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朝日岳ってどんな山?

標高 | 所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) |
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2418m | 新潟県糸魚川市、富山県下新川郡朝日町 | 14.9℃ | 6.9℃ |
北アルプス最北部に位置する朝日岳。後立山連峰を鹿島槍ヶ岳〜五竜岳〜唐松岳〜白馬岳〜雪倉岳と北上して行くと、ようやくたどり着く頂です。東側山麓から見ると最初に朝日を浴びる山であり、西側山麓の朝日町の由来にもなったこの山。
日本三百名山にも選定されていながら、登山口までのアクセスの遠さや登山コースの長さから訪れる人は少ないですが、日本百名山の完登者や、静かな山旅を好む健脚登山者には根強い人気があります。
豊富な水に育まれた高山植物や紅葉の絶景

富山湾からの雪雲がもたらす豪雪に見舞われる朝日岳。その雪解け水に育まれた高山植物が、夏になると一面のお花畑となって足元を彩ります。
同じく花の名山として知られる白馬岳とは違った品種も多く、花を求めて山を訪れる登山者を魅了。植生が豊かな山だけに木々の紅葉も美しく、秋には色とりどりに染まった山肌を楽しめます。
点在する池や湿原などが織り成す水辺の絶景

豊富な積雪は植物を育むだけでなく、朝日岳独特の景観も創り出しています。朝日池・照葉ノ池をはじめ稜線には無数の池が点在し、澄んだ水をたたえた様子はまさに神秘的。
また山麓の兵馬ノ平・中腹の五輪高原などの湿原もあり、のんびりと木道を歩きながら夏は高山植物・秋は草紅葉を楽しむことができます。
リピーターにも人気!朝日小屋のアットホームなおもてなし

朝日岳の西側、山頂から少し下ったところにある朝日小屋。テントを張れる幕営指定地もありますが、小屋での宿泊もこの山を訪れる魅力の1つです。無料Wi-Fi完備の喫茶コーナーや談話室での憩いのひとときはもちろんですが、何と言ってもそのアットホームなおもてなしを実感できるのが食事。

長時間の行動で疲れた登山者を元気にしたいと言うご主人の想いから提供される、地元・富山の食材を活かした料理の数々。インスタントの食材はなるべく使わずに作られた手づくりのご飯は、体に染み渡る美味しさです。
ルートを組み合わせて、周回コースや縦走コースも楽しめる

奥深くアクセスも遠い朝日岳1座を登山の目的にする人は少なく、南に連なる日本二百名山「雪倉岳」や日本百名山「白馬岳」をめぐる周回コースや縦走コースを歩く登山者が多い山。
ここでは、難易度が高いが満足度は抜群の朝日岳を目指す2つの直登ルートをご紹介。高山植物を愛でたり、秘境ルートを歩いたりと知る人ぞ知る魅力が満載です。
各登山口からの往復はもちろん、2つのルートをつなげて朝日岳を東西に横断するもよし、雪倉岳や白馬岳と組み合わせて縦走するもよし、日程や体力に合わせたお好みのルート設定を楽しんで下さい。
▼白馬岳・雪倉岳の縦走コースの詳細はこちらをチェック
朝日岳の難易度は?2つの登山ルートのレベルをチェック

朝日岳への直登ルートは最短でも片道7時間40分、標高差も2000mを超えるため、よほどのスピードハイカーでなければ最低でも1泊2日が必須になるスケールの大きな山です。長時間の歩行や、長距離に渡って続く急なアップダウンに対応できる健脚者向けの山と言えるでしょう。
体力や難易度レベルはYAMA HACKのグレーディング表を元にしています。
▼合わせて富山県・山のグレーディング表もチェックしてみよう
地図も必ず携帯!山と高原地図 白馬岳
朝日岳はこちらの登山地図に掲載されています。マップ詳細はもちろん、バスやマイカーでのアクセスにも便利!
昭文社 山と高原地図 白馬岳
①花咲く湿原も満喫の王道コース|五輪尾根ルート
最高点の標高: 2402 m
最低点の標高: 1169 m
累積標高(上り): 2086 m
累積標高(下り): -1428 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日
- コースタイム:約8時間20分(登り・片道)
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
蓮華温泉(80分)→兵馬ノ平(120分)→白高地沢出合(120分)→花園三角点(120分)→吹上のコル(60分)→朝日岳(40分)→朝日小屋
東側の新潟県・糸魚川市にある蓮華温泉から登るルート。登山シーズンにはJR糸魚川駅からはバスも運行されている他、マイカーでもアクセス可能です。

