アイキャッチ画像撮影:ポンチョ
なかなか“コレぞ!”が見つからない、山テーブル

登山では、贅沢品とも言われるテーブル。
持っていかなくてもなんとかなりますが、地べたにクッカーやカップを置いて飲食をするよりも、テーブルを使ったほうがはるかに気分がいいものです。蟻などの虫が皿のなかに入ってくる可能性も低いですし。
また、バーナーで調理をする際も、枯れ葉に覆われた地面や草地では引火の危険あり。バーナーシートを敷いたり、テーブル上で行ったりしたいもの。
でもソロテーブルって、案外重いんですよね……だから、贅沢品と言われるわけです……。

私がこれまでメインで使っていたのは、SOTOのフィールドホッパー(写真、左上)です。A4サイズ、調理も可能な天板アルミ製、これくらいまでならと諦めがつく重量395g、縦半分に薄く折り畳めるのでバックパックのサイドポケットに入ります。重さ以外は、ストレスフリーな良品です。
もうひとつ、装備の軽量化を重視したい時に使っているのがカスケードワイルド(写真、右上)。ULテーブルとして人気で、A4サイズながら重量はたったの約65g。素材はプラダンと呼ばれるプラスチック製段ボール。耐熱温度は162℃あるので、熱湯を入れたカップを置くことができますが、天板上で調理をすることは控えたほうが無難……。
また持ち運びの際に、負荷を掛け過ぎると折れ曲がったり変形することもあります。さらに、天板に折り癖がついて使用時に平らにならない……クッカーを置けば、重さで戻るんですが……。超軽量ゆえに、いろいろ気遣いが必要です。
常々、フィールドホッパーとカスケードワイルドの重さも使い勝手も中間ぐらいのテーブルがあったら、間違いなく山テーブルの定番になるのに……。と、そんなことを思っていたら、同じことを感じて、自作して、販売をはじめた人がいました!
ついに出合った!理想的なULテーブルの逸品<noicoyamaico>
それが、今回紹介するガレージメーカー<noicoyamaico (以下、ノイコヤマイコ)>です。
「持って野山に出かけたくなる」道具を具現化!

ブランド名は「持って野山に出かけたくなる」道具をつくろうという想いを込めたもの。
そして最初に手掛けた道具がULテーブル。そのコンセプトは、「耐熱、A4サイズ、150g以内、簡単組み立て」でした。試作段階でのアイデアの源は、愛用していたフィールドホッパーとカスケードワイルド、そしてもうひとつベルンのトレッキングパッドだったそうです。
ブランド創設者の上島大輔さんがテーブル開発の道のりを綴るnoteを読んだ時、ギア好きは同じようなことを考えるのだなぁと思いつつ、さらに、それを実際につくる行動力に感心しました。
コンセプト通りのULテーブルが完成
そうして、まず完成したのが、『noicoyamaico basic(以下、ベーシック)』です。

サイズは上の写真、そしてコンセプトの通り、A4サイズ。縦に折って収納でき、天板片面にはアルミプレートを貼った耐熱仕様なのでストーブでの調理も可能。素材は天板のアルミプレート以外、脚部ともにプラダン製。重量は125g±10gとなりました。
V字型の脚部は、折り畳んで磁石で固定する仕様で、「組み立て3秒」の簡単さ。ノイコヤマイコが手掛けるULテーブル共通のアイデアであり、象徴です(※詳細は、次項で紹介します)。
ブランド創設者・上島さんが欲しいテーブルを形にしたベーシックは、多くのハイカーの心を掴みました。でも同時に「天板すべてにプレートを貼って欲しい」という要望が届いたそうです。変形または溶ける可能性のあるプラダンが傍にあるのは、やはり心配です。わかります、その気持ち。
しかし、両面にアルミプレートを貼ると重量が増し、そのプレートを軽量化のために薄くすると耐熱性が低下するという課題が生じます。だから片面プレートにしたのでしょうから……。

解決するために取った方法は、天板をすべてを耐熱性の高いカーボンプレートにし、軽量さや組み立ての簡単さを残すために脚部は磁石固定式のプラダン製に。そして耐荷重を落とすことなく、価格は抑えるために、A4サイズのベーシックよりも少し小さいB5のミニサイズを選択したそうです。
こうして誕生したのが『ノイコヤマイコ ミニカーボ2』。私が思い描いていた、理想の山テーブルです。
カーボン製天板+磁石固定の簡単組み立て脚部が秀逸!

