アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
熊スプレーとは?ほんとに必要?

登山をはじめとするアウトドアアクティビティで、脅威となりうる生き物の代表的な存在が熊でしょう。そんな熊との遭遇に備えておきたいアイテムが、今回紹介する熊スプレーです。熊よけスプレー、熊撃退スプレー、ベアースプレーなどの名称で呼ばれることもあります。
虫よけスプレーなどと違い、熊を寄せ付けなくするためのアイテムではありません。近距離で遭遇して襲いかかろうとする熊に対して使用し、撃退するスプレーです。
熊スプレーの仕組みと効果

熊スプレーの主成分は、唐辛子などに含まれる辛みをもたらす天然の有機化合物・カプサイシンなどの辛み成分です。これを熊に噴射することによって刺激(辛み成分による苦痛)を与えてひるませ、撃退する仕組みとなっています。実際にこれを使用したことで、難を逃れたという事例も報告されています。
熊スプレーは万が一への備え

熊スプレーを使用するのは、万が一熊に襲われてしまったという最悪のシーンです。
基本的に熊はおだやかで臆病な性質の生き物といわれています。このため、熊の生態系となっている場所に入山する場合でも正しく行動・対処していれば、大半の場合は襲われることはありません。
ただし以下のような不運な状況では熊に襲われてしまう可能性があるため、万が一に備えて熊スプレーを持っておくとよいでしょう。
・突然の人間との遭遇などで、熊が驚いたり刺激を受けたりした場合
・子どもや食糧など、大切なものを守ろうとした場合
・人間や、人間の食べ物に味をしめてしまった個体である場合
段階に応じた熊対策

前述の通り、熊スプレーの使用は最終的な手段です。熊の生態系となっている山域では、熊に襲われる前の段階での対策が重要となります。
フェーズ1:熊に出会っていない状況

このフェーズでは、熊に出会わないための対策が重要。大半は臆病な性質の熊は、人間の存在に気がつけば、熊自身から遠ざかっていくものです。
熊鈴・ラジオ・ホイッスルなどの携行と使用、手拍子・同行者との会話・口笛など、「音」で人間の存在を知らせましょう。
ただし人間の食べ物に味をしめてしまった個体は、かえって近づいてくることも。食糧や行動食は密封性の高い袋や容器・フードロッカーなどに保管して、食べ物のにおいをさせないことが重要です。
フェーズ2:熊に出会ってしまった状況

このフェーズでは、熊に襲われないための対策が重要です。興味本位で写真を撮ろうとして近づくなどの行為は、危険なので絶対に避けましょう。
こうした場合は、静かにそっと熊がいる場所から離れるのがベストです。
もし熊が気づかず近づいてくる場合は、石や倒木の上に立って大きく手を振りながら声をかけ、人間であることを知らせましょう。基本的には熊の方から遠ざかってくれます。このとき、目をじっと見つめると熊のストレスになるので避けてください。
テントやザックなど自分の持ち物を熊が物色しているようであれば、無理して奪い返そうとすると熊を刺激する結果になるので、控えましょう。
フェーズ3:熊に襲われそうな状況

このフェーズはもっとも避けたい状況ですが、万が一襲われそうになったら自身の命を守る行動をとりましょう。
薮山の登山でナタなど大ぶりの刃物を持っていればそれを武器に、もしくは熊スプレーを使用して、熊を撃退するために闘うしかありません。
もし撃退できなければ、うつ伏せになって首の後ろに手を回し、腹部・頭部・頸部などに致命傷を負う可能性を少しでも軽減してください。

フェーズ1・2で適切な対応をとっていれば、熊に襲われる可能性は低いものの、以下のような状況では熊に襲われる可能性があります。
・川の音などで熊よけの音がかき消されてしまい、突発的に至近距離で遭遇する
・無意識に熊の子どもや食糧に近づいてしまう
・人間を襲う個体に遭遇する
こうした場合に活躍するのが熊スプレーです。熊と出会う距離や襲ってくるタイミング、登山者自身がとれる行動など状況は様々。必ずしも熊スプレーを使用できるとは限りませんが、うまく使用できれば熊の襲来から助かる可能性はあります。
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熊スプレーの選び方