スタート地点は、北アルプスの山並を望む内湯や野趣あふれる4つの野天風呂が人気の蓮華温泉。コースタイムが長いので、ここに前泊してから登山するのもオススメです。

蓮華の森分岐を右手に進み、蓮華ノ森自然歩道を進むと兵馬ノ平へ。広々とした湿原に伸びる木道の周囲は、夏は高山植物の花々で彩られます。

兵馬ノ平から急斜面を下り、瀬戸川橋を越えると、ゆるやかな登りに。ヒョウタン池などの池塘を眺めながら進むと、白高地沢出合に到着。上流には、めざす朝日岳を望むことができます。

カモシカ坂と呼ばれる急登を経て350m程の標高差を一気に稼ぐと、花園三角点の小さなピークに到着。ここから先は五輪高原と呼ばれる湿原で、なだらかな稜線上に木道が続いています。

五輪尾根を登り、八兵衛平の湿地からひと登りすると水場を経て吹上のコルに到着、ようやく主稜線に出ます。神秘的な朝日池を見下ろし、富山県側の展望が開ける絶景に、しばし見惚れることでしょう。

ここから40分ほど下ると、朝日小屋に到着です。
コース上にある山小屋情報
白馬岳蓮華温泉ロッジ
標高1,475mに位置し、新潟県側からの北アルプスの入り口です。4つの源泉が異なる野天風呂は秘境感たっぷり。天気がよければ温泉から雪倉岳や朝日岳を見渡せ、温泉に癒されながらホッと一息つけること間違いなしです。
朝日小屋
北アルプスの最北部に位置する朝日小屋。地元・富山の食材を使った手料理に癒されます。無料のWi-Fi完備の喫茶コーナーや談話室で憩いの時間を過ごしましょう。
蓮華温泉へのアクセス
【クルマの場合】
糸魚川IC→国道148号(千国街道)→県道505号→蓮華温泉
【公共交通機関の場合】
JR「糸魚川」駅またはJR「平岩」駅から夏季運行の糸魚川バスを利用
②秘境・北又谷からめざす最短コース|イブリ尾根ルート
最高点の標高: 2402 m
最低点の標高: 673 m
累積標高(上り): 2168 m
累積標高(下り): -472 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日
- コースタイム:約7時間40分(登り・片道)
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
北又(150分)→五合目(120分)→イブリ山(90分)→夕日ヶ原(40分)→朝日小屋(60分)→朝日岳
西側の富山県・朝日町にある北又谷から登るルート。マイカーは約10km手前の小川温泉元湯までしか入れないので、最寄りの泊駅からタクシー利用が便利です。

北又小屋の管理人に入山の旨、声をかけて登山スタート。赤い鉄製の吊橋を渡り、ジグザグの斜面を登ると、イブリ坂と呼ばれる尾根道の急登が始まります。

ブナ林の中の急登。イブリ山(10合目)までは1合毎に標識があり、どれだけの標高を稼いでいるかのランドマークになります。

イブリ山に到着すると、朝日岳と前朝日(朝日小屋の南側にそびえるピーク)の展望が。ここまで約3.6kmと半分にも満たない距離ですが、1090mの標高差を登ったことになります。

イブリ山から池塘のある鞍部に下り、鎖場のある急登を越えるとその先は比較的なだらかな道のりに変わります。随所に木道も配置された見晴らしの良い稜線を進み、夕日ヶ原へ向かいます。

