アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
本記事で紹介している「FIELDCONNECT」は、2024年1月31日(水)をもってサービスの提供が終了となります。詳しくは以下のページをご確認ください。
スマホ圏外で遭難!ソロ登山者AさんとBさんの運命を分けたものとは?

気ままなソロ登山を楽しむAさんは、今日も足どり軽く歩いていました。そんなとき、思わぬ事態が発生!不意にバランスを崩したAさんは勢いよく転倒した弾みで、登山道脇の斜面を滑落してしまったのです。
しばらくして我にかえったAさんは、登山道へと這い上がろうとします。しかし滑落の際に足を痛めてしまったようで、思うように動くことができません。

何度か登山道に向かって声をかけるものの応答はなし。救助要請をすべく取り出したスマートフォンも圏外です。もちろん家族にはGPSアプリで位置情報を共有していますが、あいにく今は仕事中。ランチタイムなどにチラリと位置情報を見て、ログが動いていないことに気づいたとしても、単なる休憩中と思われるかもしれません。
家族の仕事が終わるのは日没後、どうする……Aさん!
同じ状況に陥ったBさんは心に余裕あり!?

その頃、同じくスマートフォン圏外で行動不能になってしまったのがソロ登山者・Bさんです。滑落して動けない状況はAさんと同様ですが、Bさんは落ち着いてジャケットのポケットからある端末を取り出します。端末を操作することで迅速に捜索活動が開始され、その日のうちに救助してもらうことができたのです。
これこそが、今回紹介するアイテム・FIELDCONNECT(フィールドコネクト)※です。
安全登山をサポートする「FIELDCONNECT」

FIELDCONNECTは「GPSトラッカー&コミュニケーター」というアイテム。大きな特長は、これまでGPS機器とスマートフォン、あるいはスマートフォンのいくつかの機能やアプリを併用して行う必要があった操作が、ひとつの端末とスマートフォン上のダッシュボードで完結することです。
FIELDCONNECTの主な機能は以下の通り。
各機能について詳しく見ていきましょう。
1. 自分の現在位置の把握

FIELDCONNECT端末を購入すると、端末と同期するダッシュボードという自分専用の画面を持つことができます。そして画面左側の上から3番目・ピンのボタンをタップすると現在地と進行方向が表示されます。
なお、この位置情報は、ダッシュボードを開いているブラウザ(Safari・Chromeなど)が取得しているもの。こうしたブラウザは、消費電力の管理がある程度最適化されています。スマートフォンアプリとして現在位置を連続して取得するGPSアプリよりも、バッテリー消費を減らすことが期待できます。
2. 家族・友人への位置情報共有

スマートフォン上のダッシュボードに表示される位置情報は、自動的に作成されるシェアビューURLを家族・友人に知らせることで共有可能。9分間隔でFIELDCONNECT端末の位置が自動送信され、狼マークで地図上にトラッキングされます。家族・友人はこの画面を見ることで、登山の進捗やいつ・どの場所にいたかを知ることができるのです。
3. 緊急時の家族・友人へのSOS発信

冒頭のBさんが使用したのが、赤いSOSボタン。これを押すことで予めメールアドレスを登録(最大10件可能)しておいた家族・友人に、SOSを押した地点の位置情報と共にメール(※)が届きます。
遭難者本人が救助要請できないスマートフォン圏外エリアにいても、家族・友人が警察・消防などに通報して位置情報を共有することで、スピーディーな捜索・救助活動が可能になるのです。
4. 登山の進捗状況の家族・友人へのメール送信

家族・友人にも日常生活があり、ひっきりなしにシェアビュー画面を見ている訳にはいきません。FIELDCONNECTでは最大5種類のメッセージを登録可能。オレンジのMSGボタンをメッセージ番号の回数押すことで、予めメールアドレスの登録をした家族・友人に現在の状況をメール(※)送信できます。
登山開始時・山頂や山小屋到着時・下山時など、家族・友人との共有事項として重要な内容を、スマートフォンを取り出してメールやチャットアプリを起動することなく、FIELDCONNECT端末のボタン操作するだけで知らせることができるのです。
5. 携帯電話・衛星電話の通信エリア外でも利用可能

