アイキャッチ画像撮影:ポンチョ
雪山シーズンに登るとサイコーなのが、東京の【しま山】です!

本格的な雪山を登るには、装備も技術も経験も必要。ソロで登るのも心配……。だから冬の間はゲレンデでのウィンタースポーツや雪の少ない太平洋側の低山ハイクが中心になるという人に伝えたいことがあります!
冬の登山は、海に浮かぶ山=しま(島)山がオススメです!!
とはいえ、しま山によっては、屋久島の宮之浦岳のように、積雪によって難易度が上がる山もあります。ですが、私がオススメするのは、仮に雪が降ってもチェーンスパイクを用意しておけば問題なく登れる低山、伊豆七島の山です。

私ポンチョは、90年代から何度も伊豆七島を旅してきました。そして今回の、この記事でまとめた伊豆七島の旅が、確か30回目。17年前に行った折り畳み自転車で輪行&サイクリング&登山をした旅を、村営バスとレンタサイクルでの島内移動に変えて、再度行ってみました。
それは島から島へと渡るアイランドホッピングをして、山から山へ!神津島・天上山~伊豆大島・三原山を巡る、しま山旅です。
日本列島の創成風景を見る体験

伊豆七島は、行政区画では東京都に属していて、島を走る車は品川ナンバーです。でも、島にある風景は、人が線引きした「東京」という区画を飛び越えて、火山の連なりでできた日本という島国を改めて思い起こさせてくれます。
火山ならではの奇岩、砂礫や砂に覆われた、だだっ広い砂漠、山上から見える煌びやかな海景色、その向こうに輝く雄大な富士山!それは凝縮された箱庭的風景で、私は「日本らしさ」を見ています。街から、ほんの少し、わずか1~2時間歩いた場所にある、地球を感じられる空間は、日本列島の太古の風景だと感じます。
冬は観光客が少なめで、景色を満喫できます!

さて、17年前は春の旅でしたが、その後、冬の島のよさを私は知りました。
島というと夏のイメージが強いと思います。でも、気温30℃以上なら海遊びには気持ちよいのですが、登山には苦行です……。それに夏は観光客も多いので、伊豆七島へと向かう大型客船、高速ジェット船は、混雑必至です。
一方、冬は観光客が少なめ。運賃も夏より安くてお得。大型客船は、雑魚寝となる大部屋の2等和室も乗客が詰め込められることなく、比較的ゆっくりと就寝、船移動ができます。

そして船が混雑していないということは、島にも観光客が少なめ。山を登る人はさらに少数。
島だからこそ目にできる美しく稀少な風景に、ゆっくりと思う存分包まれることができます。
だから、冬に行くんです!行くべきだと思うんです!!
神津島・天上山~伊豆大島・三原山の旅を時系列に再現!

提供:東海汽船
今回のしま山旅は、東京・竹芝~神津島・天上山~伊豆大島・三原山~東京・竹芝、3泊4日(船中1泊)です。それがどんな旅になったのか、時系列に紹介していきましょう。
1日目は夜行便で神津島へ
初日は島への移動のみ。大型客船「さるびあ丸」での船旅を楽しみます。
PM10:00 東京・竹芝 さるびあ丸出航

出発は、夜の10時。つまり夜行便です。
冬はデッキを吹き抜ける風が冷たいですが、竹芝桟橋を出て間もなく、レインボーブリッジをくぐってその全景の背景に東京の夜景を見るまでは、頑張ってデッキにいたいもの。
伊豆七島へ頻繁に旅している人以外は、あまり見られない夜の海からの風景です。キラキラと輝くベイエリア、飛行機が離発着する羽田空港、無機質だけれど美しいコンビナート、新旧の時間が混在する横浜の夜景から、しま山の旅はスタートします。

1日目は大型客船・さるびあ丸の船室での宿泊です。冬は空いているので大部屋の2等和室でもよいのですが、カーテンで仕切られてコンセントもある個室的な特2等室(上写真)が、私のオススメです。ちなみに2等和室も共用のコンセントはあります。
翌日は、神津島・天上山登山。慣れない船内で身体をしっかり休めるためにも、プラス約3000円で泊まれる特2等室は、お得感もあります。
2日目は神津島・天上山をトレッキング。箱庭的風景を堪能
島旅の本番がスタート。神秘的な景色を拝みに、神津島の最高峰である天上山(てんじょうさん)へ。
AM6:00 美景は朝からはじまっています!

