質実剛健、丈夫さが必要な機能である山道具。だからこそ発売から10年以上も経つ道具や、10年以上問題なく使い続けられる定番の山道具があります。
そんな山道具の中から、ライターPONCHOが愛用してきたモノを紹介。
今回は第5回、発売から30年以上が経つプリムス『2245ランタン』と、残念ながら今年2020年10月に販売が終了したEPIの『SBランタンオート』という、2つの小型ガスランタンについて。
『EPI/SBランタンオート』 販売終了の知らせが届きました
登山のテント泊の夜を、明るく勇気づけるように灯るランタン。
2008年にブラックダイヤモンドから『アポロ』というLEDランタンが登場して以来、多くのメーカーが軽量コンパクトなLEDランタンを発売。以降、それまで定番だった小型ガスランタンは、軽さ、安全性、操作性において一時代前の道具と考えられるようになり、今では登山雑誌でも取り上げられず、登山専門店の棚に置かれていないところもあります。
わずか12年ですが、登山用ランタンに対する意識の変化は大きく、もしかしたら、登山で使える小型ガスランタンがあることを知らない若いハイカーもいるのかもしれません・・・。
そんな折に届いたのが、「EPI/SBランタンオート販売終了」のお知らせです。2020年10月15日でした。
「ついに、その日が来たか・・・」
私はそう感じてすぐに、所有する『SBランタンオート』と、同じく登山のランタンとして定番のプリムス『2245ランタン』を灯しに出掛け、小型ガスランタンを振り返りました。
登山に明るすぎるランタンは要らない
1998年に発売された『SBランタンオート(EPI)』を購入したのは2010年頃だったと思います。
『2245ランタン(プリムス)』はそれよりも古く、日本での取り扱いがはじまった1988年に発売され、私は90年代前半に購入しています。
背負って持ち運べる道具、どんな旅にも持って行ける野外道具に魅力を感じている私は、明るすぎる大きなランタンを所有しようとは思いません。
例えば灯油ランタンは、デザインがなんとも素敵で所有欲を刺激されます。
でも、大きさ、明るさはキャンプ用。バックパックに収納して山を登るのはムリだよなぁ・・・と思って手に入れることを諦めます。
だから、友人たちとのキャンプで、それまで使っていた『2245ランタン(プリムス)』の小さな灯りを補うランタンが必要になった時、『2245ランタン』とほとんど同じタイプですが、ほんの少しだけ軽量コンパクトな『SBランタンオート(EPI)』を選びました。これなら、キャンプ以外に山に持って行き、2~3人のグループ登山でも使えるだろうと。
・・・そう考えていたのですが、『SBランタンオート』を登山で使ったことは、一度切り。結局、キャンプでばかり使ってきました。
というのも、そもそもランタンを山で使うことがなくなってしまったのです。LEDランタンでさえも使わなくなり、登山の必需品=ヘッドライトにレジ袋を被せてランタン代わりに使っていたからです。
私はウルトラライトな志向を強くは持っていませんが、それでもやはり登山の荷物が軽くなれば、もっと速く、さらに遠くへと行くことができようになります。それは、山を旅する上でとても魅力的なことでした。
いろんなものを見てみたい。
どこまで行けるのか試してみたい。
他人に自慢できるような旅がしたい。
たぶんそんなことを思っていたと思います。
“移ろう時間”を味わう楽しみ
今朝、夜明け前の近所の公園で、私は『SBランタンオート(EPI)』と『2245ランタン(プリムス)』を灯して、ベンチに座りました。
点火してみると、『SBランタンオート』のマントル(※)が持ち運びの衝撃で崩れてしまったことに気が付き、替えのマントルを装着してライターで火を点け、燃料バルブを回してマントルを炭化させ、きれいな発光体を作りました。

そうか、私はいつの頃からか、移動する楽しみだけでなく「移ろい」を見つめる楽しみも持てるようになったのだな、と。
