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迫る悪天で計画を変更!北アルプス テント泊登山のリアルドキュメント2泊3日【実践編】(2ページ目)

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なんとか無事に大天荘へ。つらいときは声をかけ合おう

行動時間を記録しながら歩き、声を掛け合い、立ち休憩の小休止をこまめに取ったことで、歩くペースが順調になりました。

その後、大下りノ頭までは大きな遅れがありましたが、大天荘に到着したタイムは、かなりリカバリーできてホッとひと息。テントを張ってから大天井岳に登頂しました。

渡辺ガイド

初日は、疲れなどからペースも落ち気味になってしまいました。
 
黙々と歩くとつらいばかりなので、急登や長い行程の後半などのつらいときこそ積極的に声を掛け合いましょう。

コースタイム【1日目】

燕山荘で相談の時間を取ったこともあり、大天荘までの中間地点である「大下りノ頭」地点ではかなり遅れていましたが、大天荘で遅れを半分に取り戻しました。

2日目に崩れる天候。進むか、戻るか、エスケープルートを取るか?

しかし、喜んでよろこんでばかりもいられません。入山前日から心配していたように、2日目の午後からは天候が崩れる様子。
このまま計画通りに歩くと、強風と大雨のなかを進むことになり、遭難や低体温症のリスクが高まります。今回の登山計画を左右する判断が迫られました。

登山中の計画変更の判断や、変更ルートの選定は様々な情報から判断する必要があります。

判断材料になる情報>
・登山地図から地形を読んでルートの難易度を確認
・携帯電話で天気関連(風、雨、雷など)の情報を取得
・1日目の歩きからメンバーの力量と疲れ具合を把握

天候判断はどうやってする?>
1)天候変化を把握
  └天気図で全体の傾向を知る
  └天気予報サイトで風、雨、雷を確認
2)天候変化が何時くらいになるのかを把握
3)ポイント通過時間と天候変化の時間が重なるか確認
4)エスケープの選択やルート変更を検討

エスケープルートがどういう道なのかを把握する

予報を見る限りでは、3日目の天気も不安定で判断に迷うところ。リーダーの水杉と副リーダーの横山さんが登山地図と携帯電話とにらめっこ。

水杉

西岳から槍沢に下りるルートは、コースタイムが短いけど、危険箇所もあって地形的なリスクが高そう。風も強そうだし、心配…。

計画変更・エスケープルートを選択するために

コースタイムだけでなく、地形図を見ながら
・急な傾斜のある場所なのか?
・危険箇所はないか?
・樹林帯に逃げ込めるのが一番早い場所はどこか?
・自分たちの体力や技術でエスケープルートを歩くとどうなるか?

など、どんな行程で所要時間はどれくらいになるのかを具体的にしていきます。

いくつかのルート案がでましたが、1日目の歩みの様子やペース、得意・不得意を考慮して最終的にルートを決定しました。

2日目は距離を短くして山小屋泊に。3日目の天候回復が見込めない場合のルートも確認

そして、夕飯前の作戦会議に集まったみんなを前に、計画の変更を伝えます。

横山さん

明日は午後から天気が崩れる予報なので、常念小屋まで3時間ほど歩いて山小屋泊まりにします。
 
3日目の距離は長くなりますが常念岳、蝶槍、横尾を通って上高地に下ります。

テント泊から山小屋泊にすることで、天候悪化のリスクを軽減し、疲れた体をしっかり休められます。

さらに、3日目に天候が回復しない場合も考えて、三股や一ノ沢登山口にエスケープもできるように計画を変更しました。

渡辺ガイド

携帯電話の電波が通じない場所もあります。
 
天気の情報を得るためにラジオを装備したり、山小屋のスタッフに聞いたりするのも、ひとつの手段です。

常念小屋に着くまで天気が悪くならないように願いながら、1日目の疲れをしっかり取るために日暮れとともに就寝。

<2日目>計画変更!行動時間を短めにして3日目に備える

常念小屋まではコースタイムで3時間。短い距離ですが、ぶ厚いイヤな雲が槍ヶ岳や穂高連峰に掛かり、悪天候との追いかけっこに。

油断していると体をもっていかれそうになるほど強い風も吹き荒んでいます。

進捗を伝えることでメンバーの不安を払拭

2日目のタイムスケジュールをチェックするポイントに到着したとき、横山さんがひと言。

横山さん

計画した時間通りに到着です!