伊豆大島着は、朝6時です。冬の間は風向きの影響で、中心地から離れた島の北東部にある岡田港に寄港することが多いです。
そして冬の朝6時は、ちょうど日の出前後。下船する訳ではありませんが、起きてデッキに出てみれば、東の空を赤く染める景色を見られます。この景色を見られると、「よい旅になりそうだ!」とワクワクしてくるんです。
AM10:00 神津島に着いたら、バスに乗り遅れないように!

神津島も冬は強い西風の影響で、中心地に近い前浜港ではなく、ひと山越えた東側の多幸湾に寄港することがほとんどです。
下船後は神津島村営バスで、中心地の前浜、そして登山口へと向かいます。料金は200円。
島の景色にワクワクしてゆっくりと撮影をしていると、バスが出発してしまうこともあるので注意が必要です。
上の写真の黄色矢印の水色のバスが、それです。下船後、移動距離は意外とあります。

なんて、注意しておきながら、私はしっかり撮影しました。下船客の流れを見ながら、雲の流れも確認して、真っ白な層とグレーの層が重なった地層断面のある断崖をパシャリ。こんな風景は、なかなか見られるものではないので、声には出さないまでも、心なかでは「オオッ~~!」と、興奮状態で叫んでいました。
私はあの断崖の上の、さらに奥へと今から向かうのです!楽しみです!!
AM11:15 白と黒、どちらからにするか?

天上山には、2つの登山口があります。黒島登山口と白島登山口です。
村営バスは、どちらの登山口にも向かってくれます。さらに白島側は山の中腹六合目にも登山口&バス停があり、そこまで別料金&予約でも向かってくれるようです(が、2025年は道路工事で4月中旬まで通行止めになっている模様)。
オススメは黒島登山口から。なぜなら、登山道周辺の樹々がすぐに低木となり、晴れていれば開けた景色を見ながら登っていけるからです。
気温の高い季節は、日陰になっている森から出発する白島がよいかもしれませんが、冬~春は陽光の暖かさを感じられる、黒島に限ります!
トレッキングコースのマップは、下記サイトを参照してください。
黒島登山口は、海景色がすがすがしい!

黒島登山口ルートからの開けた景色というのは、この上写真のように海を感じられるものです。見えている町は、神津島の前浜海岸方面の中心地です。
今回、さるびあ丸が寄港しなかった前浜港は、波がかなり高いことがわかります。

標高を上げるほどに、見える海の輝きも増していきます。そして、西風も少しずつ強くなってきました。上写真で見えているのは島の東側の海。島が西風を遮り風裏となって、穏やかな表情を見せています。

黒島登山口ルートも白島登山口ルートにも、上写真のような、そこが何合目かを示す標識が設置されていました。
黒島ルートでは3合目からベンチも設置。標高は、わずか572m。高尾山よりも低いので、厳しい山ではありませんが、ちょっとだけ急なので、登山に慣れていない人にとっては大助かりでしょう。
上がるほどに強まる西風には注意!

冬の神津島は、西からの季節風が強く吹きます。その強さは日によって、場所によっては風速20mを越える暴風のレベル。私が天上山に登った日は、まさに暴風の日で、テント泊装備の50Lバックパックを背負っていたため、煽られて吹き飛ばされそうになり、四つん這いになった耐風姿勢のまま進まなければならない場所もありました。
景色はよいのですが、海を渡ってくる、この西風には注意が必要です。特に冬型の西高東低の気圧配置になると、静岡側から神津島付近を抜ける西風が吹くそう。風を避けて登山するなら、冬型が緩んだ時が、よさそうです。

ちなみに神津島と新島は、お互いに風の強さを自慢し合っているという話も聞きました。さらに強い「西風」を神津島では「西ん風」と「ん」を入れて呼ぶ方言があるそうです。
この記事を書いている1月中旬も、神津島の風速を確認してみると15m/S。天気はよいけれど、西ん風がしっかり吹いています。
PM12:30 箱庭的砂漠!の風景

