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三俣蓮華岳ってどんな山?

標高 | 山頂所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) |
---|---|---|---|
2841m | 岐阜県高山市、富山県富山市、長野県大町市 | 15.9℃ | 1.0℃ |
三俣蓮華岳は百名山である鷲羽岳や黒部五郎岳の狭間に位置し、北アルプスの縦走者の多くが通過する山。「三俣」とはその名のとおり、山頂が岐阜県・富山県・長野県の3県にまたがっていることを表しています。
地図のように多くの百名山に囲まれているため、山頂から見る大パノラマは見応えあり。
知る人ぞ知る北アルプスの穴場!ダイナミックで開放的な景色に心打たれる

山頂からは、鷲羽岳が目の前に。名前の由来ともなった「鷲が羽を広げている」ような山容を望め、その開放感は息を飲むほど。また日本最後の秘境と呼ばれる雲ノ平を一望でき、その奥には薬師岳がそびえます。
遠方には槍ヶ岳、手前にはたくさんの高山植物の望む

東側へ振り返ると、先が尖った槍ヶ岳が堂々とした存在感を放ちます。縦走のゴール地点とする人も多く、あの頂をいつか踏破すると思うと高揚感で胸がいっぱいに。
またその手前には多くの高山植物が咲き誇り、砂地や岩がごろつく北アルプスのイメージを払拭させます。秋になると草が紅葉しオレンジや赤に色づき、夏とは異なる色鮮やかな山並はまた絶景です。
三角点が3つ!?山頂が3県にまたがる珍しい山
三俣蓮華岳の山頂は岐阜県・富山県・長野県の3県にまたがる珍しい山。そのため3つの三角点が置かれており、山頂標識にも3県の名が連ねてあります。
三俣蓮華岳の難易度は?

頂を踏破するのに片道最短で約9時間半、さらに急登が続き時間がかかるため、山小屋またはテントでの宿泊を伴う中〜上級者向けの山。
ルートによっては岩場やハシゴなど、転落・滑落に繋がる場所もあるので、岐阜県の山のグレーディングを見ながら自分が行くルートを必ず確認しましょう。
岐阜県 山のグレーディングを見る
地図も必ずチェック!山と高原地図 剱・立山
登山地図の定番といえばコレ。マップ詳細はもちろん、バスやマイカーでのアクセスにも便利!
昭文社 山と高原地図 剱・立山
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三俣蓮華岳への王道コース(1泊2日)
最高点の標高: 2839 m
最低点の標高: 1098 m
累積標高(上り): 3119 m
累積標高(下り): -1430 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 1泊2日(片道)
- コースタイム:9時間35分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
新穂高温泉から双六岳、三俣蓮華岳へと進む王道ルート。稜線歩きが気持ちよく、開放感抜群の景色に心踊らせながら、自然と足が進むでしょう。山行計画に合わせて、縦走やピストンなどルートの組み合わせをしてください。

新穂高温泉駅から舗装された林道を、約1時間20分ほど進んでいきます。「わさび平小屋」を過ぎると本格的な登山道の始まり。天然水が豊富な秩父沢や湖池が美しい鏡平山荘を経て、弓折岳へアクセスします。
高山植物が彩る緩やかな稜線を進み、双六小屋に到着です。
双六小屋を通過すると3つの道に分かれた分岐点に到着。双六岳へ続く道は気持ちの良い稜線歩きが楽しめることから、多くの登山者が「稜線ルート」を進みます。山荘や三俣蓮華岳山頂への最短ルートは異なるので注意しましょう。
稜線ルート・・・双六岳を経て三俣蓮華岳へ進む。片道約120分と時間はかかるものの、気持ちの良い稜線歩きを堪能できる。
中道ルート・・・三俣蓮華岳への最短ルート。片道約90分で山頂へアクセス可能。途中稜線ルートと合流。
巻道ルート・・・お花畑が豊富な三俣山荘への最短ルート。山頂まで片道約110分。山荘からは約35分で往復が可能。

双六岳はお椀をひっくり返したような形の丸い山頂が特徴的。花の百名山とも呼ばれ、高山植物のチングルマやクロユリが彩ります。
稜線ルートを歩き、振り返ると槍ヶ岳が。広い稜線上に浮かぶ荒々しい岩稜帯は見惚れるほど美しく、この景色を見るために双六岳へ登頂する人もいるほどです。
■新穂高温泉〜双六岳までのコース詳細や山小屋情報こちら

