「背面長調節」「背面クッション」「容量30L」がオススメのパックの基準!
「オススメのバックパックって、どんなパック?」
そう質問されることが多くあります。
私は、こう答えます。
「背面の長さを調節できて、背面のクッション性が高く、容量30Lクラスのバックパックです。」
その理由は……
バックパックにもサイズ展開がありますが、より細かく身体に合わせられるのが背面長の調節機能です。バックパックのフィット感が高まれば、背負いやすいだけでなく、不思議と荷物が軽く感じられます。
加えて、背面のクッション性が高いパックは、思っている以上に疲労が抑制されるんです。
そして30Lクラスのパックは、日帰りはもちろん、山小屋泊の装備までをしっかり収納できて、夏山であれば人によってはテント泊も可能です。
日帰り中心だからと小さめの20Lクラスを手に入れたものの、山に行くほどに必要な荷物、持って行きたいモノが増えて、30Lクラスを買い足す人を何人も見てきました。
という説明をすると、続いてこう聞かれます。
「どのブランドの、なんていうモデルのパックがいいの?」
そうですよね、それを聞きたいんですよね。
ついつい、細かく説明してしまうのが私の悪いクセ……はい、わかりました!
では、発表します。2021年モデルをいくつも背負った中で、「コレは、いい!」と感嘆したバックパックを3つを選んでみました~~~。
①使い勝手のよさが多くのハイカーをサポート!<ザ・ノース・フェイス>

パック本体は細みで、その分少し背が高め。背面は横から見ると背中の曲線に沿った形状になっていて、大型のバックパックを背負っているような、しっかりとした剛性感があります。
トランポリンのようにバネが効いた背面構造
“ソフトなのにしっかり”という相反する背負い心地を実現したのが、上の写真のトランポリンバックパネルです。背面に沿った曲面を作るアルミフレームは、30Lクラスのパックとしては太め。フレームに張られた背面メッシュが、背中と本体との間に隙間をつくっています。
この構造が、トランポリンのようにバネを効かせて背中にフィットしながら荷重を分散。登り下りで身体が大きく動くようなシーンでも、パック本体は暴れることなく安定。背負い心地が軽く感じるんです!
ウエストベルトも、腰にピタりと密着!
ウエストベルトは、トランポリンバックパネルから一体となって段差なく続き、腰への密着度を高めています。アルミフレームで受け止めた荷重が腰にしっかりと載りやすいのは、この密着度の高さが理由だと思われます。
フィット感を高める背面長調節は、面ファスナーで簡単調整可能
どれだけ高機能なバックパックでもサイズが合っていなければ、バランスを崩し、よさを実感できません。
ウラノス35は、サイズ展開があります。ウィメンズのMとメンズのMとL。加えて、背面長を細かくフィッティングできるよう、ショルダーハーネス部分のパーツを面ファスナーで高さ調節可能。しっかりとハイカーの身体にフィットするからこそ、装備される高機能を実感できるのです。
対応背面長は、WM=40~45cm、M=43~48cm、L=47~52cmです。
雨蓋は脱着でき、外せば今風のUL系パック的な雰囲気に
雨蓋の表側には容量のあるポケットがあり、さらに内側にもメッシュポケットを装備。よく取り出すものを表側に、内側には休憩時や救急時に使うようなものといった感じで、自分の使いやすいように小物を分けて収納できます。
また、この雨蓋にはマチが備わっているので、本体との間にヘルメットなどを挟んだ際にしっかりと固定ができそうです。
雨蓋は簡単に取り外すこともできる仕様になっています。
荷物が少なかったり、少しでも軽さを求めたい時には、雨蓋を外して使用できます。
雨蓋を外すと、今っぽいULパック的な見た目になり、軽い背負い心地を活かしてファストパッキングをするのにもよいでしょう。
ちなみにフロントポケットにはレインカバーが内蔵されていて、買い足す必要がないのでお得です。
サイドのポケットも十分な大きさ
サイドポケットは、ボトルの脱落の心配のない深めで大きなもの。しかもコンプレッションベルトで固定できます。
このコンプレッションベルトは長めなので、テント泊時にはマットを外付け固定できて便利です。
マルチな機能でいろいろなスタイルで使いたい!