黒島展望地からの天上山中心部の景色は、箱庭的。天然の要塞のようにも見えます。冬の強風、土砂流出の影響から木が成長することがなく、低木に覆われ、高山の岩山の様相です。
その風景は、展望地からみると遠くまで広がっているように思えたのですが、実際に歩いてみると、案外小さな凸凹。不思議な感覚になります。
写真で見てもそうですが、広がりがあるように見えて、「あれ、意外と小さいんだ!」と、驚くでしょう。こういう体験は、ココならではです。

上写真は裏砂漠。軽石のようなものが溜まり、砕け、砂のようになって、独特の白い世界をつくっています。凹地になっているので、風は上空を通り抜けていきます。そのため、ほぼ無音です。足音さえも吸い込まれているよう。
でも、無音なのに、風景からは音がするように思えるんです。雲が過ぎ去る音や陽光が射し込む音が聞こえるように思えるんです。そして裏砂漠を取り囲んだ峰や岩からは、不思議な気配が感じられます。
日本語には「神々しい」という表現がありますが、神を感じる瞬間は、こういう時間をいうのでしょう。私はこの風景に初めて包まれた17年前、そして今回も、この場所、風景に神を感じました。

裏砂漠、そしてもうひとつある表砂漠の砂は、どちらも細かいものと粗いものとが入り混じっています。触るとサラサラ。神津島の海辺の砂と変わりません。もう少し気温が高かったら、そのままゴロンと寝転んで、地球を感じるアーシングをしたい場所です。
触れると、気持ちよさがあります。小さな島の小さな景色ですが、そこにあるエネルギーは地球、さらに太陽や宇宙と繋がっているように思えます。私が神と感じたのは、エネルギーなのかもしれません。
伊豆七島に伝わる神津島の伝説から思うこと

上写真は、新東京百景展望地というとことから見た、式根島、新島、利島、伊豆大島。さらに裏砂漠展望地というところからは、三宅島、御蔵島が見えました。もっと晴れていれば、八丈島も、そして富士山も見られます。
「神津島」の由来は、「神集島(かみあつめのしま)」と表記されていたからだそう。また水配りの神話というものがあって、伊豆七島のそれぞれの島の神が神津島に集い、水を分配する話し合いが行われた場所だと伝えられています。

確かに、天上山山頂の神々しさは、神様が集まるのにふさわしい場所です。伊豆大島や八丈島、または三宅島だって、神津島よりも大きく、神秘さに満ちた島ですが、大きな違いが2つあります。
ひとつは水。神津島は、神話にある通り、水を他の島に分けることができるほど豊富でした。もうひとつは黒曜石。旧石器時代には、神津島南西に位置する無人島・恩馳(おんばせ)島で黒曜石が採石されていたそうです。
当時、黒曜石は鏃(やじり)や槍の先に使われ、狩猟採集民にとっては、とても貴重な石器の材料でした。
神津島産の黒曜石は、静岡県沼津市の縄文遺跡をはじめ、南関東周辺で発掘されているそうです。そしてそれは約3万8000年前に、神津島と伊豆半島、関東周辺との海上交易があったことの証です。

神津島は、伊豆半島の南端から約50キロの距離。しかし旧石器時代、丸木舟や筏(いかだ)のような簡素な船で、目視できる場所とはいえ、その距離を外洋航海をしていた事実は、人類史上でも、かなり古い=先進的な事例のようです。
そして水配りの神話は、水だけではなく、伊豆半島や関東との交易によって得た情報や知識の集積、拡散の話なのかもしれない……と、妄想します。なにより、3万8000年も前から、この小さな島で暮らす人がいて、交易のために旅人が往来していたことに、人が持つ好奇心と本来持っている能力の高さに驚きます。
PM3:00 西風がダイレクトに当たる山頂

私が天上山を登山した日、山頂には誰もいませんでした。
さらにいえば、当日、天上山登山でですれ違ったのは、山頂から白島登山口へと下山中に2人だけ。山頂部をグルグルと回っていた3時間余、誰にも会わずに貸し切りでした。
それが年末の平日ということもありますが、冬のしま山は、やはり人が少なくて、じっくり山と向き合える時間がありました。
PM4:00 白島登山口へ下山、町まで徒歩約20分

ここは白島登山口側のルートです。黒島側よりも高い木があって、六合目以降でないと展望は望めません。
白島登山口までもバスは来ていますが、この時間はすでに終バス後。中心地まで約20分歩いて向かいます。
森の雰囲気は、南国の様相です。
3日目は伊豆大島へ。サイクリング&キャンプを満喫
この日は午前便で伊豆大島へ移動。午後からはサイクリングで、海底噴火で誕生した大島ならではの“自然の息吹”を体感しながら、キャンプ場へと向かいます。

