雪山で水がなくなった……一体どうすればいいの?
「水」は登山になくてはならない必需品。気温の低い雪山であっても、人はしっかり汗をかいているので水分摂取は大切です。脱水になるとめまいや全身の倦怠感、低体温症の要因になることもあります。
ライター
橋爪
でも、もし雪山で水がなくなってしまったらどうやって水を確保すればいいのでしょうか?山小屋は営業していないところがほとんどですし、水場は雪で埋もれていたり凍っていたりで、夏山のように水は確保できませんよね。
雪山では雪を融かして水をつくります!
そんなときに活躍するのが「雪」。
雪山ではバーナーで雪を融かして水を確保するのが基本で、冬のテント泊や縦走などでは一般的な技術とされています。
ちなみに喉が渇いたからといって、雪をそのまま食べるのはNG!雪は真っ白できれいに見えても、不純物やチリがいっぱいなんです。バーナーで煮沸することにより殺菌をしましょう。
橋爪
とっても簡単!雪から水をつくる方法をご紹介
そんな雪から水をつくる方法を、手順を追ってご紹介。
水づくりに必要な道具は以下のとおり。
[必ず必要な物]
・ガス&バーナー・・・ガスはなるべく満タンを用意
・クッカー・・・1ℓほどの容量が使いやすくて◎
・保温水筒やナルゲン・・・口が広いものが◎
・ビニール袋・・・単独ならスーパーのビニール袋でOK[あると便利な物]
スコップ・・・ピッケルのブレードなどでも可
フィルター・・・不純物をろ過するためのもの。コーヒーフィルターや茶パックなど
特に難しい技術は必要ないので、誰でも簡単にできますよ!
①雪を集めてくる
まずはビニール袋に雪を集める作業から。雪はなるべくルートから離れた場所からきれいな雪を取ってきましょう。ビニール袋は単独であればスーパー袋でOK。2〜3人の場合は厚手の45ℓサイズがあると便利です。
橋爪
②バーナーで雪を融かす
雪を集めたら、バーナーとクッカーをセット。このとき、コッフィルに30〜50mlほどの水を入れておきましょう。呼び水があることで熱効率が上がり、雪を融かすスピードが上がります。
また、雪は一度にドサっと入れず、少しずつ足していきましょう。コップやシエラカップなどを使うと雪が入れやすいです。
③沸いたら水筒に移す
水が沸騰したら、保温水筒やナルゲンに移します。
必須ではありませんが、この際にコーヒーフィルターなどを使って不純物を「ろ過」するのがおすすめです。プラティパスなどの口が狭いタイプはこぼれやすいので注意しましょう。
効率よく雪から水をつくる方法は?
ところで、筆者はいままで道具などを特に意識せずに水づくりをしてきました。でもリスクの高い雪山だからこそ、なるべく効率よく、省エネで済ませたいですよね。というわけで水づくりに使用するクッカーの素材によって、どんな違いがあるのかを試してみました。
今回使用するのは、チタンとアルミのクッカー。チタンは軽量な人気素材、アルミは安価で使いやすい、というのが2つの素材を選んだ理由です。
さっそく検証に入っていきましょう!
【チタンvsアルミ】雪からお湯をつくるのに早いのはどっちだ?!
ということで、雪を求めて長野県にある霧ヶ峰まで行ってきました。
▼検証方法▼
チタンとアルミ、それぞれのクッカーで雪から400mlの水が沸騰するまでの時間を計測▼使用アイテム▼
バーナー:<プリムス>153ウルトラバーナー
クッカー:<スノーピーク>チタントレック900/トレック900
まずはチタンから計測スタート!
50mlの呼び水と雪を入れ、バーナーの点火と同時に計測スタート。さあ、どんな結果になるでしょうか。
約3分45秒のところで、雪がすべて融けて400mlの水に変化!このまま沸騰するまでの時間を計測していきます。
水になってから2分ほどでグツグツと沸き立ちました。これにてチタンの計測は終了!
結果は約5分48秒となりました。
橋爪
定番のアルミクッカーはどうだ?!
続いてはアルミの出番です。果たしてチタンとの違いはあるのでしょうか?
