的にありません。肌をさらすことは凍傷のリスクを高めることにもなるからです。行動食もグローブを付けながら食べることになるので、グローブが汚れるようなものを避けた方が良いでしょう。

その3)食品のエネルギー量を考える

栄養成分表示

一般的に、体重60kgの成人男性が8時間程度の日帰り登山をした場合、約3,000カロリーを消費すると言われています。これはあくまでも夏山の話で、運動強度が増す雪山ではさらに多くのエネルギーが消費されることが想定されます。

そんな登山における主なエネルギー源が<炭水化物(糖質)>と<脂質>です。

登山に必要な栄養素

イラスト出典:イラストくん

簡単に言うと、炭水化物は脂質に比べると素早くエネルギー変わる栄養素ですが、枯渇しやすいという面もあります。一方で、脂質は体内での吸収・分解に時間はかかるもの、エネルギー効率が良いです。

そのため、登山では炭水化物と脂質をバランス良く・効果的に摂取することがポイントになってくるので、行動食としては、炭水化物を優先的に摂取しながら、合わせて脂質の栄養素を合わせて摂ることが望ましいでしょう。

ライター橋爪

栄養素に気をつかうことは大切ですが、そればかりに気を取られると準備も疲れてしまいます。

一般的な登山の場合、深く考えすぎず、まずはカロリーをチェックするだけでもいいと思っています!

凍りにくく、手軽に食べられて、カロリーが摂取できるものを

・低温下でも食べやすい
・行動中でも手軽に摂取できる
・軽量で高カロリー

雪山の行動食は上記のポイントに当てはまったものが、理想的な行動食と言えそうです。

それでは、ここからは実際に「雪山を想定して食品を凍らせた実験」「グローブを装着した状態での食べやすさの検証」の様子を見ていきたいと思います。

どんな行動食が凍りやすい?ポイントは「水分」と「糖分」

冷凍実験をした定番行動食

まずは行動食として定番の食品を冷凍庫で1日寝かせ、その後、実際に食してどうなっているかを試してみました。

実験した食品

・コンビニおにぎり
・菓子パン類
・エナジーバー類
・チョコ類
・ドライフルーツ・ナッツ
・エネルギーゼリー類
・スナック類
・柿ピー(煎餅・ナッツ)
・魚肉ソーセージ
・バナナ
・羊羹
・どら焼き
・大福
・チョココーティングバー

これはイケる!おいしく食べられた食品

結果として、凍らせても問題なく食べられたのは下記の食品でした。

凍らせても美味しく食べられた食品

・菓子パン類
・エナジーバー類
・チョコ類
・ドライフルーツ・ナッツ
・スナック類
・柿ピー(煎餅・ナッツ)
・羊羹
・どら焼き
・大福

菓子パン類(スナックサンド)※もっと見るを押すと詳細表示

菓子パンを凍らせて食す

エナジーバー類(カロリーメイト)※もっと見るを押すと詳細表示

エナジーバーを凍らせて食す

チョコ類(もっと見るを押すと詳細表示)

チョコ類を凍らせて食す

ドライフルーツ・ナッツ(もっと見るを押すと詳細表示)

ドライフルーツ・ナッツを凍らせて食す

スナック類(じゃがりこ)※もっと見るを押すと詳細表示

スナック菓子を凍らせて食す

柿ピー(もっと見るを押すと詳細表示)

柿ピーを凍らせて食す

ようかん(もっと見るを押すと詳細表示)

羊羹を凍らせて食す

どら焼き(もっと見るを押すと詳細表示)

どら焼きを凍らせて食す

大福(もっと見るを押すと詳細表示)

大福を凍らせて食す

ライター橋爪

意外だったのが、ようかんやどら焼き、大福などの和菓子たち!