他にもショルダーハーネスに500mlボトルを収納できるメッシュポケットが備わっていたり、ボトムは自立しやすい形状だったりと、ハイカーが欲しい!と思う機能が豊富に盛り込まれています。
スタンダードなパックに見えて、いろいろな使い勝手、スタイルに対応するマルチさが面白い、背負うハイカーの想像力を掻き立てるパックです。
②必要十分な機能を持ったアクティブ派のためのパック<オスプレー>
ガチッとしながらも動きは邪魔しない背面構造
背負ってみて感じたのが、ガチッとした背面パネルの強さと腰をギュッと包み込むウエストベルト。胸まわりが薄めの筆者にはショルダーハーネスはやや広がる感じがするも、チェストストラップを引くことでパック本体がグッと安定。身体とバックパックとの一体感を強く感じました。
歩き出してみると、剛性感を残しつつしなやかに動きに対応。固定ではなく一体。強さよりもしなやかさという印象です。
射出成型された背面パネルが一体感のキモ
背面構造には、いかにも機能を尽くしていますというデザインが見られます!
昆虫の腹のように見える部分は、射出成形された「AirScapeフレームシート」と呼ぶ立体形状の樹脂製パネル。その上にパック本体と背中にわずかに隙間をつくる背面メッシュ地が張られ、通気性を確保。
段差なく腰の形状に沿うように伸びるウエストベルトと、さらにはショルダーハーネスを締めることよって、背面パネル+メッシュ地に、背中を包むような一体感が生まれます。
内蔵されるフレームが金属製ではなく樹脂製パネルなので、身体の動きに対してしなやかに追随するのも特長。メッシュ地と柔軟なウエストベルトが、柔らかな感覚をプラスしています。
背面長の調節も簡単!
タロンプロ30も背面長調節可能です。
面ファスナーによって、S/M=43~51cm、L/XL=48~56cmと、約8cmの幅で長さを細かく変えられます。軽量パックのためショルダーハーネスは薄め。その分、運動追随姓を感じるしなやかさがあります。
開口部はコの字型に開くトップローディング
バックパックの開口部は、大型モデルだと収納性を考慮した雨蓋+巾着タイプ、小型だとアクセスのよいジッパータイプ、軽量モデルだとバックル留めのロールダウンタイプが主流です。
タロンプロ30は、ジッパータイプながら、フロントパネルの上部だけが開く仕様で、ジッパーの重さを軽減。アクセス性と軽量性を両立させています。
ヘルメットホルダーなど、使いやすい仕様もうれしい
フロントパネル上部の樹脂製パーツは、ヘルメットを留めるアタッチメントです。近年、アルプスなどの岩稜帯や活火山域ではヘルメット着用が推奨されているので、コレはありがたい機能です。パック本体の容量を犠牲にしないのもいいです。
また、本体以外の収納力も十分。フロントポケットやサイドポケットも深さがあり、ウエストベルトポケットはスマホを収納できる大きさです。ピッケルホルダーも備わり、一年を通して使えるバックパックになっています。
ありそうで、案外少ない。シンプルでスタンダードなパック
容量は、S/M=28リットル、L/XL=30リットルと、やや小さめなので、テント泊までカバーしようと思うと、装備のシビアなUL化が必要です。
とはいえ、その大きすぎない容量こそが、むしろデイハイクや日帰り登山では使いやすいもの。機能もシンプルかつスタンダードながら、ポケット類はしっかり大きめ。しかし軽量。ありそうで、ない。だからこそ、こういうパックを探しているハイカー、意外と多いと思います。
ただし、残念ながら今期モデルはすでに完売。次回入荷は2022年春頃の予定だそうです。
③カスタムオーダー的極上フィット感がたまらない<グラナイトギア>
フィッティングが上手くできると、こんなにも軽く感じるのかと感動
ペリメター35には、背面長と肩幅の調節が可能な「ペリメターサスペンションシステム」という背面構造が装備されています。さらにウエストベルトは脱着可能な上に、ウエストサイズに応じて面ファスナーで長さを変えられます。
それらをきちんと自分の身体に合うように調整。荷物を入れて背負い、背面、ウエストともに目安として表示されている数字を基本に、丁度よいところを探しながら調整。
すると、正直驚きました!これまで背負ってきたどんなバックパックにもなかった、軽さを感じたのです。肩、背中、腰のどこかに負担が集中することがなく、なるほど自分の身体にきちんとフィットすると、これ程までに快適に荷物を背負えるものなのか~~~と、初めて知りました。
背面長調節はデイジーチェーンにクリップを掛けるシステム
