⑥所属団体名
かつては学校山岳部や社会人山岳会などの団体に加盟して、その会員とパーティーを組んで登山するのが当たり前でした。現在はこうした山岳団体に所属する人も減少傾向、団体に所属していなければ記入は不要です。
⑦役割・任務
前項の通り団体でパーティーを組んで登山する場合、CL(チーフリーダー)を筆頭にSL(サブリーダー)・気象・記録・食事係など、各メンバーに様々な役割があてられていました。
ソロの場合はもちろん記入不要。少人数のグループであれば、いちばん経験豊富な人をリーダーとしてメンバーの筆頭に記入すると良いでしょう。
⑧共同装備
装備については②で記載したのに…と疑問に思う人も多いでしょう。
これまた団体でパーティーを組んで登山し同じテントに複数のメンバーで寝泊まりする場合、Aさんはテントを、Bさんは炊事用品を、Cさんは食糧を、Dさんは燃料を、と共同で使用するものを分担してザックに入れて行動します。
ソロ登山やソロテントが一般的になった昨今、共同装備に記載するアイテムは少ないか皆無かも知れませんね。
⑨行動食と非常食
この違いに悩む人も意外と多いものですが、考え方は簡単です。
おにぎり・お弁当・山ごはんの材料などの食糧に加え、休憩時に頬ばるチョコレートや米菓など「山で食べる」ために持っていくのが行動食。逆にスケジュール通りに下山できれば「山では決して食べない」のが非常食です。
日帰りであれば非常食を持参しない人もいるかも知れません。しかし、救助まで時間がかかる場合を想定し、調理せずに食べられて長期保存できるハイカロリーな食品をぜひ持参しましょう。
⑩エスケープルート
縦走などで天候・体調悪化やタイムオーバーでスケジュール通りの登山続行が不可能な場合、なるべく早く山麓に下山できるコースがエスケープルート。もちろん下山の判断をした場所によっても変わります。
往復コースであれば記入は不要ですが、引き返すポイントを予め想定しておくことは大切。
また、例えば陣馬山〜高尾山のような日帰りコースであっても、縦走の場合はエスケープルートを地図上で把握した上で行動するようにしましょう。
もちろん、そのエスケープルートを利用した方が「安全かつ短時間で」下山できるか、また下山場所のバス停の時刻などは把握しておきたいものです。
⑪無線機の有無と周波数
周波数(MHz=メガヘルツ)の文字を見ただけで頭が混乱するこの項目。携帯電話の普及と通話可能エリアの拡大により、最近は無線機を持って登山する人も減少しています。
もちろん持っていなければ記入しないでOK。ただし登山前には、目的とする山(山域)での自分の携帯電話キャリアの通話可能エリアは把握しておきましょう。
NTTドコモ|携帯電話がご利用いただける登山道au|携帯電話がご利用いただける登山道SoftBank|サービスエリアマップ
また最近は、ココヘリなどの電子捜索機器のID番号を記入する書式も増えてきました。
所持していれば、登山計画書に記入欄がなくても備考欄に「ココヘリID=012345-678」のように記入しておくと、スムーズな捜索活動に役立ちますよ。

ココヘリは所持しているに越したことはありませんが、万能ではありません。
例えばココヘリ受信機を搭載していないヘリが出動することもありますし、ヘリが飛べず徒歩で救助に向かう場合も隊員全員が受信機を持っている訳ではないからです。
電子申請が簡単でオススメ!GPSアプリで効率的に提出も可能
スムーズかつ迅速な捜索・救助活動のために、最近では電子申請が推奨されています。様々なシステムがありますが、現在多くの自治体が利用しているのが「コンパス〜山と自然ネットワーク〜」。2024年現在、全国41の警察・自治体と連携しています。
コンパスの登場は、従来の“提出するだけ”だった登山計画書の概念を根本的に変えました。その特徴は大きく分けて3つあります。
登山計画の共有〜警察・自治体だけでなく家族・友人にも登山計画を共有可能〜
コンパスに登山計画書を登録すると、緊急連絡先に指定した家族や友人にその情報がメールで届きます。いつ・どの山に・どんなルートとスケジュールで登るのか…という情報が、警察・自治体だけでなく“待つ側の人”にも予め共有されるため「どこに登山に出かけたのかわからない」という心配がなくなりますね。
下山通知〜無事に下山したかが瞬時に把握可能〜
コンパスには登山計画書を提出した登山者が下山した際に、下山通知を行うというステップを採り入れています。
この下山通知は緊急連絡先に指定した家族や友人にもメール共有され、下山予定時刻から一定時間を超過した際には「下山が確認できません」というメールが届きます。すなわち登山者自身が救助要請できない状況でも、家族や友人がこの連絡を受けて警察に捜索を依頼することが可能。
木曽御嶽山噴火のような大規模な自然災害が発生して大勢の登山者が巻き込まれた際には、誰が下山して誰が下山していないかを迅速に割り出し、捜索・救助活動にも役立つシステムですね。
相互扶助〜同じ時間に同じ場所に居たかも知れない登山者との情報共有〜
さらに心強いのが、行方不明者の捜索活動の際に「同じようなスケジュールで登山していた他の登山者の登山計画書も閲覧している」こと。当該する登山者にコンタクトを取り、目撃情報がないかなどを聞き込む際にも活用されているのです。
捜索の“手がかり”をいち早く入手できるため、早期発見にも心強いバックアップ体制と言えるでしょう。

電子申請システム「コンパス~山と自然ネットワーク」と、山梨県登山計画書専用メール・FAX宛に提出された計画書は、警察が即時にアクセスできます。
会員登録は必要ですが、上記の通り捜索・救助活動にあたる警察がすぐに登山計画書にアクセスできるコンパス。
紙に記入する項目をWEB上で入力することになりますが、ここまでの項目を理解していれば比較的簡単に入力できますよ。
GPSアプリでも簡単に作成&提出可能!
最近はGPSアプリで登山計画を作成してから、登山開始時にアプリを起動するスタイルが一般的になってきました。
ヤマレコは登山計画を作成しながら前述のコンパス〜山と自然ネットワーク〜に登山計画書を提出することが可能。YAMAPについても、協定を締結している自治体に関しては、YAMAPアプリからオンラインで登山届を提出することができます。
登山計画の作成はすなわちスケジュールの作成、同時に登山計画書まで作成・提出してしまうのが効率的ですよ。

そもそもGPSアプリをしっかり確認しながら行動すれば、少なくとも道迷い遭難の可能性は大きく減らせますよ。
低山でも日帰り・トレラン・山菜採りでも……登山計画書の作成・提出を!
わかりにくい項目も多く、紙での記入はハードルが高い登山計画書。しかしそれぞれの項目にきちんとした必要性があることを理解できたでしょうか。
さらに現在はGPSアプリを使いながら、比較的簡単に作成可能。無理なスケジュールや装備・食糧の不足などがないか、自身の登山計画を客観的にチェックすることにも役立ちますよ。
昨今では、近くの低山だからと登山計画書を提出しない「お忍び登山者」も増えているようです。
けれどもこの記事を読んだ方なら、その重要性はご存知ですよね。低山でも日帰りでもリスクは同じ、ぜひ登山計画書の作成・提出を登山前の習慣にしてくださいね。

登山の成否を決める大半の要素は、計画段階にありますからね。
この記事から正しい記入方法を知ってもらい、ぜひどんな時にも登山計画書を記入・提出するようにしてください。