三俣蓮華岳に最も近い山小屋|三俣山荘

三俣蓮華岳から約45分、三俣蓮華岳と鷲羽岳の鞍部に建つ小屋。目の前には迫力ある鷲羽岳があり、展望食堂からは北アルプス奥地の山々や槍・穂高連峰を望めます。
憧れの裏銀座縦走コース(3泊4日)
最高点の標高: 3088 m
最低点の標高: 1256 m
累積標高(上り): 7612 m
累積標高(下り): -7383 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 3泊4日
- コースタイム:33時間56分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
高瀬川と黒部川の源流部に挟まれた山々を縦走し、槍ヶ岳を登頂する「裏銀座縦走コース」。3日目に三俣蓮華岳を登頂し、双六岳へ続く稜線ルートを満喫。北アルプスの雄大な景色を一望できますよ。
【2日目】烏帽子小屋(90分)→三ッ岳(120分)→野口五郎岳(150分)→水晶小屋(40分)→水晶岳(30分)→水晶小屋 (86分 ※推定値)→鷲羽岳(60分)→三俣山荘(泊)【3日目】三俣山荘(60分)→三俣蓮華岳(75分)→双六岳(90分)→樅沢岳(190分)→千丈乗越(90分)→槍ヶ岳山荘(泊)
【4日目】槍ヶ岳山荘(30分)→槍ヶ岳(30分)→槍ヶ岳山荘(100分)→天狗原分岐(110分)→槍沢ロッヂ(80分)→横尾(190分)→上高地バスターミナル
※このコース中の飛騨乗越(双六岳~槍ヶ岳)は岐阜県の山のグレーディングで難易度D(地図読み能力・岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術・ルートファインディング能力が必要)に設定されています。
1日目|高瀬ダム〜烏帽子小屋

高瀬ダムからトンネルを抜け、吊橋と丸太橋を進み、ブナ立尾根が続く登山口へ。道標には「12」の番号札がつけられており、「0」の烏帽子小屋までカウントダウンをしてくれます。
約4時間40分かけて登る、高低差1,200mの大急登は岩場や木製階段などの歩きづらい場所も多く、かなりの手強さ。ゆっくりと自分のペースで進んでいきましょう。

烏帽子小屋に到着したら、ザックをデポしてサブザックで烏帽子岳へアタック。尖った岩の山頂が特徴的で、最後の登りでは幅10cmほどの岩棚をトラバースするため、すれ違いや落石には要注意。
高度感抜群の山頂からは立山や表銀座縦走コースの山々が見渡せ、1日の疲れを吹き飛ばしてくれます。
■烏帽子岳のコース詳細や山小屋情報はこちら
2日目|烏帽子小屋〜鷲羽岳〜三俣山荘

三ッ岳を目指して進んでいくと右手にはなだらかな山容が美しい赤牛岳、左手には唐沢岳や餓鬼岳と、360度の景観を楽しみながら気持ちの良い稜線歩き。
野口五郎岳を経て水晶岳へと進む道は、岩がゴロつくアップダウンが続き、ヤセ尾根や崩れやすい斜面には注意が必要です。
水晶小屋から水晶岳山頂へのピストンは約1時間10分、山頂からは雲ノ平や薬師岳、赤牛岳など迫力の北アルプス風景を堪能。
■水晶岳のコース詳細や山小屋情報はこちら

水晶岳からワリモ岳を通過すると大きく下り、その後鷲羽岳へと一気に登り返します。山頂からは宿泊場所である三俣山荘の赤屋根が見え、ホッと安堵するのも束の間、怒涛の下りが待っているので最後まで気の引き締めが必要。
見晴らしが良く燕岳から槍ヶ岳、立山連峰など北アルプスの山々をほとんど見渡せます。
■鷲羽岳のコース詳細や山小屋情報はこちら
3日目|三俣蓮華岳〜双六岳〜槍ヶ岳山荘
緩やかな登りが1時間ほど。天気がよければ夜明け前に山荘を出発し、三俣蓮華岳の山頂で御来光を望むのもおすすめです。