ちなみに前日の神津島での宿泊は、民宿、旅館、ゲストハウス、さらにキャンプ場があります。酒好きでもある私は島の居酒屋に行きたかったので、ゲストハウスに泊まりました。
でも、登山後に宿からさらに歩きに出るよりも、食事付きの民宿や旅館の方が、やっぱりラクです。ラクではあるけれども、島の人がどんな人で、どんな時間を過ごしているのか知りたくて、居酒屋に行くことを私は選択したのです。この旅は、しま山旅。山以外の風景も見てみたいからです。
AM10:30 神津島・出航

しま山旅3日目は竹芝から神津島までやってきた、さるびあ丸の復路を利用します。前日から変わらない強風の影響で、式根島、新島、利島には寄港せず、伊豆大島へ直行となりました。
この日の船室は、約4時間ゆっくりするだけなので、2等和室です。乗客が少ないため、客室ごとに少人数で振り分けられ、上写真のスペースに私を含めて2人だけの利用でした。
PM2:10 伊豆大島着 バスではPayPay使えました!ありがたい!!

伊豆大島に到着。岡田港着だったので、バスで元町港へ移動です。
さて、神津島もそうでしたが、伊豆大島も、クレジットカード、電子決済ができるところが、ほとんどありません。だから、しっかりと現金を用意していかなければならなのですが、大島バスでPayPayが使えるようになっていました。
現金支払いから電子決済への移行、島でも進んでくれると、もっと旅がしやすくなるんですが……と思っていたら、しまぽ通貨とよぶ電子決済が、2025年も1月22日から3月31日までの利用で1万セット販売、利用できるそう。
南部のキャンプ場までは、電動アシスト自転車をレンタル

伊豆大島での宿泊は、島南部のトウシキキャンプ場にしました。予約サイトから事前予約しておけば無料で利用ができるんです。
元町港から、そのトウシキキャンプ場まではバスも出ていますが、明朝から登りたい三原山へのアクセスが、もう一度元町港まで戻らなければならなかったり、またはタクシー利用だったり、帰りの高速ジェット船の出航時刻が午後2時45分で時間があまりない……という理由から、登山口まで上っていくこともなんとか可能な、電動アシスト付き自転車を24時間レンタル(4000円)することにしました。レンタルしたのは元町港至近にある、みよし土産品店です。

キャンプをせずに、元町港付近の民宿やホテル泊にすれば、土日祝日なら山頂口方面往復バスを利用できます。
また2月以降は、山頂口方面往復バス便が毎日運航しています。今回の私のようにバス便のない日の登山でなければ、わざわざ電動アシスト付き自転車をレンタルしなくてもよいでしょう。

でも、元町港からトウシキキャンプ場までのサイクリングは、結構楽しいんです。特に、海を見渡せる高台から道沿いに現れる地層大切断面、通称バームクーヘンは、圧巻です。
高さ30m、長さ630mの縞模様は、約1万8000年前から100回以上も断続的に続いている噴火で出た火山灰等が積もった層だといいます。山好き、アウトドア好きなら、その土地がどんな年月を経て現在の風景を見せてくれているのか、きっと興味があるに違いありません。

地層大切断面以外にも、景勝地として知られる波浮港や登山口までの海と山の景色を見られるのがサイクリングのよさです。
ちなみに上の写真は筆島。見渡せる休憩所もあり、波と風の音だけの太古から続いている景色があります。その深い音色に、ココロが洗われます。

ただし、ひとつ注意したいのが電動アシストの航続距離です。
今回レンタルした電動アシスト車は、標準モードで約55キロのアシスト距離でした。でも、元町港から月と砂漠ラインという道から接続する登山口までの往復距離は約50キロ。今回は、下りでアシストをオフにしたり、標準モードから弱モードで節約しても、返却時の残りアシスト距離は1キロしかありませんでした!
アシストには強モードもあって、これを急坂でツラいからと使いすぎると、最後にバッテリーが切れてアシストなしの重いママチャリになってしまうこともあり得るので、節約必至です!
PM4:30 キャンプ開始

元町港からトウシキキャンプ場までは、島をぐるっと一周している大島一周道路で、約13キロです。ちなみに伊豆大島にはコンビニがありません。キャンプ場周辺には商店が数軒かありますが、私は元町港にある「ショッピングセンター べにや」というスーパーマーケットでお惣菜を購入。
こちらは島で取れた魚のお刺身や島唐辛子を使った鶏の唐揚げが、かなり美味しいです。特に白身魚は、スーパーマーケットでは珍しく、血抜きをしっかり行っているそうで、プリプリです!