大迫

お、順調なんだな。がんばろうッ!

計画の進捗を伝えたことで、メンバーの不安も取り除かれたようです。雨に降られる前に小屋に着きたいと、みんなの気持ちもひとつに。

計画通りに雨に振られる前に、常念小屋に到着。悪天につかまらず、ホッとひと安心のメンバー。

あらためて、前日の登山を振り返り。雰囲気作りも積極性も大切だった

携帯電話で天気情報をもう一度確認すると、夜にかけて天候が悪くなるものの、夜更けまでには回復するという吉報に。
この情報で3日目の行程は確定。常念岳と蝶槍を登って横尾に下り、上高地へ。天候判断が気持ちいいようにハマり、変更した計画の成功を約束されたような瞬間でした。

お昼ご飯を食べ、時間に余裕もできたので、1日目と2日目の記録や歩いてきた登山道を見ながら、メンバーみんなで振り返り。

大迫

1日目はのどの調子が悪くて、チームの雰囲気作りができなかった。登山前の体調管理は大事ですね。

鰐渕さん

つらいときこそ自分から話すといいかも。
 
ペースが上がりすぎなくなるし、高山植物や動物のことを聞くことで、気分転換にもなるよね。

水杉

チームのリーダーでしたが、経験豊富なメンバーに任せっきりになってしまいました。
 
リーダーとしての役割ややり方を教わってから積極的に声掛けや雰囲気作りができたかなと思います。

テント泊にこだわらず小屋泊にして正解。体を休めて次の日に備える

午前中に行動を終えられるように常念小屋を目的地にしたこと、テント泊にこだわらず山小屋泊にしたことが功を奏しました。

計画を変更したおかげで、2日目はゆっくりと安心して体を休められます。

コースタイム【2日目】

元々蝶ヶ岳ヒュッテまでだったルートを常念小屋までに変更。天候悪化の予報を考慮して、その前に着くようにスタートしました。

<3日目>距離が増えた最終日。安全に下山するために助け合う

計画の変更で3日目にして一番長い距離を歩くことになり、夜中の2時から歩き始めることに。そして、目の前の常念岳まで400mもいきなり登らなくてはいけません。

横山さん、水杉さんの懸念点は主に2つ。
・足元が暗い中、ヘッドライトを点けて歩くこと
・岩場の下りが苦手でペースが遅くなる

しかし、不安を支えたのはメンバーと彼女たち自身の成長でした。

ヘッドライト登山の不安もメンバーがサポート

横山さん

夜明け前にヘッドライトを点けて行動したことがほとんどないので不安…。

不安な面持ちの横山さんを、後ろから鰐渕さんがサポート。暗い登山道は目印が見えづらく、道迷いのリスクもあるため、集中力も必要です。
メンバー同士が声を掛け合うことで、暗闇の400m急登もつらさを感じさせることなく登りきりました。

練習のおかげで岩場の下りもスイスイと

今までは時間を多くとられていた苦手な岩場の下りシーンでも、スイスイ下りられるように。

実は時間があった2日目に渡辺ガイドの指導で下りの練習をしていた2人

そのおかげもあって、計画したタイムスケジュール通りに進むことができました。

要注意!長い距離で溜まった脚の疲労

夜中からの歩き出し、これまでで一番長い距離、400m登って400m下ってまた200m登るというハードなアップダウンのくり返しで、自分で思っている以上に脚には疲労が蓄積されています。

疲労しているときには脚が上がらなくてつまずきやすかったり、踏ん張りが効かなくなったりして、転倒しやすいので注意しましょう。

蝶槍を過ぎたあとの分岐から横尾までは、樹林帯のなかを2時間かけて一気に1,000mも下ります。「登山のケガは下山に多い」とはよく聞く話で、最後まで油断は禁物。

横尾まであと少しというところで、下りに不安のあった水杉が、岩に乗せた足をスリップさせて転倒。

普段なら気を付けるようなポイントも、疲れと単調な下りで集中力が欠けてしまったのかもしれません。

大きなケガもなく無事でしたが、鰐渕さんがすかさず一言。

鰐渕さん

荷物、持つよ!