個人的には、甘さとヒンヤリ感がうまくマッチしていて、常温よりも美味しく感じました。

餡子などのヒンヤリ感は雪山では寒くなるのでは?と感じる方もいるかと思います。実際に口に入れた瞬間こそ冷たさがありますが、すぐに口の中で溶けるような感覚で、アイスを食べているような寒さはありませんでした。

温かいお湯と合わせても相性がよさそうです。

あまりおすすめできないと感じた食品

続いて、下記の食品は「これは雪山に向いていないな」と感じました。

食べることが困難だった食品

・コンビニおにぎり
・ウインナー入りパン
・エネルギーゼリー類
・魚肉ソーセージ
・バナナ
・チョココーティングバー

コンビニおにぎり※もっと見るを押すと詳細表示

コンビニおにぎりを凍らせて食す

ソーセージ入りパン※もっと見るを押すと詳細表示

ソーセージ入りパンを凍らせて食す

エネルギーゼリー類(inゼリー)※もっと見るを押すと詳細表示

エネルギーゼリーを凍らせて食す

魚肉ソーセージ※もっと見るを押すと詳細表示

魚肉ソーセージを凍らせて食す

バナナ※もっと見るを押すと詳細表示

バナナを凍らせて食す

チョココーディング系バー(1本満足バー)※もっと見るを押すと詳細表示

チョココーティングバーを凍らせて食す

食品が凍るかどうかを左右するのが、「水分」と「糖分」。例えばおにぎりやバナナのように水分を多く含んだものはカチカチになってしまいますし、スナックや煎餅のように水分の少ないものはほとんど変化がありません。

また糖分が多い食品は、糖分によって水から氷に凝固するのを邪魔する「凝固点降下」という現象が働くため、凍りにくくなるためです。水分を多く含んだ羊羹が凍りにくいのもこのためです。

ライター橋爪

例えば「どうしてもおにぎりが食べたい!」という方は、ウェアのポケットなど肌に近い場所で保温しておくのも手ですね!

グローブをしたままサッと食べられる補給方法は?

雪山向けの厚手グローブ

続いて、行動中でもグローブをしたままサッと食べられる補給方法を考えてみました。

今回はインナーグローブの上に、雪山でお馴染み「テムレス」を装着して

  • ①プラスチックボトルに入れたトレイルミックス
  • ②ジップロックに入れたトレイルミックス
  • ③個包装のお菓子

の食べやすさを雪山で比べてみました。

プラスチックボトルに入れたトレイルミックス

グローブを着けてプラボトルを開ける人

これは便利だな、と感じたのがナルゲンを代表するプラスチックボトルを活用する方法。

フタを開ける動作は厚手のグローブでも問題なし。あとは口に放り込むだけなので、サッと補給できます。

私はボトルに口を直づけして流し込んだりしていますが、唾液が凍ってフタが開かなくなってしまう可能性もゼロではないので、そこは注意が必要です。(今まで凍って開かなくなったことはありませんが…)

ライター橋爪

行程にもよりますが、日帰りでは500ml以下の小さなボトルの使い勝手が良いです!

ジップロックに入れたトレイルミックス

グローブを着けてジップロックを開ける人

続いては行動食を入れておくアイテムとして定番の「ジップロック」。食材を酸化や乾燥、濡れから守ってくれるメリットもあります。

ですが、グローブをした状態ではなかなか食べにくい!ジップロックに手を突っ込んでも上手く掴めませんし、ジップロックから手のひらに食材を移そうとしても、ジップロックがヘニョっとなってしまい、上手く乗せられませんでした。

煎餅などの大きめなものであれば問題なさそうですが、トレイルミックスのような細かなものを入れるには、あまり適していないようです。

個包装のお菓子

グローブを着けてお菓子を開ける人

グローブで手の感覚が鈍ってしまうので、包装を開けるのも簡単ではありませんでした。特にチロルチョコのような小さな包装だと、厚手のグローブでは難しいです。

また食べたあとのゴミも、グローブでは掴んでいる感覚が乏しいため、うっかり落としてしまう可能性も高そうです。

樹林帯など、比較的安全な場所でゆっくり休憩できる場合は問題ないかと思いますが、風が強い稜線上などで補給するのはあまり適していないと感じました。

イチオシの行動食を徹底考察します!