FIELDCONNECTが使用しているのは、Sigfox(シグフォックス)ネットワークという通信規格。2009年にフランスで提供が開始され、日本では検針員が訪問しなくても使用量がわかるガス・水道などの電子メーターにも使用されています。
画像は北アルプス・立山室堂〜薬師岳付近の地図。グレーのNTT docomo通信エリアよりも水色のSigfox通信エリアの方が広範囲をカバーしており、特に稜線上でのアドバンテージが印象的です。

端末からの「位置自動送信」「SOS発信」「メール自動送信」の機能は、Sigfox圏内のみ可能。ただしSigfox圏外でもキャリアに応じたスマートフォン圏内であれば、ダッシュボードから手動(スマートフォンの操作)で位置情報を記録することができます。
画面左側の上から4番目・Cボタンをタップすると手動チェックインされ、狼マークが地図上にトラッキング。もちろんシェアビュー先の家族・友人も閲覧することができ、その場所にいた日時を知ることができます。
Sigfoxとスマートフォン両方の電波を合わせて使うことで、利用可能エリアが大幅に広がるのです。
登山で検証!FIELDCONNECTの便利な機能
FIELDCONNECTは山でどのように活用できるのか、実際に使用してみました。
今回は筆者が登山して、メッセージ送信・シェアビュー共有先に編集部員を設定(*)。両者の操作・閲覧画面も交えて、その様子を紹介します。筆者のスマホのキャリアはNTT docomoです。

当日歩いたのは、名栗車庫バス停→子ノ権現→吾野駅の赤線ルート。ご覧の通り、水色のSigfox通信エリア、グレーのNTT docomo通信エリア、両方とも通信可能なエリア、そしていずれもカバーされていないエリアを通過します。各エリアでFIELDCONNECTを使ってわかった、便利な機能をピックアップ!
Sigfox圏外でもスマホ圏内であれば、メッセージ送信が簡単にできる

登山口の名栗車庫バス停はSigfox圏外のため、FIELDCONNECT端末のMSGボタンではメッセージの送信ができません。ただしスマホートフォン圏内であれば、ダッシュボード画面左側の上から5番目・M1ボタンでメッセージ1を送信可能。バスを降りたところで、M1ボタンを押してみると……

メッセージ1に登録しておいた「これから登山を開始します。」のメッセージを編集部員に送信することができました。いちいちスマートフォンで文字を打たなくても状況と位置情報を共有できるのは、非常にラクです。
ダッシュボードでは2種類までしかメッセージを送信できないので、Sigfox圏外で送信する可能性のあるメッセージをM1、M2に登録しておくと良いでしょう。
Sigfox・スマホ共に圏外でも、自分の位置情報を常に把握できる

Sigfoxの圏外では位置情報の自動取得ができず、さらにスマートフォンも圏外の場合は、手動チェックイン(手動で位置情報を記録すること)もできません。今回は名栗参道という字のあたりから両方とも圏外になることがわかっていたので、左の画面のように直前で手動チェックイン(Cボタンを押す)をして狼マークをトラッキングしました。
試しに両方の圏外に入った青丸地点でCボタンを押してみたところ、右の画面のようにエラーに。スマートフォン圏内にいるうちに手動チェックインをして、圏外になる直前までの自分の足跡を残すことがおすすめです。

チェックインはできないものの、両方の圏外であっても青丸で現在位置の把握は可能。これはGPS機器として、登山しながら非常に心強く感じました。ただし別のブラウザで閲覧しているシェアビュー先(編集部員側の画面)には、現在位置は表示されません。
またSigfox・スマートフォン圏内でダッシュボード画面に表示していなかった部分の地図は、両方の圏外ではグレーアウト表示となります。この部分に入ると現在地も表示されないので、次の圏内エリアまでを含めた範囲を表示させておくことが位置情報把握のコツとなります。
『山と高原地図』の表示に標準対応