仲間のサポートで歩き続けられる気力が沸きます。

疲労が溜まっているときは頼ることも大事

脚が疲労しているときには荷物を軽くすることが一番。グループ登山の場合は、体力に余裕のある人に遠慮なく重たい荷物を預けましょう。

迷惑をかけてしまうと思わずに、グループが安全に下山するための術だと考えましょう。

みんな揃って無事に下山!

悪天候によって計画を変更しなくてはいけませんでしたが、北アルプスの稜線を2泊3日で縦走して、当初ゴールにしていた上高地に無事たどり着きました。

これも登山計画を事前にしっかり立てたこと、山の上でも天候などの情報を広く収集したこと、集めた情報をもって正しく判断できたからこそです。

なによりも、つらいときに助け合い、足りないところは補い合えたグループ登山のチームワークが、上高地で炸裂する笑顔に繋がりました。

コースタイム【3日目】

「予定タイム」は、2日目にあらたに設定したコースタイム。下りの不安がありましたが、2日目の下り練習のおかげで横尾山荘には予定より早めに到着できました。

事前の準備と判断する知識が必要。予期せぬ計画変更で学んだこと

今回は悪天候により、登山中に計画の変更を迫られ、緊迫した作戦会議もありました。

下山した安堵もひとしおの様子ですが、山への情熱は熱く、学んだことをさっそく振り返る2人。

横山さん

登山の計画には事前の準備が大切なことを思い知らされました。
 
コースの地形や天気図の読み方、雨・風・雷の情報の取り方など、山を登るうえでの基本知識を身につけたいと思いました。

水杉

情報は集めるだけじゃなくて、それを活かしてしっかり判断できる知識と経験が必要ですね。
 
登山計画の変更はとても不安で、自分たちの選択がチーム全体の動きに関わるという責任感を強く感じて、横山さんとじっくり相談しました。

経験者メンバーとガイドから、頼もしく成長した2人の登山者へ

経験者のメンバーから見た横山さん、水杉さんの様子はどうだったでしょうか。

計画を立てるだけでなく、変更を決断し、主体的に動くことで得られたことがあったようです。

大迫

正直、今回の登山計画は横山さんと水杉の2人にとって、体力的にも経験的にもむずかしいとは思っていました。

でも、歩くペースのリードやチームの雰囲気作りのやり方を覚えて、自分でやるようになってからは、大きく変わりましたね。

これから歩くルートの詳細や時間もしっかり伝えてくれるようになって、計画の解像度が上がって安心して歩けるようになりました。

自分の得意と不得意を把握すると、もっと安全な計画を立てられるようになると思います。

鰐渕さん

初日の疲れ具合や先頭に立とうとしない姿勢を見ていると、ちょっと心配に感じていました。

でも、計画変更するときに、2人は初めて自分で山と向き合ったんじゃないかなと思います。これまでは誰かについていく登山が多かったみたいですが、今回の山行を経て、自分で判断できる登山者になれたんだと思います。

行く山を調べたり、道具の使い方を調べたりするとどんどん理解が深まって山がもっとおもしろくなると思います。探求心を忘れずに楽しさを突き詰めて行きたい山ややりたいことにもっとチャレンジしてほしいなと思います!

渡辺ガイド

2人の素直な吸収力と成長力に驚かされた3日間でした。この計画変更がうまくいったのは、2人が「自分たちがやる」という主体的な気持ちになって、判断したのが大きいです。
 
もちろん鰐渕さんや大迫さんのサポートがあったからこそ、このチャレンジができました。
 
もっと体力を付けて、新しい山の知識をどんどん吸収して、登山の経験を積み重ねて、自分でしっかり計画できる登山者になってほしいです。

計画の綿密さで山行が大きく変わる?

ただルートをなぞるだけでは登山計画とはいえません。

悪天候や体調不良などのいざというときにも対応できる事前の情報収集や、エスケープルートなどをしっかり設定することがカギになります。

集めた情報を読み解く力も大切です。普段から天気図を見たり、登山中に登山地図と実際の地形を照らし合わせみたりしましょう。

ぜひ、次回以降の登山計画の参考にしてくださいね!

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