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テントをつぶす

“不快”や“危険”とおさらば! 悪天候時にテントを張るカシコイ方法【スリーブ式の撤収方法】

テント泊をした後の撤収作業は、晴れていて風がないときならば、時間をかければなんとかなるもの。しかし難しいのが悪天候のとき。

ただでさえ風雨の影響で撤収しにくいのに、こういうときこそキチンとしなければ、テントが壊れたりフライシートが飛ばされてしまったり…。

そんなわけで、ここでは”悪天候時のテントの撤収方法”を伝授します。テントにはいくつかのタイプがありますが、まずは「スリーブ式テント」の方法を紹介します。

目次

写真はすべて撮影:高橋庄太郎

悪天候時のテント泊…

滑落、転倒、道迷い……、さまざまな危険が待ち構えている山。悪天候で風雨が吹き荒れると恐ろしさも極まります。
しかし、現代のテントにはすばらしい防雨・耐風性能をもつものも多く、「正しい」テントの張り方ができていれば、強烈な風雨の一晩を耐えきってくれます。

ただ、寝ているうちに天候が良くなればいいのですが、悪天のまま朝が来てしまったら、風雨の中でテントを撤収しなければならなくなります。これがやっぱり大変なのですよね。

スリーブ式と吊り下げ式
左:スリーブ式|右:吊り下げ式

さて、現代の山岳用テントは“スリーブ式”“吊り下げ式”の2種類に大別されます。

“スリーブ式の「正しい」テントの張り方に関しては、以前『“不快”や“危険”とおさらば!悪天候時にテントを立てるカシコイ方法(スリーブ式の設営方法)』という記事でご紹介しましたが、
今回は「悪天候時のスリーブ式の撤収方法」について説明していきます。

なお、はじめにそのスリーブ式の設営方法の記事を読んでいただいたほうが、撤収方法も理解しやすいでしょう。

▼【スリーブ式】テントの設営方法についてはコチラ

「撤収」の基本手順は「設営方法の逆回し」

雨の日のテント泊

悪天候時の「撤収」は「設営」に比べれば簡単です。

設営時は、しっかりペグを打ったり、ガイラインのテンションを適切に調整したりと、テントの強度を高めるためにやらねばならないこと、気を使うべきことがたくさんありますが、撤収時はテント壊さず、吹き飛ばされずに収納できれば多少雑でも何とかなるからです。

もちろん縦走時のように、その日も別の場所に移動してテント泊をする予定ならば、できるだけきれいに撤収するのが理想ですが、そのまま下山するようなときはますます難しくはありません。

また、ここからの説明を読んでいただく際に注意してほしいのは、あくまでも「一例」だということ。

スリーブ式といっても、メーカーによって構造が異なり、まったく同じ方法ではうまく撤収ができない場合があります。

ここで説明する方法を参考にしつつ、自分のテントに応用していただけるといいでしょう。

重要ポイントを把握! 「スリーブ式テント」撤収の一例

さて、「設営時」と同様、はじめに確認すべきは風向きです。
前日の設営時とは風向きが変わっているかもしれませんので、現時点での風の方向を正しく把握しましょう

テント撤収の前に

テントの中でレインウェアを着込み、テント以外の荷物をすべてバックパックに収納します。もちろんできるだけの防水も考えましょう。
それから意を決して、外に出ていくわけですが……。

バックパックを置いておく位置もポイント

テントというものは、人が入っていることで体重が重しになり、その重量も加わって風に耐えています。これはすなわち人が出た途端にテントへ体重がかからなくなり、風に弱くなってしまうということです。
特にテントの底と地面の間に風が吹き込むようになると、テントが地面から引きはがされて吹き飛んでしまいます。

風上にザックおく

その影響を最低限にするために、荷物を詰めたバックパックは撤収作業中、テント内の風上の壁の近くに放置しておき、テントの下に風が吹き込みにくいようにしておきます。

撤収作業はテントを押さえながら、“風上側”から

ここからは順を追って説明していきます。
ここで重要なのは、「フライシートでインナーテントを覆ったままつぶし、ポールを横から引き抜いてしまうこと」です。

【1】風上側のペグをしっかり打ちなおして、耐風性を高めます

風上からペグを抜く

テントを出たら、はじめにやるべきことは「風上に行き、ペグを打ちなおす」ことです。

強い風を受けた風上側のペグは夜のうちに緩んでいることが多く、そこで撤収中のテントの耐風性をキープするために、ペグを改めて強く打ち直すのです。

撤収する前にもう一度ペグを深く差し込むのは、なんだかやるべき作業が逆のような気もしますが、撤収時にテントを飛ばされないようにするためには大事なことなのです。
そして、そのあとに風下側にまわります。

2.風下のペグをすべて抜きます

風下を抜く

次に、風下側のペグを抜きます。
抜かないほうが風には強いのですが、風下側までペグを固定したままだとテントの形状がたわまず、グロメットからポールを抜くといったこれ以降の作業などがしにくくなってしまうからです。

3.ポールの末端をインナーテントのグロメットから外します

ポールをインナーテントのグロメットから外す

4.フライシートの下にあるインナーテントのスリーブからポールを押し出しながら、少しずつテントをつぶしていきます

スリーブからポールを押し出しながら、テントをつぶしていく

5. 内部の空気を抜き、テントをつぶし切ります

テントをつぶす

6.フライシートとインナーテントをつぶし終わったら、インナーテントのスリーブからポールを押し出して完全に抜き、ポールを折りたたみます

ポールを畳む

テントをつぶしてしまえば、風の影響は激減!