熊スプレーを選ぶ際にチェックしておきたいのが、以下のポイントです。
*各ポイントをクリックするとそのポイントにジャンプします
成分と濃度|威力を左右するカプサイシンの含有量

前述の通り、熊スプレーの主成分はカプサイシンです。その威力は辛さを表す単位・スコヴィル(SHU)値や、カプサイシンの含有量によって知ることができます。
スコヴィル値の表記は食品用の場合と軍事用の場合があり、基準が異なるので注意が必要です。例えば食品用の200万SHU=軍事用の20万SHUとなり、軍事用は食品用の10分の1で表記されます。
日本の場合、北海道にはエゾヒグマが、本州と四国にはツキノワグマが生息しています。クマの種類に合わせて威力を選ぶことが大切です。
ヒグマには強力なスプレーを

ヒグマは体長約1.5〜2m・体重約100〜400kgと大型なので、威力の強いスプレーが必要になります。ツキノワグマ用のスプレーでは、ヒグマには効果が低い可能性もあります。
北米に生息するグリズリーはヒグマの一種なので、北海道で使うなら北米の熊に効果があるとされているスプレーがおすすめです。米国連邦政府グリズリーベア委員会では、アメリカの環境保護庁(EPA)に登録された熊スプレーの使用を推奨しており、その基準は、カプサイシン濃度1〜2%・容量224グラム(7.9オンス)以上。ヒグマを想定するなら、これをクリアしているモデルが良いでしょう。
スコヴィル値なら食品用表記で200万SHU以上がおすすめ。カプサイシン濃度・スコヴィル値とも数値が大きいほど威力が強くなります。
ツキノワグマには弱めのスプレーでもOK

いっぽうのツキノワグマは体長約1〜1.5m、体重約40〜130kg程度と、熊の中でも小型〜中型サイズです。熊の健康被害や、風向き・誤噴射などで自分に熊スプレーの成分がかかる可能性も考慮すると、北海道以外の地域では、ヒグマ用よりも威力の弱いスプレーでも十分といえるでしょう。
多くの熊スプレーは油性ですが、水で成分を洗い落としやすい、水性のツキノワグマ専用の熊スプレーも販売されています。
噴射距離・噴射時間・噴射タイプ|命中しやすいかどうか

せっかく熊の種類に合ったモデルを選んでも、熊がひるみやすい鼻先あたりに熊スプレーが命中しないと、効果がありません。命中しやすさは、噴射距離・噴射時間・噴射タイプによって変わります。
噴射距離|長いほど安心