当日のキャンプ場利用者は私を含めて2人。もう1人は、17年前の私同様、折り畳み自転車で来ていました。彼は翌日、私の下山タイミングで、三原山の登山口付近まで折り畳み自転車で上がってきていました。
トウシキキャンプ場に自転車で来る人は、この行程で旅をしている人が多いのかもしれません。彼の折り畳み自転車は、アシストなしの小径車なので、上りに苦労したのでしょう。押して歩いていましたが……。

ところで、伊豆大島でキャンプ場泊にしたのは、登山でのテント泊の練習によいからです。私自身は山のテント泊を多く経験していますが、過去に初めて山でテント泊するという知人を連れて、このトウシキキャンプ場に泊まったこともあります。
このキャンプ場、海沿いに位置しているため、風が強いことが多いんです。だから高山を想定したテント泊の設営、撤収の練習ができます。でも山のテント場と違って、炊事場やバーベキュー棟、きれいな水洗トイレ、ゴミ置き場もあります。さらに焚火ができる炉が設置されているので、夜の時間を暖かく、そしてのんびりと火を見つめながら、過ごすことができます。練習を兼ねながら、しっかり楽しめるのが、いいんです!
4日目は、日の出とともに三原山へGo!
最終日は、御神火様(ごじんかさま)として島民に崇められてきた三原山(標高758m)をトレッキング。下山後は元町港へ戻って自転車を返却し、再び「さるびあ丸」に乗船して帰路につきます。
AM7:00前 キャンプ場を出発

冬の日の出時刻はAM6:00台。そこで明るくなり始めたAM6:00に起床。テントを畳んで、荷物を整理して、AM7:00前にキャンプ場をスタートします。
しかし、海岸線の海抜ほぼ0m地点から、約14キロの距離を移動、標高600mほどをを自転車を漕いで上らなければなりません。
上の写真は、大島一周道路の最高地点。ここで上りは終わりではなく、まだ1/3残っています。
でも、ママチャリだったらキビシイですが、電動アシスト自転車なので、なんとかなります。いや、なんとかしないと、登山のスタートを切れません!
AM8:30 月と砂漠ライン駐車場着!

三原山登山は、バスが通っている大島温泉ホテルからか三原山山頂口からはじめるのが一般的です。が、前述の通り、私が登った日はバス便のない日。そこで島東側の裏砂漠入口(季節運航のバスが停まる大砂漠バス停)と月と砂漠ライン駐車場のどちらかからアプローチすることにしました。
トウシキキャンプ場から少しだけ近いのは裏砂漠入口ですが、電動アシスト自転車で上ってしまえば、帰りは下りの舗装路をサクッと下りてこられる、月と砂漠ライン駐車場から登ることにしました。頑張って漕がなければなりませんが……。
AM10:00 広々とした砂漠風景に、霧!

実はこの日、寒気が関東地方上空まで張り出してきて、房総半島沖に低気圧が発生。伊豆大島の北東側は断続的に雲が湧いていたんです。しかも雪雲が……そのため、三原山へと電動アシスト自転車で漕ぎ上っている途中からアラレまじりの雨になり、月と砂漠ライン駐車場に着いた時はアラレ……。
登り始めるとアラレは止んでくれましたが、上写真のように空は低い雲に覆われていました。雲に覆われると山頂付近では、霧が出ます。

山頂のお鉢巡りコースは、視界10mもないときがありました。月と砂漠ライン駐車場付近で出会った30代くらいの男性ソロハイカーは、温泉ホテルコースからやってきて、山頂は登らず、大砂漠を通って大島一周道路まで下りると話していました。