テントの空気を抜いて平面になれば、ひと安心。立体化したままのテントに比べれば、風の影響を受けにくくなり、風上側に打ったままのペグのおかげで風に飛ばされる心配が激減します。
しゃがんで撤収作業をするときは、膝でテントを抑え込んでおくと、ますます風に飛ばされにくいでしょう。

金属のポールは重く、形状的にも吹き飛ばされることはないので、抜いたまま放置しておいても大丈夫です。ただ、踏みつけないように注意しましょう。ペグも同様です。

ポールをテントから抜いたあとは、それまでテントを吹き飛ばされないように重しとしていたバックパックを外に出します。

7.バックパックを出す際にはレインカバーもかけておき、木陰などの風雨が当たりにくい場所へ

テントからバックパックを出す

8.テントから離れる際は、念のために風下側から抜いたペグを、風上側で2重に打っておくと安心

ペグを2本差す

フライシートでインナーテントを守りながらの撤収作業

さあ、ここから気合を入れなおし、テントをたたむ作業に移ります。風の流れを利用しつつ、迅速に進めていきましょう!

まずはフライシートから先に収納していきます。

9.テント内に入っているものがすべてなくなったら、風上側に立って、フライシートだけをペグから外します

10.風に飛ばされないように気を付けながら、フライシートを完全に外し……

風に注意

11.風であおられているフライシートを両腕でグルグルと巻くように折り畳み……

フライシートをぐるぐるに巻く

12.できるだけ小さくたたんだら、スタッフバッグの中へ

スタッフサックに入れる

悪天候時は晴れているときと異なり、テントをきれいに収納するのは不可能です。重視すべきは、迅速であること!

ある程度小さく畳んでスタッフバッグに押し込んでしまえば、もう遠くまで飛ばされることはなくなります。

この作業をする前にスタッフバッグはあらかじめポケットなどに入れておきましょう。スタッフバッグが飛ばされるのを防ぐとともに、スムーズに作業が行えます。

よりすばやく、濡れる前に終わらせたい「インナーテントの撤収」

次にインナーテントです。
ここまでインナーテントはフライシートの下にあったため雨に濡れずに済んでいましたが、雨に濡れることが前提のフライシートと違い、インナーテントはできるだけドライなままで撤収したいもの

だから、フライシートを外した後はますます時間との勝負です。

撤収後にそのまま下山するのならば、濡れたとしても多少重くなるだけですが、縦走時のように移動した先で再びテントを張らねばならないときは、濡れがひどいと快適に過ごせなくなります。

13.風上に立ったまま、ペグからインナーテントのループを外します。手で確実につかんでおくか、膝で体重をかけて吹き飛ばされないようにしましょう

インナーシートに乗りながらループを外す

14.フライシートと同じように、すばやく畳んでいきます。

インナーを素早く畳む

15.畳み終わったら、スタッフバッグへ。最後にポールを折りたたんで終了

インナーも素早く畳む

あとは残りのペグを引き抜き、まとめてスタッフバッグへ。
基本的にはこれで完了です!


要点をまとめると

  • 「飛ばされないように注意しながら、風上側で作業を進める」
  • 「フライシートでインナーテントを濡れないようにしながらテントをつぶし、それからポールを抜く」
  • 「雑でもいいから、迅速に撤収していく」

という感じでしょうか。

スタッフバッグに入れてからの防水は?

大半のテントのスタッフバッグには防水性がありません。だから、濡れたテントを収納すると、水が流れ出してきてしまいます。

そこで、少し大きめのドライバッグを持っておき、収納時にテントを丸ごと収納して水漏れを防ぐのがおすすめです。

また、インナーテントがあまり濡れていなければ、インナーテントだけジップロックのような食料保存袋に入れて、濡れ切ったフライシートと分離して持ち運ぶのもよいでしょう。

形状にもよるが、濡れたテントを収納するためのドライバッグは容量10Lもあれば十分。ソロ用テントのインナーテントなら、大きめの食料保存袋に入ってしまいます。

ドライバッグに入れたテントは「雨蓋との間」に。

雨蓋の間に入れる

撤収したテントをバックパック内にきれいに収納しようとすると時間がかかり、テント自体はドライバッグで防水されていたとしても、バックパック内部に雨が吹き込んで濡れてしまいます。

そのために撤収したテントはバックパック本体と雨蓋(リッド)の間に挟み込んだりして、その上をバックパックカバーで覆う程度にとどめ、山小屋場などの屋根がある場所へ移動したり、天気がよくなるのを待ったりして、改めてパッキングし直すほうがいいでしょう。

ドライバッグに入れたテントは、雨蓋との間に。落とさないようにストラップで強く締めること!

大事なコツを覚え、あとは自分のテントに合わせてアレンジを!

自分のテントに合わせてアレンジを

シンプルな構造の“スリーブ式”は使い慣れればなれるほど、悪天候時でも設営/撤収がすばやく行えます。
ただ、冒頭で申し上げたように、それぞれのテントの形状でも進め方が少しずつ違うので、ここで紹介した方法をアレンジし、自分のテントにより適した方法をみなさん自身で考案してみてください!

次回は、スリーブ式以上にたくさんのモデルが販売されている“吊り下げ式”テントに関して、「悪天候時の設営/撤収方法」をご紹介する予定です。

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