熊スプレーの噴射距離は、短いと4m程度のモデルから、長いと10m程度のモデルまで様々です。一般的には熊を5m以内まで引き寄せてから噴射するのが効果的と言われていますが、恐怖心から耐えきれるか心配な人は噴射距離が長いモデルの方がおすすめ。
またスペックに書かれている噴射距離が無風の室内でのテスト数値だった場合、実際には風の影響を受けてスペックより短くなるので注意が必要です。
噴射時間|長いほど命中しやすい
持ち運びやすさ|ホルスターにセットできると便利
熊スプレーのおすすめランキング
それでは、おすすめの熊スプレーを紹介します。今回はカプサイシンの含有量、噴射距離、噴射時間から総合的に判断し、威力が強く命中しやすいモデルから順に7モデルをランキング形式にしています。すべてアメリカの環境保護庁(EPA)に熊スプレーとして登録されているモデルです。
▼紹介する熊スプレーおすすめ7モデルはこちら
カウンターアソールト 熊よけスプレーCA290 ストロンガー
内容量 | 290g |
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成分 | 唐辛子エキス、代替フロン(HFC-134a) |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | 320万SHU |
噴射距離 | 10.5m以上 ※無風状態の室内で行なわれた実験に基づくデータ |
噴射時間 | 9.2秒間 ※無風状態の室内で行なわれた実験に基づくデータ |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 213×59mm |
重量 | 380g |
専用ホルスター | 別売 |
性質 | - |
使用期限 | 製造から4年 |
威力を重視したい人におすすめな大容量モデル
グリズリーの生息地として有名なアメリカのモンタナ州で、研究・開発されているカウンターアソールト。北米ではポピュラーな熊スプレーです。カプサイシンの含有量が最も多いため、威力の強さを重視する人にぴったり。噴射距離・噴射時間も長く、命中させやすい点も特徴です。
おすすめポイント
- ●大容量かつ高濃度で、威力が強い
- ●噴射距離・噴射時間が長く、命中させやすい
- ●北米でポピュラーな熊スプレー
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セイバー フロンティアーズマン ベアスプレー272mL
内容量 | 272ml |
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成分 | カプサイシン(トウガラシ抽出成分)2%、不活性成分98% |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射距離 | 10.5m ※メーカー測定値 |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
噴射時間 | 54mL/s ※メーカー測定値(約5秒) |
サイズ(高さ×直径) | 240×53mm |
重量 | - |
専用ホルスター | 付属 |
性質 | - |
使用期限 | 製造から3年 |
威力が高く保持しやすいボトルサイズの大容量モデル
フロンティアーズマン ベアスプレーは、1975年にアメリカで創業したSABRE(セイバー)社の熊スプレー。実績と高い信頼性を確立している、老舗の護身スプレーブランドです。1位のカウンターアソールトより細めのボトルで、手が小さな人や女性でも持ちやすいのもポイントです。
おすすめポイント
- ●高濃度で威力が強く、噴射距離・噴射時間も長い
- ●細めのボトルで、手が小さな人でも保持・使用しやすい
- ●老舗の護身スプレーブランドで高い信頼性
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カウンターアソールト 熊よけスプレーCA230
内容量 | 230g |
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成分 | 唐辛子エキス、代替フロン(HFC-134a) |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | 320万SHU |
噴射距離 | 9m以上 ※無風状態の室内で行なわれた実験に基づくデータ |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
噴射時間 | 7.2秒間 ※無風状態の室内で行なわれた実験に基づくデータ |
サイズ(高さ×直径) | 215×50mm |
重量 | 320g |
専用ホルスター | 別売 |
性質 | - |
使用期限 | 製造から4年 |
ランキング1位のアイテムの小型版
1位にランキングされたカウンターアソールト・熊よけスプレーCA290ストロンガーの小型モデルです。内容量は少なくなるものの、カプサイシン濃度・スコヴィル値ともにCA290ストロンガーと同じで、熊をひるませる高い効果が期待できます。
おすすめポイント
- ●高濃度で威力が強く、高い効果が期待できる
- ●コンパクトなサイズで携行しやすい
- ●北米でポピュラーな熊スプレー
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セイバー フロンティアーズマン ベアスプレー234mL