三俣蓮華から双六岳を経て、双六小屋で一息つきましょう。最後は大ボスの西鎌尾根へアタック。佐俣乗越を超えると急登に加えて、クサリ場や足場が細い場所など緊張する道が続きます。
千丈乗越を超えるとジグザクの尾根道がこれでもかと続きますが、ここが踏ん張りどころ。視界が開けたら間も無く槍ヶ岳山荘に到着です。
槍ヶ岳山頂へは急なハシゴやクサリ場が連続しているため、しっかりと足場を確認しながら一歩ずつ着実に進みましょう。ゴールをすれば達成感からなのか、山頂から見渡す360度の絶景に圧倒。辛かった思いも吹き飛び、またいつかここに来ようと誓いたくなるはずです。
■槍ヶ岳までのコース詳細や山小屋情報はこちら
4日目|槍ヶ岳山荘〜上高地バスターミナル
標高3,080mの槍ヶ岳山荘から標高約1,500mの上高地まで一気に下ります。槍沢ロッヂまでは砂地のザレた道で滑りやすく、また雪渓が残っている場合もあるため、ゆっくり慎重に。

横尾山荘まで下山すれば、多少のアップダウンはあるもののほぼ平坦で広い林道を進みます。上高地まで3時間ほど最後の一踏ん張り。
ゴールしたらご褒美の温泉に浸かって、4日間の疲れを洗い流しましょう。
■上高地周辺の宿泊施設はこちらの記事をチェック
北アルプス最深部周回コース(4泊5日)
最高点の標高: 2942 m
最低点の標高: 1357 m
累積標高(上り): 6424 m
累積標高(下り): -6424 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 4泊5日(周回)
- コースタイム:34時間42分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
折立をスタートし、最後の秘境と呼ばれる雲ノ平へ。水晶岳と鷲羽岳をめぐり三俣蓮華岳を登頂します。その後黒部五郎岳へ進み折立へと戻る4泊5日の周回ルートです。北アルプスの最奥地を存分に満喫しましょう!
【2日目】薬師岳山荘(100分)→太郎平小屋(135分)→薬師沢出合(155分)→アラスカ庭園(45分)→雲ノ平(泊)【3日目】雲ノ平(51分 ※推定値)→祖父庭園(120分)→水晶小屋(40分)→水晶岳(116分※推定値)→鷲羽岳(60分)→三俣山荘(泊)
【4日目】三俣山荘(40分)→三俣蓮華岳(240分)→黒部五郎岳(180分)→北ノ俣岳(85分)→太郎平小屋(泊)
【5日目】太郎平小屋(60分)→五光岩ベンチ(130分)→折立
1日目|折立〜薬師岳〜薬師岳山荘
登山口からしばらくブナやミズナラなどの落葉樹の樹林帯が続きますが、30分ほどすると針葉樹に変わり山容の変化を感じられます。
森林限界を超えると、気持ちの良い風を感じながらの稜線歩き。五光岩ベンチを過ぎたら太郎平小屋まであと少しです。
太郎平小屋から薬師岳山頂までは標高差約600m、往復で5時間30分ほどかかるため、山頂を踏んだら薬師岳山荘で一泊。
薬師岳からは剱岳・立山連峰や五竜岳・鹿島槍ヶ岳などの後立山連邦、そのほかにも中央アルプスや笠ヶ岳、白山など一面の山々の絶景に見惚れます。天気がよければ富山湾や能登半島なども望めるでしょう。
■薬師岳のコース詳細や山小屋情報はこちら
2日目|薬師岳山荘〜雲ノ平山荘
薬師岳山荘から太郎平小屋までの道は、沢沿いを歩くため滑りやすいので要注意。その後、薬師沢小屋まで一気に下ります。

薬師沢小屋から雲ノ平までは、大小さまざまな岩が点在する急な斜面が約2時間10分続きます。道幅が狭く、すれ違い時には注意が必要です。
木道の始まりは急登終わりのサイン、間も無く日本最後の秘境と呼ぼれる雲ノ平に到着。
「アラスカ庭園」「アルプス庭園」「日本庭園」などの名前の付けられた「庭園」がいくつかあり、たくさんの高山植物が咲き誇る姿は、まさに雲上の楽園そのもの。本当に日本なのか疑ってしまうのほど幻想的な景色が広がっています。
■雲ノ平のコース詳細や山小屋情報はこちら
3日目|雲ノ平山荘〜水晶岳〜鷲羽岳〜三俣山荘