ノイコヤマイコ ミニカーボ2 ¥8,800
展開サイズ:W230 x D176 x H70mm
収納サイズ:W230 x H86 x D13mm
重量:95g±5g
耐荷重:3kg
ノイコヤマイコ ベーシックのよさを踏襲しながら、天板のカーボンならではの模様、質感がとてもクールです。
ベーシックと同じ片面アルミプレートのミニサイズのテーブルもラインナップにあり、その重量は74g±5g、チタンプレートを貼ったものが64g±5g。対して、ミニカーボ2は95±5gと軽さでは劣ります。しかし、全面で気兼ねなく調理ができる安心感を装備している点で、使い勝手は上です。
縦2つに折れる天板構造のテーブルは、持ち上げた際にくの字に折れて、載せていたものがすべて脱落……という可能性もあります。その点でノイコヤマイコは、連結する脚部がストッパーにもなっていて、折れることがないのでヒョイと安心して持ち上げられます。コレ、かなり大切な機能です。

そんなノイコヤマイコを象徴する脚部のよさがわかるのが、上のアニメーションです。「組み立て3秒」の簡単さは、このテーブルを選ぶ価値を感じる機能でしょう。
ところでこの脚部、素材を軽いプラダンにしたのはカスケードワイルド、V字構造の基にしたのはベルンだとわかります。ベルンの脚部は天板に切られたスリットに挿し込んで固定する方式なのですが、持ち上げた際に外れてしまう可能性があるんです。

そこでノイコヤマイコでは、強力な磁石を天板裏側に貼り、脚の末端に埋め込み、展開時には脚部を固定、収納時には開かないようにしています。現物を見ると簡単なアイデアに思えますが、実に機能的なブラッシュアップ。山でいくつものテーブルを使ってきたからこそ気が付ける、実践的なアイデアです。
ちなみにカーボン製の天板に対して、耐久性に劣るプラダン製の脚部のみ壊れた時のために、修理代込み¥2,600でリペアキットも用意してくれています。小さなブランドならではの細かな心遣いも、うれしいですね。
絶妙なサイズ感と思わぬ発見も!

110ガス缶を装着したバーナーでコーヒードリップした様子が、上の写真です。径の大きなクッカーだと、ちょっと慎重に調理をしなければならないテーブルサイズではありますが、ソロ用クッカーとして使うことの多い、深型0.7~1Lくらいの容量なら問題ありません。
コーヒードリップにちょうどいいテーブルサイズで、湯沸かし後は、バーナーを下ろしてスイーツやフルーツを美味しくいただけそうです。

シェラカップより一回り大きなボウルとプレートを置いた感じです。少しはみ出てはしまいますが、食事がしづらい感じではありませんでした。ソロの食事用として、必要最低限の絶妙なサイズ感です。

さて、脚部が連結している側にバーナーを置いた時に気が付いたのですが、天板裏側に付いている磁石がガス缶にも効いていて、ガッチリとまではいきませんが、少し傾けても倒れないくらいに固定されていました。そのおかげで、テーブル上での調理も案外安定感があって安心でした。フライパンや小鍋で焼き物をする時に役立ちそうです。
反面、鉄製、ステンレス製のカップやクッカーを持ち上げる際には、くっついて持ち上げにくくなり、最悪テーブルを転倒させる可能性があるので注意が必要です。
ちなみに多くのULテーブルは軽量ゆえに風に煽られて飛んだり、ひっくり返る可能性があります。ミニカーボ2は、天板のカーボンに厚みがあって重石になり、よっぽどの強風でない限りは大丈夫そうです。
使ってみると、山や道具との向き合い方が変わるかも

「自分で使いたいモノがなかったので、自分でつくった。」
これは多くの有名アウトドアメーカーの創設者が口にする言葉です。この10年程主流となった、ULギアをつくるガレージメーカーの人達もそうです。販売することまではしなくとも、MYOGという自作のギアを使って山を楽しむ人達もそうです。
ノイコヤマイコのULテーブルを使ってみると、「自分でもなにかつくってみようかな」という、これまでとは違う道具との向き合い方、山の楽しさを教えてくれているように感じました。野に行って、山に入って、「楽しんでギアをつくっています」という、つくり手の溢れ出す想いが感じられる道具だからです。
それではみなさん、よい山旅を!