内容量 | 234ml |
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成分 | カプサイシン(トウガラシ抽出成分)2%、不活性成分98% |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射距離 | 9.0m ※メーカー測定値 |
噴射時間 | 46mL/s ※メーカー測定値(約5秒) |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 220×53mm |
専用ホルスター | 別売 |
重量 | - |
性質 | - |
使用期限 | 製造から3年 |
ランキング2位のアイテムの小型版
2位にランキングされたセイバー・フロンティアーズマン ベアスプレー272mlの小型モデルです。内容量が減る分噴射距離・噴射時間は短くなりますが、カプサイシン濃度は同等なので熊に対する効果は変わらず、コンパクトさが魅力です。
おすすめポイント
- ●高濃度で威力が強く、高い効果が期待できる
- ●コンパクトなサイズで携行しやすい
- ●老舗の護身スプレーブランドで高い信頼性
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メース ガードアラスカベアスプレー
内容量 | 約260g |
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成分 | カプサイシン |
カプサイシン濃度 | 1.34% |
辛さ度(スコヴィル値) | 100万SHU |
噴射距離 | 約6m |
噴射時間 | 約9秒 |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 230×60mm |
重量 | - |
専用ホルスター | - |
性質 | - |
使用期限 | 製造から3年 |
強い噴射力が特徴の護身スプレー
元々は北米大陸の山林での業務に従事している人々が、熊に出会ったときのために開発された熊スプレーです。暴漢からの護身用に、役所や学校などからの入札実績も高いアイテム。カプサイシン濃度やスコヴィル値は上位モデルより低めですが、誤噴射の際の人間へのダメージを考慮した設定です。
おすすめポイント
- ●誤噴射の際のダメージが少ない
- ●強力な噴射力で風などの影響を受けにくい高い命中率
- ●公的機関にも導入されている信頼性
UDAP 熊撃退スプレー
内容量 | 225g |
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成分 | カプサイシン |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射時間 | 4秒 |
噴射距離 | 9.0m |
噴射タイプ | - |
サイズ(高さ×直径) | - |
重量 | 408g |
専用ホルスター | 別売 |
性質 | - |
使用期限 | - |
上位ランクと同様のカプサイシン濃度のアイテム
ヒグマに対応可能な強力熊スプレーがUDAPです。アメリカ森林警備隊採用品や、世界最初の国立公園・イエローストーン国立公園推奨品にもなっており、公的機関からの信頼も厚いブランドでもあります。
おすすめポイント
- ●紹介アイテム最高レベルのカプサイシン濃度
- ●噴射距離が長く、離れた場所からでも命中しやすい
- ●米国の国立公園も推奨する高い信頼性
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セイバー BEAR ATTACK
内容量 | 250ml |
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成分 | トウガラシエキス、代替フロン(HFC-134a) |
カプサイシン濃度 | 2% |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射距離 | 約7〜8m |
噴射時間 | 約5〜7秒 |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 215×50mm |
重量 | 本体:約300g、ホルスター:約100g |
専用ホルスター | 付属 |
性質 | 油性 |
使用期限 | 製造から3年 |
成分が流れ落ちにくく効果が持続する油性のアイテム
BEAR ATTACKの熊スプレーは、性質が油性であることが大きな特徴。気温が低い厳冬期〜春期にも使用可能で、使用直前に缶を振る必要もありません。米国の環境保護庁登録商品で、熊対策の効果が証明されています。
おすすめポイント
- ●紹介アイテム最高レベルのカプサイシン濃度
- ●低温環境でも素早く使用できる油性の成分
- ●代替フロン使用で、噴射圧力が常に一定に保たれる
その他のおすすめモデル
EPAに登録されている熊スプレー以外のおすすめモデルを紹介します。
カールホーネック TW-1000シリーズ
カールホーネック ペッパーマン
内容量 | 40ml |
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成分 | オレオレジンカプシカム |