雪山の行動食選びの考え方、注意点がわかったところで、筆者と編集長の大迫が、雪山に適した行動食を考察してみました。

必勝方法はトレイルミックス+プラスチックボトル

プラボトルとトレイルミックス

まず2人が意気投合したのが、プラスチックボトル+トレイルミックスの組み合わせです。

編集部大迫

トレイルミックスは甘味、塩味、酸味を好みで混ぜられるので、やはり雪山でも便利!

グラノーラや柿の種、チョコなど好みのものを色々混ぜてみても面白いですね。

ライター橋爪

チャレンジングな雪山では大体これを持っていきます。

プラスチックボトルは、フタを開けるだけで補給できるし、ゴミも出ないので無駄がないです。

編集部大迫

懸念点を挙げるなら、準備がやや面倒なところでしょうか。

当日の朝に用意するとバタバタしてしまうので、事前に準備しておけるのが理想ですが、コンビニで柿の種とチョコを買えば即席で作れてしまうのも魅力的ですね。

また、蓋がツルツルしていると滑って開けられなかったりするので、そこは家でチェックが必要です。

高カロリーでおすすめなチョコ+ナッツ

高カロリーなアーモンドチョコレート

ライター橋爪

「カロリー」という観点でやはり強いなと感じたのが、チョコとナッツ。

アーモンドチョコは100gで500kcalほどあるカロリーモンスター。1粒でも30kcalほどになるので、トレイルミックスに混ぜておくのもいいです!

編集部大迫

チョコの甘さは寒い雪山で染みますね。

夏山だとドロドロに溶けてしまいますが、雪山では溶けることがないので美味しく食べられるのもメリットかと。

ライター橋爪

ナッツ系は少量でも高カロリー、高脂質で栄養も豊富!

凍ることもないので、ドライフルーツなどと合わせて持っていってもよさそうです。

和菓子系も食べ感があってGOOD!

雪山と大福

編集部大迫

僕は食べ感が欲しいので、コンビニ大福が凍らなくて好きです。

もち米や餡子が炭水化物(糖質)を多く含んでいるので、栄養素もしっかり補充できますし、そもそも大福が好きなので幸福度高め。

ライター橋爪

大福は凍りそうなイメージがあったんですが、普通に美味しくて驚きました!

和菓子系は凍りにくく、カロリーも高くて、雪山に向いていると思います。

編集部大迫

ちなみに、いちご大福を持っていって、中のいちごだけ凍ったことがあります。

口の中に頬張って溶かして食べましたが、あんまり美味しくはなかったです(笑)。

他にも見逃せない和菓子たち

カステラとどら焼き

ライター橋爪

あとは、どら焼きやカステラなどの和菓子もいいと思いました。

これで200kcal以上ありますし、炭水化物も豊富です!

編集部大迫

注意点とすると、バックパックの中で潰れやすいことでしょうか?

羊羹もおすすめですが、個包装でベトつくので、グローブをしながら食べるのがやや課題かと。

こんな行動食もありかも!?

練乳チューブ

ライター橋爪

あとは雪山のバリエーションルートに行くようなときは、練乳チューブを持っていくこともあります。

フタを開けて、あとは口に流し込むだけ。動きながら片手でもできるので、行動中のちょっとした合間にも補給できます。

あまり綺麗な食べ方ではありませんが(笑)。

編集部大迫

そういった「補給の手軽さ」で言うと、飲み物に一味加えるのもいいですね。

例えば砂糖たっぷりの紅茶を水筒に入れておくのもおすすめ。ただし、いざというときのために、水またはお湯を別で持つ必要はあります。
ただ、子どもの頃にできなかったチューチュースタイルも背徳感があって・・・ついやっちゃいますね。

行動食の探求は終わらない!いろんな食品を試してみよう

雪の上に置かれた行動食

WEBやSNSで「おすすめの行動食」を検索すればたくさんの情報が出てきますが、すべての人にとってそれが正解とは限りません。今回登場した雪山向け行動食も一例に過ぎず、もっと適した行動食があるかもしれませんし、好みの味も人それぞれです。

なので、自分で試してみることも大切です。「こんな行動食はどうだろう?」と、試行錯誤することで新しい発見があるかもしれません。

ぜひ自分に合った行動食を見つけて、安全な雪山登山を楽しんでください!