旧甲州街道の要衝・小仏峠をめざして
現在は高尾山口駅前から大垂水峠を越えて相模湖へ続く国道20号線(甲州街道)ですが、かつての旧甲州街道は景信山と城山の間にある小仏峠を越える道でした。
戦国時代末期には甲斐国(山梨県)の武田氏がこの峠を封鎖したことから、武蔵国(東京都)・相模国(神奈川県)から富士山に行くことができなくなり、高尾山に富士浅間神社が建てられたという言い伝えも。
今回は相模湖駅からこの旧甲州街道を通って小仏峠へ登り、景信山を目指してみましょう。
コース概要
最高点の標高: 717 m
最低点の標高: 199 m
累積標高(上り): 710 m
累積標高(下り): -710 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:約4時間40分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
登山口情報
スタート地点のJR中央線・相模湖駅には更衣室やコインロッカーも設備されており便利。ロータリーを挟んで反対側には観光案内所とトイレもあります。
この観光案内所でぜひゲットしたいのが、甲州古道案内図というリーフレット。等高線などが記入されていないので登山地図としては使用できませんが、知らなければ通り過ぎてしまう一里塚跡などが記載されており、より味わい深い登山を楽しむことができますよ。
コース詳細ガイド
さあ、それでは景信山へ向けてスタートです。
Section1:相模湖駅〜底沢バス停(約35分)
模湖駅前から商店街を通り、そこからはすべて国道20号線沿いを歩きます。車両の通行も多い区間なので、道路右側のガードレールで仕切られた歩道を進みます。
中央自動車道・相模湖東IC出口を過ぎると古い建物が続くようになり、旧甲州街道・小原宿本陣跡では見学も可能。隣接する小原の郷を過ぎると、底沢バス停までは下り坂が続きます。
相模湖駅前ロータリーから、商店街を抜けて国道20号線をめざします。
「相模湖駅前」の交差点を左へ、ここから国道20号線沿いを歩きます。
左手に交番が見えてきます。正面にそびえているのは東海自然歩道にある嵐山です。
小原宿本陣跡までは、ガードレールで仕切られた歩道は右側のみ。交番の先の歩道橋や横断歩道を通って、右側を歩きましょう。
国道20号線は自動車の往来が多く、このように見通しの悪いカーブもあるので、歩道を通行してください。
中央自動車道・相模湖IC出口の高架橋をくぐります。奥に見えるのが景信山、右側の凹んだ場所が小仏峠です。
周囲に古い建物が増えてくると、小原宿本陣跡。旧甲州街道の宿場町・小原宿の中心的な存在で、神奈川県内の東海道中・甲州街道にあった26本陣で唯一現存する建物です。
小原宿本陣跡の先にある小原の郷は大きな駐車場があり、トイレや資料館も併設されています。景信山までのトイレなので、立ち寄っても良いでしょう。
小原宿本陣跡や小原の郷周辺は左右に歩道がありますが、その先はまた右側のみ。やがて国道20号線は下り坂となっていきます。
下りきったところが底沢バス停。ここで国道20号線とはお別れ、前方に見える横断歩道を左へ渡ります。
Section2:底沢バス停〜小仏峠登山口(約30分)
底沢バス停からは1車線道路沿いを歩きます。交通量は多くありませんが、2022年現在は中央高速道路の拡張工事が行われており、今後数年は工事車両の往来があるので注意しましょう。
美女谷橋先を右に曲がる分岐さえ見逃さなければ、あとは一本道。のどかな山里の風景を楽しみながら進むと、ようやく小仏峠登山口に到着です。
底沢バス停で横断歩道を渡ると左側に、この道標があります。正直なところ、あまり目立ちません。
むしろこの「美女谷入口」の看板の方が目立つでしょう。この看板に沿って、1車線道路を進みましょう。
国道20号線沿いと違い、歩道はありません。前述の通り工事車両が通行することもあるので、注意しましょう。
国土地理院の地形図(もちろんGPSアプリも)では、JR中央線右側の道しか記載されていません。ところが甲州古道はここで線路右側を直進せず、ガードをくぐって線路左側に沿って続いているのです。
しばらくはJR中央線に沿って歩きます。高尾駅から西は列車の運行本数がぐっと減るため、ここで列車に出会ったらラッキーですね。
やがて線路から離れると、中央自動車道の高架橋をくぐります。進んでいくと左手の斜面に数件の住宅があります。
美女谷橋を渡るとすぐに分岐があるので注意しましょう。前方右手に「底沢加圧ポンプ所」の柵で囲われた敷地が見えてきます。
「底沢加圧ポンプ所」の柵に沿って分岐を右に進みます。ちなみに直進すると、美女谷経由で奥高尾縦走路の底沢峠に至ります。
この看板さえ見落とさなければ、大丈夫です。分岐からはやや上り坂となります。
少し進むと、中央自動車道の高架橋を再度くぐります。甲州古道がいかに曲がりくねっているか、中央自動車道やJR中央線がいかに直線的か、実感する場所です。
単調な1車線道路歩きが続きますが、めざす景信山の稜線がだんだんと近づいてきます。
拡張工事が行われている中央自動車道が見えるカーブを登っていくと、小仏峠登山口は目前です。
小仏峠登山口に到着です。ちなみに1車線道路を進むと、城山から東海自然歩道を下った千木良に出ます。
Section3:小仏峠登山口〜小仏峠(約50分)