チタンと同様に50mlの呼び水と雪を入れ、バーナーの点火と同時に計測スタートです。
約2分34秒で雪が水に変わりました!チタンよりも1分以上早いスピードです。ここから沸騰するまではどうでしょうか?
そこからおよそ1分半。水がグツグツと沸きだしたので、ここで計測終了です!
結果は約4分4秒になりました。
橋爪
それぞれの結果は以下のとおりです。
チタン | アルミ | |
---|---|---|
①雪が水になるまで | 約3分45秒 | 約2分34秒 |
②水が沸騰するまで | 約2分03秒 | 約1分30秒 |
合計 | 約5分48秒 | 約4分4秒 |
ということで、チタンvsアルミの「雪から水を作る対決」はアルミの勝利となりました!
なんでアルミの方が沸騰するのが早いの?
チタンとアルミで沸騰までのスピードに差が出たのは「熱伝導率」、つまり熱がどれくらい伝わりやすいかが大きく関係しています。
アルミは金属の中でも高い熱伝導率を誇ります。それに比べてチタンの熱伝導率はアルミの10分の1ほど。その分、チタンは熱が逃げにくく、長時間熱が持続する特徴があります。
せっかくなので他にもいろいろ試してみた
これにて一件落着!
と言いたいところですが、山から持ち帰ってきた雪がまだ残っていたので、ちょっとした方法で沸くスピードが変化するのか実験してみました。
ここからはすべてアルミクッカーを使用。検証方法は今までと同様です。
【1】呼び水を入れずにスタートするとどうなるか
まず最初に試してみたのは「呼び水を入れないとどうなるか」という実験。筆者も水を入れておくのが当たり前だと思ってやっていましたが、その真相はどうなのでしょうか?
沸騰までにかかった時間は約5分7秒。呼び水があるときと比べて1分以上遅い結果となりました。やはり呼び水は熱効率を上げるためにも大切ということですね。
【2】クッカーにフタをするとどうなる?
続いては「クッカーにフタをするとどうなるか?」を試してみました。家で調理するときも、フタをすると早く沸騰しますよね。きっとこれは早く沸きそうな予感……!
おぉ、わずかですが早くなりました!計測中は雪を足したり、状況を確認するためにちょこちょこフタをあけていたので、熱が逃げてしまっていたかもしれません。そのまま放っておけばもう少し早く沸いたかもしれませんね。
【おまけ】ジェットボイルだとどうなる?
最後に、高速湯沸かしバーナーでおなじみの「ジェットボイル」だとどうなるのかを試してみました。
はやっ!!
2分ほどで雪は水に変わり、そこからあっという間に沸騰してしまいました。さすがジェットボイル、湯沸かしのスピードにおいて、やはり敵なしですね。
【結論】いろんな方法を組み合わせることで効率的に!
今回の検証結果から、雪からお湯をつくる際には以下の3つを取り入れるのがよいことがわかりました。
①アルミ素材
②呼び水を入れる
③フタをする
また、ジェットボイルやMSRのウインドバーナーなど、熱効率の高いバーナーを使用することで、より効率的な水づくりができそうです。
ガスはしっかり用意しておこう!
雪から水をつくる場合はガスも多く使用するため、雪山で水づくりをする場合は満タンのガスカートリッジを持っていくようにしましょう。思わぬガス欠はリスクを命に関わることも。しっかり満タンのカートリッジを持っていきましょう。
橋爪
雪でおいしい水をつくってみよう!
雪と道具さえあれば、誰でも簡単にできる水づくり。ぜひ、雪山へ行ったときにやってみてください!テント泊じゃなくても、雪からつくったお湯でお茶やごはんを楽しんでみるのも面白いですよ。
まずは手軽な雪山で実践してみるのもOK!コツをつかむことで、雪山登山のステップアップにもつながりますよ。
水づくりにおすすめなクッカー3選
スノーピーク トレック900
プリムス ライテックトレックケトル&パン
モンベル アルパインクッカー14

モンベルのアルミ製クッカー。広口タイプになっているので、雪を入れやすいのが特徴。取っ手には熱くなりにくいカバー付きで使いやすさも魅力です。
●素材:アルミ
●重量:185g
●容量:0.8ml