カプサイシン濃度 | - |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射距離 | 約4〜5m |
噴射時間 | 約8秒 |
噴射タイプ | リキッドタイプ |
サイズ(高さ×直径) | 84×35mm |
重量 | 55g |
専用ホルスター | なし |
性質 | - |
使用期限 | 2年 |
ドイツで30年以上の研究実績があり厳しい法律と規則に従っている、催涙スプレーの指導的メーカー・カールホーネック社の熊スプレー。スイス・フランス・オーストリアなど欧州では広く使用されています。
おすすめポイント
- ●コンパクトながら長い噴射時間
- ●ヨーロッパで定評のあるブランドのアイテム
- ●風の影響を受けにくいリキッドタイプの噴射方式
カールホーネック ペッパーマン & トレーニングスプレー ツインパック
内容量 | 40ml |
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成分 | オレオレジンカプシカム(ペッパーマン) 水 / 保存用に微量のアルコールを含む(トレーニングスプレー) |
カプサイシン濃度 | - |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射距離 | 約4〜5m |
噴射時間 | 約8秒 |
噴射タイプ | リキッドタイプ |
サイズ(高さ×直径) | 84×35mm |
重量 | 55g |
専用ホルスター | なし |
性質 | - |
使用期限 | - |
カールホーネックの熊スプレーは、リキッドタイプで噴霧タイプに比べて命中させるにはコツが必要です。こちらはトレーニング用のスプレーが付属しているセット。万が一に備えてのシュミレーションを登山前に安全に行うことができます。
おすすめポイント
- ●トレーニング用のスプレー付属のセット
- ●無害なスプレーで事前のシュミレーションが可能
- ●風の影響を受けにくいリキッドタイプの噴射方式
カールホーネック ペッパースタンダード
内容量 | 63ml |
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成分 | オレオレジンカプシカム |
カプサイシン濃度 | - |
辛さ度(スコヴィル値) | - |
噴射時間 | 約15秒 |
噴射距離 | 約4〜5m |
噴射タイプ | リキッドタイプ |
サイズ(高さ×直径) | 123×35mm |
重量 | 85g |
専用ホルスター | なし |
性質 | - |
使用期限 | 2年 |
ペッパーマンの大型モデルで、約15秒という長い噴射時間が魅力です。命中させるにはコツが必要なリキッドタイプながら、この噴射時間によって繰り返し熊の鼻先を狙ってのチャレンジが可能なアイテムです。
おすすめポイント
- ●噴射時間が長く、繰り返し噴射にチャレンジすることが可能
- ●ヨーロッパで定評のあるブランドのアイテム
- ●風の影響を受けにくいリキッドタイプの噴射方式
▼TW-1000シリーズの詳細はこちら
ポリスマグナム
TMM ポリスマグナム4オンス・ファイヤーマスター
内容量 | 105g |
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成分 | 17%濃度のオレオレシン・カプシウム(OC)、UV混合液 |
カプサイシン濃度 | - |
辛さ度(スコヴィル値) | 181万SHU |
噴射距離 | 5.5m |
噴射時間 | 約0.5秒×4回~5回 |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 172×38mm |
重量 | 163g |
専用ホルスター | 別売 |
性質 | 水性 |
使用期限 | 販売から3年 |
本州の複数の県警察本部でも採用されている、「ツキノワグマ用の熊スプレー」。国内メーカーTMM社が米国で生産する、日本国内唯一の催涙スプレーです。皮膚表面にすばやく浸透する「超親和性」で、短時間の噴射でも高い効果が得られます。
おすすめポイント
- ●国内メーカーが開発した日本国内唯一の熊スプレー
- ●ツキノワグマに合わせたスコヴィル値
- ●成分が眼・鼻の粘膜にすばやく浸透するため、短時間の噴射で効果が得られる
▼ホルスターセットはこちら
TMM ポリスマグナム16オンス・ファイヤーマスター
内容量 | 250g |
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成分 | 17%濃度のオレオレシン・カプシウム(OC)、UV混合液 |
カプサイシン濃度 | - |
辛さ度(スコヴィル値) | 181万SHU |
噴射距離 | 6.0m |
噴射時間 | 約1秒×8回 |
噴射タイプ | 噴霧タイプ |
サイズ(高さ×直径) | 235×54mm |
重量 | 380g |
専用ホルスター | 別売 |
性質 | 水性 |
使用期限 | 販売から3年 |
ポリスマグナム4オンス・ファイヤーマスターの大型モデルです。対人用のペッパースプレーとしてアメリカ軍で正式採用されているほか、日本国内でもツキノワグマ用の熊スプレーとして警察や地方自治体などに導入実績のあるシリーズです。
おすすめポイント
- ●日本国内唯一の熊スプレーの大容量モデル
- ●ツキノワグマに合わせたスコヴィル値
- ●洗い流しやすい水性なので熊や人への安全性が高い
▼ホルスターセットはこちら
熊スプレーの正しい使い方

それでは、実際に熊スプレーの使い方を紹介します。今回使用するのは、おすすめ第4位のフロンティアーズマン ベアスプレー234mLです。
アイテムによっては、購入時にはリング状の部分に新品であることを示す黄色や白のテープが巻かれています。これは素早い使用には邪魔になるので、登山前に外しておきましょう。

まずは、ホルスターから熊スプレーを取り出します。専用ホルスターなど、熊スプレーとのサイズがジャストフィットの場合は、利き手で熊スプレーを持ち上げ、利き手と反対側の手でホルスターをおさえておくとスムーズです。

次にリング状の部分を写真のように握って、親指で誤噴射防止用のセーフティークリップ(白い部品)を外します。

続いて、リング上部の噴射レバーを押して熊スプレーを噴射します。噴射方法はアイテムによって異なる場合があるので、必ず事前に確認しておきましょう。
噴射するタイミングは、前述の通り熊を5m以内まで引き寄せてからが有効です。鼻先や目・口を狙って噴射しましょう。
最初の噴射でうまく命中しなくても、噴霧タイプなら成分が煙幕の役割を果たして、多少は熊の動きを抑制できる場合も。焦らずスプレーの中身が残っているうちに、再度噴射にチャレンジしましょう。

熊をうまく撃退できたとしても、それは幸運に過ぎません。状況にもよりますが、早めに下山することが賢明です。
使用後は親指で噴射レバーの下にセーフティークリップを再度押し込んで、誤噴射を防止します。中身をすべて噴射したつもりでも、念のためこの操作を行いましょう。
熊スプレーの注意点

ここまで様々なモデルの熊スプレーや使い方を紹介してきましたが、熊をもひるませる威力があるアイテムなので、その取り扱いには注意が必要です。
ここでは使用時だけでなく、携行方法や保管方法などの注意点を紹介します。
人に向けて噴射しない

熊スプレーや同等のスペックを備えたアイテムは、警察などでは護身用や要人警護にも採用されています。すなわち、人間にも大きなダメージをもたらすのです。
人間には刺激が強すぎて重大な障害を負ってしまう可能性があるため、絶対に人に向けては使わないことが重要。熊と自分の間に他の登山者がいる場合や、自分や他の登山者が風下にいる場合には、熊ではなく人間が被害を受ける場合もあります。
特に油性の熊スプレーは水で洗っただけでは落とせないので、誤って皮膚や粘膜についたら病院で治療を受ける必要があります。水性の熊スプレーは流水洗浄で成分を落とせる場合もあるので、リスクは低いと言えるでしょう。
とっさに使える準備も大事

熊が走る速度は、時速50〜60kmと自動車並みです。そんな速さで迫ってくる熊に対して、有効噴射距離まで引きつけてから冷静に熊スプレーを扱うには、事前の準備も欠かせません。
誤噴射防止機能の解除方法を事前に確認・練習しておくことや、実際の遭遇シーンを想定してイメージトレーニングをしたり、距離感を掴んだりしておくことも大切です。
また、熊との遭遇時に素早く取り出せるように身に付けておくことも大切。扱いやすいホルスターや、その装着場所も、本番を想定して工夫しておきましょう。
おすすめのホルスター
ミステリーランチ ベアスプレーホルスター
材質 | 330デニールライトプラスコーデュラ |
---|---|
対応モデル | - |
使用期限がある

熊スプレーには、アイテム紹介欄に記載の通り使用期限があります。これを過ぎてしまうと威力が低下して、噴射距離が短くなってしまうことも。
直近の山行で一度だけ使用する場合は問題ありませんが、長期的に使う可能性があるなら使用期限の長いモデルがおすすめ。買い替えが少なくて済みます。
飛行機では運べない

熊スプレーは調理用のOD缶などと同様に、飛行機で運ぶことはできません。飛行機に乗って遠征登山する場合には、預入れ荷物にも機内持ち込み手荷物にもできないのです。
陸路での移動が可能な場所であれば、そちらを検討しても良いでしょう。現地の宿泊先に先送りしておく方法もありますが、もちろん航空便では送れないので配送業者に輸送期間の確認をして早めに送る必要があります。
現地で販売されている場所と在庫を確認できれば、そこで購入するという手段もあります。ただし使用しなくても飛行機で持ち帰ることはできないので、後に紹介するレンタルの利用もおすすめです。
保管・処分に注意を

熊スプレーは爆発してしまうとケガを負うだけでなく、刺激物質が広範囲に飛び散ってしまう危険物。保管方法にも注意が必要です。
登山の行き帰りで持ち運ぶ際には、誤噴射防止のロックがしっかりかかっていることを確認してください。ザックの中で誤ってロックが解除されないよう、パッキングには細心の注意を払いましょう。

保管時も高温になる車内や、直射日光があたる場所での保管は避けてください。また地震などで熊スプレーの上に重いものが落ちてくると、いくら誤噴射防止のロックがかかっていてもスプレー缶本体に亀裂が入り、そこから中身が噴射されてしまいます。ハードケースに入れるなどして、本体をしっかり保護するとよいでしょう。
使用期限を過ぎて処分するときは、中身を出し切る必要があります。自宅の庭や公園などでみだりに噴射すると、自分や周囲の人に被害が及ぶこともあるので、取扱説明書に記載の注意事項をしっかり確認しておくことが重要です。
熊スプレーのよくある質問

熊スプレーは、登山をしていてもなじみがない人も多いアイテムですよね。ここでは、熊スプレーに関するよくある質問にお答えします。
熊スプレーはどこで購入できる?