でも、雲の流れを見ると、北から南へ流れていて、トウシキキャンプ場から山頂方向を見上げた時も、南西側は雲がなかったんです。それに午後からは晴れ予報が出ていたので、それを期待して山頂部に登ってみたら、案の定南西部は雲がありませんでした!隣の利島や新島、伊豆半島が見えていました。
2つ上の霧中の写真と上の写真は、ほんの100mくらい進んだだけの違いです。雲が湧く場所と切れて流れるところ、時間。地形と風が生む、自然現象。山に身を置くと、こうしたほんの少しの差が、例えば生死を分ける大きな差になることが想像できます。
三原山で絶対に見るべき風景

三原山ハイクで、絶対にみるべきものが2つあります。
まず、山頂で見られる水蒸気が沸き上がる火口です。噴煙のように見えますが、これは雨水等が熱せられて蒸発した水蒸気だそう。1986年に噴火した「ばかり」の火口の傍を歩いていると思うと少し怖さがあります。
東京からわずか100キロほどの場所に、地球内部からつながる大きな穴が開いている。そんな場所で多くの人々が日々を暮らしている、という奇跡的な時間を想います。

もうひとつは、山頂の東側、外輪山となる櫛形山との間にある砂礫の砂漠からの景色。私が三原山登山の度に撮影するポイントです。上写真で山腹に茶色くまだらに見えるのはススキ。00年代は、もっと範囲が狭かったのですが、最近は山全体を覆ってきています。
秋のススキ野原の黄金の輝きは、黒い砂漠背景によって一層キラキラしています。なので、冬だけでなく、秋も訪れてみるとよいです。
AM12:00 元町港へ電動アシスト自転車で!

三原山山頂付近は、基本的には砂礫の黒い風景なのですが、少し場所を変えると、雰囲気は大きく変わります。例えばお鉢巡りから南側の表砂漠方面に下りた場所にある、幻の池。雨上がりに出現する池ですが、干上がった時には、アートのように大きめの石が並んでいます。水は、風とは異なる景色を生み出すんですね。
と、いろんな不思議、美しさに立ち止まっていると、あっという間に時間は過ぎていきます。でも、1月中の高速ジェット船はPM2:30頃出航。元町港からのバスはPM1:50なので、PM12:00過ぎには電動アシスト自転車を漕ぎ始めなければなりません。
ただし2月以降はPM3:30頃出航なので、もう少し余裕があります。それにもう1泊して、日没前まで山頂部を満喫するのもアリです。山頂に近い大島温泉ホテルに泊まれば、三原山の雄大な景色を見ながら温泉に浸かれ、送迎も付いて、朝から晩まで三原山を思う存分体感できるでしょう。
島それぞれの山、風景があります!

日本は島国ですが、国土地理院によれば、その周辺の離島の数は14,120あるそうです。そのうち1,750の離島を紹介する島ガイドブックに「SHIMADAS(シマダス)」があります。ガイドブックを手掛ける日本離島センターは、離島の山を厳選した「しま山100選」をまとめています。
北海道から沖縄まで、紹介されているしま山を見てみると、山は島を象徴し、それぞれ個性、特長があることがわかります。今回私が訪れた神津島・天上山と伊豆大島・三原山であれば、白い風景と黒い風景です。

それに山と同じように、しま山も季節を変え、スタイルを変え、下山後に食べたいもの、立ち寄りたいお店等々、目的を変えて訪れると、見えてくる風景がまるで違います。だから何度も訪れたくなります。
例えば、神津島なら春めいてきた頃に、伊豆七島初のクラフトビール「ヒューガブルワリー」に立ち寄りたい。伊豆大島なら「らぁ麺 よりみち」で島海苔らーめん 貝塩味を味わいたい。どちらも、今回は店休日だったので!

神津島・天上山と伊豆大島・三原山は、同じ伊豆七島にあって、違いがはっきりと感じられます。この2つのしま山を体験してみれば、きっとさらにしま山を知りたいと思うに違いありません。
そうそう、伊豆七島を東京・竹芝と結ぶ東海汽船では、2025年2月2日~3月30日まで、さるびあ丸での船中1泊、または往復高速ジェット船で日帰りでの伊豆大島・三原山 絶景ハイキングのツアーを開催しています。ハイキングはお鉢巡りが可能な時間だけで短めですが、しま山をちょこっと体験するのによいです!
それでは皆さん、よい山旅を!
日本離島センター 新版 日本の島ガイド『SHIMADAS(シマダス)』