岩苔乗越は3本の道の分岐点。ワリモ北分岐方面へ進み、ここからまずは水晶岳をピストンします。その後ワリモ岳を経て、鷲羽岳へアタック。慎重に下山をして、三俣山荘で宿泊の受付を済ませましょう。
4日目|三俣山荘〜黒部五郎岳〜太郎平小屋
三俣山荘から約40分の登りを経て、三俣蓮華岳の頂上へ。ここから黒部乗越まで、急な下りが続きます。
黒部五郎小舎からお花畑が彩る穏やかな道を進んでいくと、目の前に巨石が点在するカールが立ちはだかります。カールとは、山頂直下の斜面が窪んでいる地形のこと。下から見上げる雄大な自然風景に心奪われます。
黒部五郎岳の山頂からは、雲ノ平や水晶岳、鷲羽岳など今まで歩いてきた道が確認でき、達成感に満ち溢れるはず。
日本百名山及び花の百名山にも選定されており、その山並みの美しさを見るためなら時間をかけてでも来る価値があります
■黒部五郎岳までのコース詳細や山小屋情報が知りたい人はこちら

北ノ俣岳を過ぎると緩やかな下りが続く穏やかな道のため、稜線からの絶景を思い切り堪能。太郎山山頂に着いたらゴールはすぐそこです。太郎平小屋で山での最後の晩餐を楽しみましょう。
5日目

初日を懐古しながら、1日目に通った道を戻っていきます。五光岩ベンチの先は、前日に雨が降ると樹林帯での登山道がぬかるみ、滑りやすくなるので最後まで気を引き締めて、注意しながら歩きましょう。
三俣蓮華岳の登山口へのアクセス・駐車場情報
三俣蓮華岳の登山口へのアクセス情報です。最短ルートの登山口・新穂高温泉は長距離バスの発着も多くアクセスが良いです。
新穂高温泉へのアクセス
【クルマの場合】
<関東方面から>
①中央自動車道:高井戸IC→松本IC ②関越自動車道:練馬IC→松本IC
国道158号→(平湯)国道471号→(栃尾)県道475号
<大阪・名古屋方面から>
①名神高速道路・吹田JCT(名古屋方面へ)→松本IC ②名神高速道路・吹田JCT(名古屋方面へ)→高山IC 国道158号→(平湯)国道471号→(栃尾)県道475号
【公共交通機関の場合】
<東京方面から>
①JR中央本線「松本」駅→バス・タクシーに乗換え
②JR長野新幹線「長野」駅→JR中央本線「松本」駅→バス・タクシーに乗換え
<大阪・名古屋方面から>
①JR東海道新幹線「新大阪」駅→JR「名古屋」駅→JR中央本線「松本」駅→バス・タクシーに乗換え
②JR東海道新幹線「新大阪」駅→JR「名古屋」駅→JR東海道本線「高山」駅→バス・タクシーに乗換え
【高速バスの場合】
各都市から高速バスで「高山」「平湯」まで直行します。くわしくは以下リンクよりご確認ください。
高瀬ダムへのアクセス
【クルマの場合】
長野自動車道 安曇野IC-国道137号-県道326号-七倉山荘前でタクシーに乗換-高瀬ダム
【公共交通機関の場合】
高瀬渓谷へはバスの運行がありません。渓谷入り口のエネルギー博物館までは、市民バスが運行しています。
折立へのアクセス
【クルマの場合】
<富山方面から>
北陸自動車道 立山IC-有峰林道 小見線-折立駐車場
<松本方面から>
国道471号-大規模林道 高山大山線-有峰林道 東谷線-折立駐車場
【公共交通機関の場合】
JR「富山」駅-富山地方鉄道→直通バス-折立(※直通バスは予約が必要です)
富山地方鉄道「電鉄富山」駅→富山地方鉄道「有峰口」駅→有峰林道 路線バス-折立
三俣蓮華岳から北アルプスの大パノラマを見渡そう!

さまざまな縦走コースの通過地点である三俣蓮華岳。その山頂からは北アルプスを一望でき、気持ちの良い稜線歩きを楽しめます。山頂に着いたら、珍しい3つの三角点を全てタッチ!宿泊を伴うため、万全な装備と準備をして臨みましょう。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山してください。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんでください。