重さが気になるテント山行。なにか良い方法ない?
なにかと荷物が多くなりがちなテント山行。「1gでも軽くしたい!」と軽量化を意識しているテントユーザーは少なくないはず。
そんな時はテントを見直してみるのも一つの手です。
「ツェルト」は超軽いけどハードル高め・・・
緊急時用ビバークギア「ツェルト」を使った幕営は、とにかく装備を軽くしたい人の候補のひとつ。でもツェルト泊って、設営が難しかったり使いにくかったりと、ハードルが高いイメージですよね。
かと言って、テントは快適だけど重さが気になるところ・・・
そんなテントとツェルト、両者の特徴を持ったテントが登場しました!
それがこちら。
<ファイントラック>の異彩を放つ新作テントが気になる!
「遊び手=創り手」の理念のもと、徹底したこだわりの製品を世に送る国産メーカー<ファイントラック>。
同社から2020年春に登場した山岳テントが、今回ご紹介する”カミナモノポール”です。
テントとツェルトの”機能面のすき間”を埋めるテント
気になって仕方がないので、実際に使ってみた!
ということで、”カミナモノポール”を実際に使用してみました!
二人用モデルの「カミナモノポール2」を複数の場所で使ってみた感想を「持ち運びやすさ」「設営のしやすさ」「過ごしやすさ」などに着目して、ご紹介したいと思います。
それではレビュースタート!
超軽量・コンパクトながらも高い剛性を実現
まずは持ち運びやすさから見ていきましょう。
各モデルの収納サイズは以下の通り。
総重量はなんと1kg以下!さらに驚くべきはオールシーズン対応(※1)だと言うこと。
超軽量ながらも、風速25~30mの耐風テストをクリアしています。
その秘密は、使用している生地と独自製法にあります。
軽量&高強度の国産ナイロンリップストップ生地に加え、力がかかる辺に「イザナス(旧名:ダイニーマ)(※2)テープ」を縫い込む「テンションスリングシステム」を採用。高次元で軽さと強度の両立を実現しました。
装備全体を見直すことで、超軽量な山行が可能!
収納状態はとてもコンパクト。
「これなら30ℓ程度のザックに収まるかも?」と思い、1泊2日の夏山想定でパッキングしてみました。
荷物は必要最低限に絞りましたが、問題なく収まるでしょうか?
結果、無理なくパッキング完了!これでもまだまだ余裕がある感じで、携行性は申し分なさそうです。
テント以外の装備の軽量化も必須ですが、40ℓ程度のザックで2〜3日の夏山縦走も対応できそうなコンパクト性です。
パッキングで力を発揮したのがスタッフバッグの形状。ファイントラックではテント類に弁当箱型の収納袋を採用しています。
この形がとても便利で、荷物の間に無駄なくフィットしてくれるような印象。丸型の袋に比べてかさ張りにくいのも特徴です。
無駄のない設計が可能にする高速設営
収納袋から中身を取り出しました。
テント本体・ガイライン、ポール1本、ペグ9本が基本セット。後ほどご紹介しますが、ここから使用する道具を減らし、軽量化されたアレンジ設営も可能です。
それでは設営してみましょう!
まずはテントの四隅をペグダウン。
ポールをスリーブに通していきます。
ポールはアウトドアチェア「ヘリノックス」の親会社でもある、世界的に有名なアルミポールメーカーの「DAC」製。
そのままの流れで、グロメットにポールの末端を挿入します。あまり力を必要せず差し込めるので女性でも安心。
もう一方のポールエンドは袋状になっており、両側を行き来する手間はありません。
四隅にあるガイラインをペグダウンし、張りを調整します。
入口をペグダウンして完成。
立て方がわかれば3分ほどの短時間で設営可能で、一般的なテントやツェルトと比べてもかなり早い!
手順を省略化させることで、圧倒的な設営スピードを実現しているようです。
細かい設計も秀逸!
テントを張る仕組みがよく考えられていました。ガイラインに付属している黒い輪にペグダウンすることで、1本のヒモで隅と中間部の2点を同時にテンションがかかります。一石二鳥の機能ですね!
この「自在金具」も特徴的。
通常の自在金具よりもしっかりロックされている印象で安心感があります。蛍光素材なので、夜になると光るのも◎!
シングルウォールとは思えない機能が盛りだくさん!
続いてはテント内の過ごしやすさの確認。サイズは以下のようになっています。
数値上は一般的な山岳テントと変わらないサイズ。
しかしワンポールの非対称な形状なので、どれほどの居住空間があるか気になるところ。
さっそくテントへ入ってみましょう。
“ある”と”ない”では大違い!シングルウォールなのに前室付き!
ファスナーを開けるとシングルウォールテントとしては珍しい”前室”の登場!
前室の広さは必要最低限。これだけでも荒天時の安心感が全く違います。
調理するには若干狭いので、火気類の使用は極力控えた方が良さそうです。
出入り口には大型のメッシュ窓付き。テント内の換気も問題なさそうです。
室内のこと
一般的な二人用テントと遜色ない居住空間で、1人で使うには十分すぎるほど。2人で使う場合も最低限のスペースは確保できそうです。
室内は明るく開放的な印象。
天井も充分な高さがあります。中腰でパッキングをしても頭があたることはなく、快適に作業ができました。
奥側の背面部にメッシュ網付きのベンチレーションが備わっています。
小物収納用のポケットはありませんでした。
天井にはライトなどを吊り下げるループ付き。ツェルトにはループがない物も多いので、あるとありがたい機能です。
唯一気になったのが底面部分。いくら耐久性の高い素材とは言え、石などで穴が空いてしまいそうなほど薄いです。設営時は小石を退かしたり、オプションのグランドシート(フットプリント)を積極的に活用した方が安心できそうです。
撥水性と結露について
標高900mの自宅付近で一夜を過ごし、結露状況を確認してみました。一般的にシングルウォールのテントは”結露が激しい”とされていますが、どんな結果になるでしょうか。
翌朝、テント内は全くと言っていいほど結露がありませんでした。とは言え、結露状況は標高や気温・換気によって全く異なるため、この検証だけでは判断が難しいところ。
メーカーもこのように発表しています。
カミナモノポールは透湿性の高い素材を使用しておりますが、構造上ダブルウォールテントのインナーと比較すると程度の差はあれ結露は発生します。水を含みにくい素材ですので、こまめにふき取るなどの対応で、テント内の濡れを軽減できます。
拭き取り用の速乾タオルなどを用意しておくと良さそうですね!
撥水状況も確認してみました。表面の多孔質コーティングがしっかりと水滴を弾いているのがわかります。しかし長時間濡れると少なからずテント内にも影響が出てくることが考えられます。
こういった部分に関しては、ダブルウォールテントの方が優位と言えます。
【緊急時やさらなる軽量化に!】”カミナモノポール”のアレンジ設営法
いくつかの設営パターンがあるのもこのテントならではの魅力。最小限の道具で設営するため居住性は低くなりますが、軽量を突き詰めるユーザーには嬉しいポイントです。
3パターンのアレンジ設営をご紹介します。
【パターン1】最小限のペグとガイラインを使った設営方法
使用ギア:テント、ポール、ペグ3本、ガイライン2本
ポールをスリーブに差し込み、ポールの対角線上の2点のガイラインと前室をペグダウンして完成です。
テント内はかなりしっかりしている印象!居住空間は申し分ありません。
ただし耐風性は落ちてしまうので、使用シーンを選ぶ必要がありそうです。
【パターン2】トレッキングポールを使った設営方法
使用ギア:テント、トレッキングポール2本、ペグ5本、ガイライン2本
2本のトレッキングポールをテント頂点のループに差し込み、四隅のガイラインと前室をペグダウンして完成です。
外見は狭そうですが、室内は思ったよりも広い印象。とはいえ、この使い方をメインにするのであれば、ツェルトを選んだ方が有効のように感じます。あくまでも”ビバーク時の使い方”という認識が良さそうです。
【パターン3】ロープで設営
使用ギア:テント、ロープ、ペグ5本、ガイライン2本
テントの頂点にロープを通し、ロープを固定。四隅のガイラインと前室をペグダウンして完成です。
【パターン2】と同等の広さですが、ロープで繋がれている分の安心感があります。快適とは言い難いので、この設営方法も”ビバーク時の使い方”として認識しておいた方が良さそうです。
テントの新しい選択肢になること間違いなし!
“カミナモノポール”は初心者向けとは言いがたいのですが、テント山行に慣れた人が、セカンドテントとして候補にすべき位置付けだと感じました。
特に以下のようなテントユーザーにはピッタリだと思います!
「ツェルトのような軽量・コンパクト性」と「ダブルウォールテントのような高い居住性」、さらには「冬山にも適応する剛性」。まさにテントとツェルトの両方のメリットを持った”カミナモノポール”は、ハードユースに対応する革新的なテント。
セカンドテントとして、自信を持っておすすめできる製品です。
紹介した商品はこちら
ファイントラック カミナモノポール1
ファイントラック カミナモノポール2
【finetrack】カミナモノポール