ここからはいよいよ本格的な登山道に入ります。最初は尾根の南側を歩き、ジグザグの急登を越えると送電線の鉄塔とベンチがある広場。
なだらかな尾根歩きの後に再びジグザグの登りがありますが、登山道が尾根の北側になると小仏峠は目前です。
道標の示す方向に従って、今まで来た道からほぼ180°ターンして舗装路を登って行きます。
すぐに舗装路から右に分かれる、登山口の入口があります。最初はコンクリートの路面ですがすぐに終わり、階段状の登山道を登って行きます。
明るい尾根の南側をややトラバース(横断)するように進みます。
この道標から先はしばらく、ジグザグの急登区間に入ります。
登山道は洗堀状(溝のような形状)になっており、古くから多くの人々が行き交って踏まれてきた道であることを感じます。
送電線をくぐって鉄塔の立つ広場に出ると、いったん急登区間は終わりです。
登山道を挟んで鉄塔の反対側には木製のベンチも設置されており、ひと息入れるには格好のポイントです。
鉄塔から先は、しばらくなだらかな尾根道が続きます。小仏峠登山口〜小仏峠の登山道区間1.8kmのうち、まだ残り1.2kmほどあるので、あせらず進みましょう。
登山道は再びジグザグの登りに変わりますが、先程よりは斜度もゆるやかで登りやすく感じることでしょう。
再び尾根の南側をトラバース(横断)しながら進みます。写真のように尾根に上がる踏み跡もありますが、右側の登山道をたどりましょう。
この道標まで来れば小仏峠登山口から小仏峠の3分の2を歩いたことになります。
先程の道標手前から三たびジグザグ区間に入りますが、距離も短く傾斜も緩やかになってきます。
登山道が尾根の北側をトラバース(横断)するようになると、ほぼ平坦な道。小仏峠は目前です。
登山道がT字路にぶつかった場所が小仏峠です。右に城山、左に景信山へのコースが延びており、ベンチや明治天皇御休所の記念碑が建っています。
左に進み廃屋の脇を抜けると3体のタヌキ像があるもうひとつの広場に出ます。こちらにもベンチやテーブルが設置されています。
Section4:小仏峠〜景信山(約40分)
小仏峠から景信山までは、東京都と神奈川県をへだてる奥高尾縦走路の尾根上を進みます。基本的に登りですが平坦な区間も多く、木々の間からの眺望も楽しみならが歩くことができるでしょう。
小仏峠から登ると山頂の道標は2軒の茶屋を通り過ぎた裏手に位置しているので、最後まで詳しくご案内します。
小仏峠のシンボルのひとつ・タヌキ像の後ろには二手に登山道が延びています。右手は小仏バス停への下山路なので、景信山へは左手へ進みます。
最初は少しだけジグザグの登り。小仏峠までのようなハードな登りではありません。
少し登れば、なだらかな尾根道へ。中央自動車道・小仏トンネルの真上まで進みます。
この区間は、尾根の西側に登山道があります。ところどころ尾根上に戻る登りがありますが、すぐに平坦な尾根が待っています。
小仏トンネルの真上を過ぎたあたりが、もっとも平坦な区間。足どり軽く進みましょう。
地形図やGPSアプリで「・671」と記されている小さなピークの西側を巻くように、少しだけ登ります。登り切った地点には「関東ふれあいの道」の石碑があります。
小ピーク「・671」を越えると緩やかな下り坂になり、右手(東側)の視界が開けてきます。
下りきった鞍部(コル)付近から右手には、八王子市街から都心方面を眺望できるポイントもありますよ。
このあたりから周囲の森は杉などの常緑針葉樹から落葉広葉樹に変わり、晩秋〜早春はひときわ明るい樹林帯の登りとなります。
やや下ると、左手に景信山の巻道が続く分岐が現れます。ここは直進しましょう。
分岐から先は、高い木がない草原状の斜面を上る登山道となります。振り返ると、丹沢山塊・大山なども眺望することができますよ。
階段を登り、山頂南側にある「景信茶屋 青木」の柵が見えてきたら、ゴールは目前です。
営業日である土・日・祝日には多くの登山者が憩う景信茶屋 青木。奥高尾縦走路の茶屋それぞれが趣向を凝らしたなめこ汁の他、山菜の天ぷらも名物です。この左側を進みましょう。
続いて現れるのが、三角点 かげ信茶屋。こちらも建物の左側を進むと、前方に山並が広がる稜線に出ます。
稜線を右に進んですぐにベンチ・テーブルがあり、登山道を挟んだ右側にある景信山山頂に到着です。
山頂付近からは西・北・東側の眺望が開けており、八王子城址の山並を前景にした東京西部の街並や高尾山・大山を一望できます。景信茶屋 青木前からは、城山も望むことができます。
トイレは山頂から東側(街並が見える方)に少しだけ下った場所にあります。
いにしえの道と現代の道
今回紹介したコース、特にSection2・3で実感するのが、甲州古道は自然の地形に寄り添った道であるということ。ジグザグの急登は決して楽ではありませんが、かつてはこうして斜面の起伏に合わせた道が当たり前だったのです。
対照的に現代のJR中央線や中央自動車道は景信山への稜線の真下を貫いて、直線的に整備されています。もちろんスピードや利便性を考えればこちらが効率的ですし、このコースを経由した物流の恩恵を受けているのも私たち。
けれどもこうしていにしえの道を歩くことで、私たちが得たものと失ったものを実感するのも、山歩きの醍醐味のひとつではないでしょうか。
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