FIELDCONNECTの地図表示で魅力的なのは『山と高原地図(昭文社刊)』の閲覧が可能なこと。多くのGPSアプリは国土地理院の25000分の1地形図を使用しているなか、地図読みに慣れていない人にも嬉しい機能です。
また『山と高原地図』の等高線は20m間隔で表記されていますが『山と高原地図詳細』レイヤーを選択すると10m間隔の記載となり、より細かな地形の把握が可能になります。
もちろん国土地理院の地形図へも切り替え可能。その他にも、国土地理院衛星地図・Open Street Map・Google Map・Google Map衛星地図も選択でき、登山以外でも活用できそうです。Sigfoxの通信エリアも「FIELDCONNECTエリア」のレイヤーで確認できます。
バッテリーの消費を抑えられる
位置情報の取得や表示をスマートフォンのブラウザが行っているため、FIELDCONNECTのダッシュボードは、従来のGPSアプリと比べてスマートフォンのバッテリー消費が少ないという利点も。
スマホ圏外でもSigfox圏内であれば、位置情報の共有や端末からのメッセージ・SOS送信が可能

Sigfox・スマートフォン圏外から稜線付近のSigfox圏内(スマートフォン圏外)に入ったところで、FIELDCONNECT端末の位置自動送信が再開。シェアビュー先の画面にも現在位置を示す狼マークが表示され、Sigfox圏外になる直前に手動チェックインした場所と軌跡がつながりました。

Sigfox圏内では、スマートフォン圏外であってもFIELDCONNECT端末からのメッセージ送信とSOS送信も可能。子の権現山頂から、メッセージ2「山頂です」を送信してみます。
端末からのメッセージ送信

FIELDCONNECT端末のMSGボタンを2回(メッセージ番号と同じ回数)、カチッカチッと押します。すると端末下部のLEDランプが青色に点灯し、メッセージが送信されていることがわかります。

シェア先に設定されている編集部員はメッセージを受信。届いたメールだけでなく、シェアビュー画面の受信履歴からも確認できます。スマートフォンのダッシュボードから送信されたメッセージも同様です。
端末からのSOS送信

続いてSOS送信。FIELDCONNECT端末のSOSボタンを5秒間長押しすると、端末下部のLEDランプが赤色に点灯して、SOS送信されていることがわかります(誤ってSOS送信してしまった場合は、SOSボタンを3回押すことでキャンセル可能)。

SOS送信先がメールを受信。シェアビュー画面の地図上でもSOSが押された地点を確認できます。
このメールは送信者自身にも届き、ダッシュボードの受信履歴でも閲覧可能。スマートフォン圏内であれば、メッセージやSOSがきちんと送信されたかを確認できます。
荷物でいっぱいのザックにFIELDCONNECT端末を押し込むように収納すると、ボタンがぶつかって知らぬ間にSOS送信されることも。使用目的を考えても、端末はウェアのポケットなどすぐに取り出せる場所に収納するのがおすすめです。雪崩ビーコンと違い、スマートフォンやBluetoothデバイスとの干渉もありません。
【総評】端末だけでなく、ダッシュボードも大活躍

スマートフォンの圏外でも、Sigfox圏内であればFIELDCONNECT端末からメッセージやSOS送信ができるという利点は前述のとおり。今回の登山で強く感じたのは、スマートフォン上のダッシュボードの有効性です。
特に今回のような登山口が住宅地となっている低山では、山麓がスマートフォン圏内・山頂周辺の稜線がSigfox圏内というルートが多い印象。Sigfox圏内のみ使用できるFIELDCONNECT端末と、ダッシュボードをあわせてフル活用することがおすすめです。
開発者に訊く!FIELDCONNECT誕生の裏話

FIELDCONNECTを取り扱うのは株式会社PORTALFIELD(ポータルフィールド)。同社の代表取締役でFIELDCONNECTを開発した高橋康平さんに、このアイテムに込めた想いやこだわりを伺いました。
開発のきっかけはレンジャー時代に抱いた問題意識

——FIELDCONNECTを創ろうと考えたきっかけを教えてください。

——奥多摩周辺は森が深く地形も複雑なので、行方不明などの遭難も多いですよね。
いざという時に、直近までの登山者の足取りを探るすべがないんですよ。

——足取りがわからないと範囲も広大になってしまい、効率的な捜索ができないですからね。


——位置情報というとGPSアプリでも共有が可能ですよね。
通信エリアに入って機内モードを解除して初めて、そこまでの位置情報が共有されるんです(*)。

わずか数年前ですが、当時Sigfoxを利用したサービスの提供はなく、「じゃあ、まずは自分が作ってみよう!」という気持ちが高まっていきました。これがFIELDCONNECT開発の原点です。