背面長を調整する方法は、背面パッド上部のバックルを外し、内蔵されるフレームパネルに備わった10ヶ所のデイジーチェーンアンカーポイントに、ショルダーハーネスのクリップを掛けるだけです。アンカーポイントに遊びがないのでクリップを掛けるのに初めは手間取りましたが、一度掛けてしまえば、後は調整する必要がないので、特に問題はありません。
背面長のサイズは、メンズ、ウィメンズともに46~53.5cm。大柄な欧米人サイズでつくられているため、小柄な日本人女性は、合わない人が多いのが少し残念……。
デイジーチェーンアンカーポイントは、外側に赤、内側にオレンジの2本を装備。肩幅の広さ、狭さに対応します。上半身の薄い私は、内側にクリップを掛けました。
ウエストベルトは面ファスナーで長さを調節
グラナイトギアの大型パックに搭載される「RE-FITウエストベルト」が、ペリメター35にも搭載されています。サイズは、メンズ66~106cm、ウィメンズ60~101cm。ウエストベルトが腰骨をちょうどよく包み込む部分に調節できるので、荷重がしっかりと腰に載ってくれます。
フレームは樹脂製パネル+細みのスティール製
背面システム「ペリメターサスペンション」の核となるフレームは、細みのスティールロッドフレームに樹脂製パネルが張られた構造。金属フレームと樹脂製パネルのよさを併せ持ち、荷重分散と動きやすさを高い次元で両立させています。
ソフトな背面&ショルダーハーネスのパッドによる独特の背負い心地
グラナイトギアに装備されるパッドは、低反発のようなソフトさとコシの強さを感じるもの。ペリメター35のパッドも同様で、荷物を収納して背負った際に、食い込むようなことが一切ありません。「ペリメターサスペンションシステムの」荷重分散性とフィット感をさらに高めているのが、このパッドです。
おそらくショルダーハーネス、ウエストベルト、背面のパッドを、軽さ優先で薄いものにしていたら、今回の高いフィット感は生まれなかったのではないかと想像します。同社が軽量なフレームレスのパックであっても快適性を求めて、とことんパッドにこだわってきた蓄積が活きていると感じました。
開口部はロールダウンタイプ
雨蓋ではなく、一枚布のようなポケット付きのトップリッドは、脱着可能。
開口部は防水バッグのようにクルクルとロールダウンするタイプ。荷物の量に応じてコンプレッションするベルトが、タテ方向にも備わっています。
サイドとフロントにはストレッチポケットを装備
サイドとフロントには深さがあって、大容量のストレッチポケットを装備。サイドポケットは、1Lのボトルを余裕で収納できるサイズ。コンプレッションベルトで固定できるので、落下の心配もありません。
写真ではわかりにくいですが、ウエストベルトポケットもマチの深い大型。スマホや行動食が入り、収納力は十分です。
マットを固定できるボトムフラップも装備
UL系のパックらしさを感じるのが、ボトムフラップです。容量35Lでもテント泊を想定して、スリーピングマットを固定できます。
今回、あえてフルサイズのクローズドセルマットを固定してみましたが、しっかり固定できました。トップリッド側に固定することもできますが、頭に干渉しがちなので、マット外付け派にはうれしい装備でしょう。
重量は軽くないが、背負えば軽い!
重量1,360gは、今回紹介している3つのバックパックの中で最重量。30Lクラスのパックとしても、決して軽くはありません。しかし、背負ってみると身体に掛かる重さは、ペリメター35がもっとも軽いんです。
この背負い心地の軽さは、グラナイトギアだけでなく、中型バックパックのエポックメイキングとして後世に語り継がれるでしょう!
カラーは、メンズがグリーンとブラウン2色使いのバーボン、ウィメンズはブルーとブラックの2色使いのマリーナのみ。どちらもシックな雰囲気です。ぜひ試してみてください!
三者三様!求めるもので選ぶべきパックが決まる
今回選んだバックパックの3モデルは、開口部、フレーム、背負い心地、いずれも三者三様。
でも、冒頭で述べた通り、いずれも背面の長さを調節できて、背面のクッション性が高く、容量30Lクラス。大型パックに比べて、差がほとんどないと言われていたクラスのパックですが、特長あるパックばかりです。
「ザ・ノース・フェイス/ウラノス35」はマルチな使い勝手、「オスプレー/タロンプロ30」はアクティブな運動性、「グラナイトギア/ペリメター35」は極上のフィット感。ハイカーそれぞれが、なにを重視するかによって、選ぶパックが決まってくると思います。
さて、私は……全部欲しいというのが本音です。
それでは皆さん、よい山旅を!