熊スプレーは紹介したおすすめモデルを販売しているECサイトなどのネットショッピングや、登山用品店で購入可能です。
熊の出没が多い地域や、登山者以外に熊スプレーを使用する林業・狩猟関係者が多い地域では、ホームセンターで販売している店舗もあります。
熊スプレーはレンタルできる?

アウトドアレンタルショップや熊の生息域の施設では、熊スプレーをレンタルしているところもあります。ここでは、代表的なレンタルできる熊スプレーを紹介します。
沖縄や離島等、空輸地域以外への配送が可能なレンタル
北海道での現地レンタル
熊スプレーを持ち歩くと違法になる?

熊スプレーを購入・所持すること自体には、問題はありません。ただし、屋外で携帯するときに注意が必要です。
熊をはじめとする危険生物の生息域やその行き帰りなど、正当な理由がない場所で携帯していると判断された場合、軽犯罪法の違反になる可能性もあります。
熊スプレーが必要なとき以外は、みだりに持ち歩かないようにしましょう。
熊スプレーで熊を撃退した事例は?

熊スプレーで実際に熊を撃退できるのか、疑問に思う人もいるでしょう。ここでは実際に熊スプレーを使用して助かった事例の一部を紹介します。
2022年3月・北海道札幌市
熊の巣穴を調査していた男性2名が襲われたが、熊スプレーによって熊を撃退。けがは負ったものの被害を最小限に食い止めることができた。
2023年11月・島根県浜田市
測量をしていた作業員2名が熊に遭遇。熊スプレーを噴射したところ熊が逃げ、被害を受けずに済んだ。
熊スプレー以外の熊対策グッズ
繰り返しになりますが熊スプレーは万が一の備え。実際に使用することがないのが一番です。ここでは他の対策グッズを紹介します。
熊鈴

鈴の音で熊に自分の存在を知らせる熊鈴は、今やすっかりおなじみのアイテム。デザインや色に凝ったアイテムもあり、山旅の記念品としても人気です。
ただし熊が出没する可能性のない場所や、山小屋などの屋内、公共交通機関の車内では、鈴の音が苦痛になる人も。消音機能がついた熊鈴がおすすめです。
おすすめの熊鈴
東京ベル製作所 BEAR BELL 森の鈴 TB-K1
▼熊鈴の選び方とおすすめ人気ランキング
エアホーン

人の声や手拍子、熊鈴やホイッスルよりも大きな音で、遠くまで熊に自分の存在を知らせるのがエアホーンです。
ただしその大きな音は周囲の登山者を驚かせますし、使用可能回数にも限りがあります。実際に遠くに熊が見えた時や、直近で熊の出没情報があった場所などに絞って、鳴らしすぎないようにしましょう。
おすすめのエアホーン
セイバー フロンティアーズマン ベアホーン
年々近くなっている「熊と人の距離」

昨今は気候変動による木の実の不作などで、山奥では食糧を確保できなくなった熊が人里に下りてくるケースが増えてきました。
世界自然遺産の北海道・知床では車道沿いにもヒグマが出没することから、観光客が乗用車から餌をあげてしまい、人間の食べ物に味をしめてしまう個体が増加していることが問題になっています。登山者が熊の生息域である山中に残飯などを放置してしまい、同様の結果を引き起こすこともあります。
このように以前よりも「熊と人の距離」が近くなっているというのが近年の実態です。万が一の遭遇に備えて、熊スプレーの携行を検討してみてはいかがでしょうか。
熊スプレーに関するおすすめの記事はこちら
▼熊の脅威を知る
▼熊鈴もチェック