登山での使いやすさを重視した細部へのこだわり

——Sigfoxの利用以外で、FIELDCONNECTの開発でこだわった点はありますか。

——『山と高原地図(昭文社刊)』が表示されるのも珍しいですよね。
冒険家や一部の上級者だけでなく、一般縦走路を楽しむ多くの登山者や山岳地帯で活動する人ができるだけ気軽に使えるように……これがFIELDCONNECTの開発コンセプトです。
登山者になじみの深い『山と高原地図』は、欠かせない存在だったんです。

——国土地理院の地形図に切り替え可能な点も嬉しいですね。


——FIELDCONNECTを使う上での注意点はありますか。

——最後に、FIELDCONNECTを活用するコツがあれば教えてください。
Sigfox圏内で行動不能になってしまった場合は、その地点に位置自動送信の狼マークが蓄積されていくので、そこで遭難している可能性が高いと考えられます。

安全登山のための選択肢にFIELDCONNECTを

冒頭のBさんはSOSを受信した家族からの通報で迅速に捜索活動が開始され、その日のうちに救助してもらうことができました。
山間部はスマートフォン圏外のエリアがまだまだ多いことやバッテリーの消費を気にしながら行動する必要があることなど、現代の登山では避けて通れない問題があります。その不安を軽減し、万が一の際の心強いバックアップを実現するのがFIELDCONNECTです。
警察や消防などの機関に直接通報する機器ではありませんが、救助要請をして良いものか躊躇してしまうような場面でも、家族や知人だからこそ気軽にSOSを出せるところも心強いのではないでしょうか。
この機会に、登山への携行を検討してみませんか。
FIELDCONNECTを使うには

ここではFIELDCONNECTを使用するための設定方法を紹介します。購入して届いた箱の中身は以下の通り。
それでは早速セットアップしていきましょう。
FIELDCONNECTの動力源は単3乾電池2本、同じブランドの新品を2本セットしましょう。
FIELDCONNECTの電源をONにするには、MSGボタンを3秒間長押し。LEDランプが緑→水色の交互点灯を2回繰り返した後、青色に4回点滅します。
電源をOFFにする場合も、MSGボタンを3秒間長押し。LEDランプがオレンジ色→水色の交互点灯を4回繰り返した後、消灯します。
ダッシュボードの設定

まずはユーザー登録を行います。付属のQRコードを読み取ると、左の画面に。名前・メールアドレスを入力して「認証メールを送信」ボタンを押すと、入力したメールアドレス宛に認証番号が届きます。認証番号を入力してパスワードを設定すれば、ユーザー登録が完了です。

続いて左の画面に切り替わるので、登録したメールアドレスとパスワードを入力すると中央の画面に。OKをタップすると右の画面に切り替わります。画面左側一番下の「メニュー」ボタンをタップして、各種設定に入ります。

ダッシュボード左下の「メール送信先設定」をタップして、SOS発信やメッセージ送信する人の名前とメールアドレスを登録していきます。前述の通り最大10件登録可能で、都度変更も可能。山岳会など団体での登山と個人の登山で連絡すべき人が変わる場合など、山行ごとにメール送信先を変更できます。

ダッシュボード右下の「メール内容編集」をタップして、メッセージ1〜5番の内容をお好みのテキストに編集できます。初期状態では中央のテキストですが、今回はメッセージ1番を「これから登山を開始します。」に編集して登録しました。

SOS発信やメッセージは登録した最大10件のみにしか届きませんが、シェアビューでの位置情報はURLを知っている人なら誰でも閲覧可能。Twitter・FacebookなどのSNSでシェアして、フォロワー・友達に登山当日の足取りをリアルタイムで共有することもできます。
とはいえ帰路〜自宅の位置情報までは知らせたくない場合もありますよね。そんなときは、ダッシュボード上部の「表示時間を変更する」で、シェアビューURLを閲覧できる時間の範囲を設定することが可能なのです。
FIELDCONNECT端末の使用方法は取扱説明書に記載、ダッシュボードの設定は画面の指示に従って行えば比較的簡単。手軽に登山で使用する準備ができますよ。