夕日ヶ原周辺の稜線には小さな池塘や湿原など、まるで箱庭のような風景が点在。夏は高山植物・秋は紅葉を楽しめます。

朝日小屋に到着、周囲には気持ちの良い草原が広がります。後立山連峰や剱岳のパノラマを楽しみながら60分ほど登ると、朝日岳山頂に到着です。
コース上にある山小屋情報
北又小屋
イワナの渓流釣りや紅葉狩りなどの観光客にも人気が高い北又小屋。登山届けの提出場所となっているため、必ず提出してから登りましょう。4室の個室のほかに40張ほど可能なテント場もあります。
北又へのアクセス
【クルマの場合】
北陸自動車道朝日IC→小川温泉元湯ホテルおがわ→タクシーで北又小屋へ
※小川温泉から北又小屋の林道はタクシーのみアクセス可。マイカーの場合は小川温泉に駐車し、タクシーで北又小屋へ。
【公共交通機関の場合】
あいの風とやま鉄道「泊(とまり)」駅→タクシーで約1時間→北又小屋
<番外編>親不知海岸を目指す健脚者向け|朝日岳〜栂海新道ルート

今までは朝日岳への直登ルートを紹介してきましたが、ここでは番外編として健脚者向けの朝日岳から北へと続く長大な稜線をたどり日本海・親不知海岸をめざす「栂海(つがみ)新道」をご紹介します。
標高差の大きなアップダウンが続き、無人小屋での宿泊も必要なため容易にチャレンジできるルートではありませんが、朝日岳からの登山ルートとして欠かせない存在。3泊4日で白馬岳から日本海、南から北へと抜けるルートで行く人が多いですが、泊数を伸ばして五竜岳や鹿島槍ヶ岳などの百名山と組み合わせて大縦走を楽しむのもおすすめ。
お好みで朝日小屋までのルートを組み合わせて、行ってみてくださいね。
健脚者向け!憧れのロングコース
最高点の標高: 2402 m
最低点の標高: 113 m
累積標高(上り): 2586 m
累積標高(下り): -4603 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日(朝日小屋から親不知海岸まで)
- コースタイム:約18時間30分(片道)
- 【技術的難易度】★★★★★
- ・岩場、雪渓を長時間継続して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術に加え、撤退などの判断能力ができる
栂海(つがみ)新道を経由して日本海の親不知海岸へ。長距離&激しいアップダウンを歩き通す体力が必要ですが、充実感と達成感あふれるルートです。
【1日目】9時間10分 / 12.6km
朝日小屋(60分)→朝日岳(50分)→吹上のコル(210分)→黒岩山(100分)→サワガニ山(120分)→犬ヶ岳(10分)→栂海山荘(泊)
【2日目】9時間20分 / 13.1km
栂海山荘(90分)→菊石山(150分)→白鳥山(120分)→坂田峠(30分)→尻高山(60分)→二本松峠(100分)→栂海新道登山口
1日目:歩行時間 約9時間10分 朝日小屋〜栂海山荘

まずは朝日岳を越え、五輪尾根との分岐を左手の稜線沿いに進み、栂海新道へ。長栂山周辺には照葉ノ池、アヤメ平などの池塘が点在しています。

高層湿原である黒岩平を過ぎて黒岩山へ、ここで中俣新道との分岐を左手に進みましょう。

黒岩山からはサワガニ山、犬ヶ岳とアップダウンを繰り返します。サワガニ山と犬ヶ岳の鞍部から少し下った場所には水場もあり、この日の無人小屋泊に備えて給水しましょう。

2日目:歩行時間 約9時間20分 栂海新道〜親不知海岸へ

栂海山荘からはブナなどの広葉樹林に覆われた稜線を、黄蓮山・菊石山・下駒岳と小刻みなアップダウンが続きます。栂海山荘同様の無人小屋・白鳥小屋がある白鳥山に登ると、日本海の展望が見えてきます。

林道が通る坂田峠まで下り、尻高山を越えると、二本松峠・入道山を経て、ようやく栂海新道入口に下山します。

ここまで来たら是非立ち寄りたいのが親不知海岸。海に足を浸して、標高2932mの白馬岳から海抜0mまでを歩き通した疲れを日本海の水で冷やしてあげましょう。
北アルプス最北の静かな頂・朝日岳…事前の情報収集を欠かさずに!

奥深いながらも魅力満載の朝日岳、いつかは訪れたい隠れた名山です。険しい岩稜の印象が強い北アルプスでは珍しく、たおやかな山容で湿原・池塘・お花畑など心和む風景を随所で楽しめる貴重な存在。
ご紹介したように多彩なルート設定が可能なので、体力やスケジュールに合わせてオリジナルな山旅を楽しんでくださいね。