旅をする上での選択肢が増えたのだな、と。
「移ろい」とは特別なことではなく、それは御来光とかサンセットであり、多くの人が好きなひと時で、目当てにしている時間です。
空、月、星をゆっくり眺め、鳥の囀り、梢の揺れ、光の瞬き、風の気配を感じること。
それらを、ゆっくりと味わうこと。
気が付かなかったことに気が付けるようになること、知らなかったことを知ること。
つまり発見できる目線や心があれば、「移ろい」は、いつ、どこにいても感じ、楽しめるものです。
小型ガスランタンが教えてくれたこと
30年程前、初めてのテント泊の夜を終えた朝、想像以上の寒さの中で朝食に使う湯を沸かしながら、私はふと思い付きました。
ストーブの火がこれだけあったかいのだから、ランタンだってあったかいに違いない。ガラス製のホヤに守られて火が風に揺れにくい『2245ランタン(プリムス)』の灯りで、私は少しかじかんだ指先をあたためました。
ランタンは照明だけでなく、暖房器具としても使えることを発見した私は、野外での経験値を少しアップさせました。
ある山の夜には、ランタンがストーブ代わりになることも知りました。
おそらく少し酔っていたんだと思います。バーボンを注いだシェラカップを、『2245ランタン(プリムス)』のトップのベンチレーター上に、丁度いいなぁと思って置いたのです。
完全な水平ではないので注意が必要ですが、そのバランスを取ることも楽しかったのでしょう。当然、シェラカップはあたためられてホットウイスキーになったのですが、その発見にとても感心したことを覚えています。
山の寒さですぐに冷めてしまう紅茶やコーヒーも、こうすればあたためることができる。水を注いだシェラカップにおにぎりを崩して入れてランタンに掛けておけば、ストーブでラーメンを作っている間に、雑炊も作れるじゃないか!と。
ちなみに『SBランタンオート(EPI)』はトップが水平なので、よりストーブ代わりにしやすいです。
想像力を刺激する火の道具
LEDランタンやヘッドライトと小型ガスランタンの違いはなんだろう?
LEDランタンとヘッドライトは「電気」を使った灯りですが、小型ガスランタンは「火」を使った灯りです。
その火はマントルを燃やして光らせ、焚火のような揺らぎはありませんが、ぬくもりはあります。山の凛とした空気のなかで感じるランタンのぬくもりは、焚火の揺らぎのように、人間をリラックスさせるように思います。
そう思うのは、ガスが供給され燃える「シュー」「ゴォー」という燃焼音とともに、ふんわりと肌に触れるぬくもりが、なんともいえない安心感を与えてくれ、山の夜の静けさのなかで少し臆病になっている気持ちを和らげてくれた経験があるからです。
そしてぬくもりは、山の1日をゆっくりと振り返らせてくれたり、次の山をどう過ごそうかと、じんわりと想像力を膨らませてくれもします。
『SBランタンオート(EPI)』が販売終了するのは残念ですが、これを契機に山でこの2つのランタンを使ってみれば、今だからこそ感じられる移ろい、発見があるに違いありません。
と、そんなことを考えていたら、思い付きました。
次の満月まわりに奥高尾の景信山の山頂から、月の出を見に行ってみようと思います。山頂に設置された木製テーブルの上に『2245ランタン(プリムス)』と『SBランタンオート(EPI)』を灯し、ヒーター代わりに使って、おでんを食べて来よう。
あっ、町田のあの里山の夕闇に小型ガスランタンを灯して、コーヒーを淹れながら、たぬきたちが遠巻きにこちらを警戒している気配を感じるのも、おもしろいかもしれません。
寒い冬の低山、里山のその場所にいる人間は、きっと私たちだけ。昼間とはまるで違う山の時間を、感じられるでしょう。
小型ガスランタンをどう使えば、楽しいか?
そんな想像から生まれる、新たな山の旅、山の過ごし方。なんだかワクワクしてきます。
それでは皆さん、よい山旅を!
紹介したアイテムはこちら
EPI SBランタンオート