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集団で襲われる!?ゴマ粒のように小さな吸血生物「ヌカカ」の対策と応急処置

集団で襲われる!?ゴマ粒のように小さな吸血生物「ヌカカ」の対策と応急処置

とても微小な吸血生物のヌカカ、時には衣類の中に潜り込んで被害をもたらすこともあるんです。刺されてから時間差でかゆみや腫れが出現し、集団に襲われることもあるので注意が必要。今回は、この小さな厄介者についての対策や応急処置をご紹介していきます。

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目次

アイキャッチ画像出典:photolibrary

小さな吸血生物「ヌカカ」とは

ヌカカ
出典:Wikipedia(ヌカカ)

ヌカカは、「糠(ぬか)のように小さな蚊」というネーミングからも分かるように、糠のごとく微細な昆虫で、その体長はわずか1mm〜2mm程度。網戸もすり抜ける小さなサイズで、羽を畳めば服の隙間からも侵入することができます。
全世界では5,000種以上が生息し、国内のヌカカは40種類ほど。ヌカカの全てが吸血性ではありませんが、吸血の刺咬被害によって、日常生活や観光産業に影響を出すこともあります。また、単体よりも集団で行動することが多い点も特徴です。

小さくてもしっかり吸血

ヌカカ
出典:photolibrary

ニワトリヌカカ、シナノヌカカ、イソヌカカなどが吸血するヌカカとして知られています。吸血するのはメスのみとされ、皮膚に咬みついて傷をつけ、そこから出た血を吸うのです。
また、ヌカカは病原体を媒介する危険性もあり、中南米で熱性疾患を発症したケースや、日本においても家畜に対して感染症を引き起こした事例が知られています。ただし、国内では蚊に比べて重大な疾病との関係が少なく、ヌカカの研究はまだ蚊のように進んではいません。

刺されると猛烈なかゆみ、症状について

集団で行動するヌカカ

羽虫集団イメージ
出典:PIXTA(羽虫の集団イメージ)

ヌカカは蚊と異なり、単独よりも集団で発生する習性があります。集団のヌカカに襲われた場合は、一度に数十ヶ所を刺されることもあるので注意が必要です。刺された患部は赤くなり皮疹を伴います。
また、小さなヌカカは網戸を簡単にすり抜けることが可能。時には衣類の中に潜り込み、皮膚を刺す被害が出ることもある厄介な虫です。

一定期間後に症状が発生

虫刺されイメージ
出典:PIXTA(複数箇所の虫刺されイメージ)

ヌカカに刺されると、まったく気づかないか、チクチクとした軽い痛みを感じることがあります。
刺された直後には小さな出血班が見られますが、それ以外の症状はほとんどありません。多くは遅れて症状が現れることが多いため、翌日以降になって強いかゆみに襲われます。

体質にもよりますが、患部が熱を持ったり水ぶくれになる例も報告されるほか、1週間程度から酷いと1ヶ月近く症状が持続することも。何ヵ所も刺された場合はかゆみも広範囲に及ぶため、我慢できずに掻きむしり、悪化させて長引かせてしまうケースもあります。

基本的に命に関わる事態にはなりませんが、複数ヶ所刺されるなど症状がひどい場合には、無理せず早めに受診することをおすすめします。

 

ヌカカの生息場所と活動時期

遭遇しやすい場所

ヌカカの発生が多い川沿い
出典:PIXTA

ヌカカは全国各地の森林内や渓流沿い、鶏舎周辺の水田周辺、海岸沿いなどで多く発生します。特に水辺に多く生息する理由は、水辺で産卵し幼虫の期間は泥土の中で成長するためです。
新潟の研究例では、温泉の廃湯を川へ流すために設けられた廃湯溝で繁殖していた例がありました。

活動時期と遭遇しやすい時間帯

虫刺され
出典:PIXTA

ヌカカが活発に行動し始めるのは、早ければ4月下旬ごろから。特に、6月の梅雨時から9月頃が最も活動が盛んになり、11月中旬以降になると終息へと向かいます。ちなみに発生初期や終息期は、他の時期に比べ吸血率が低い傾向があります。
ちなみにヌカカに遭遇しやすい時間帯は、特に朝と夕方。かつて新潟で調査された例では、日中よりも日没の方が出現が多い傾向で、夜間にも人家内へ侵入し刺咬被害が確認されています。

 

ヌカカに刺されないための対策

登山時にできるヌカカへの対策をお伝えします。事前にいくつか対策する事で、ヌカカを避けられる可能性が期待できるので、ぜひ実践してみてください。

虫除けスプレーで撃退

ヌカカ対策として、虫除けスプレー には一定の効果が期待できます。ヌカカがいそうな場所に行く前に、事前にしっかり服全体や露出している肌にスプレーしましょう。その際は、虫除け成分「ディート10%」や「イカリジン15%」配合されているものを選ぶと良いでしょう。

ハッカ油スプレーをこまめに

ハエの仲間の忌避に、ハッカ油スプレー を用いるやり方があります。ヌカカに対する忌避効果はまだはっきりしていませんが、サシバエ類の対策においては一定の効果が認められた例があるので、ハッカ油スプレーを登山で使ってみるのもありです!自作のハッカ油だと気分もまた一味違うかもしれません。

<ハッカ油スプレー作り方>
・ハッカ油(3〜5滴程度)
・精製水(90mL)
・無水エタノール(10mL)
・スプレー容器
*最初にエタノールとハッカ油を容器に入れて混ぜ、馴染ませてから精製水を加えてください。
*ハッカ油(エッセンシャルオイル)は刺激が強いので、少量から始めて調整してください。

肌の露出を避ける服装

出典:PIXTA

登山する際は、できるだけ肌の露出が少ない長袖や長ズボンをおすすめします。小さなヌカカは、衣類の隙間をすり抜けて侵入する恐れもあるので、首回りにタオルを巻いたり、頭髪に入らないように帽子 をかぶるのもいいでしょう。
また、目の細かいアームカバー をつけるのもひとつのアイデアです。

 

ヌカカに刺された時の応急処置

対策をしていても、登山中にヌカカに刺されてしまうこともあるかもしれません。遅れて気づくことも多いかもしれませんが、気づいたその時点からでも応急処置を試みましょう。症状がひどい場合は無理せず病院へ。

①患部を水洗いする

出典:PIXTA

ヌカカに刺されてしまった場合は、患部を流水でよく洗い流しましょう。水洗いは冷やす効果も期待できるので、数十秒でさっと終わらせるのではなく、時間をかけ患部を摘みながら絞り出すように洗うのが効果的です。患部は清潔にして、強く擦ったり掻きむしることのないようにしましょう。

②患部を冷やす

出典:PIXTA

ヌカカに刺されると、時間経過と共に腫れやかゆみが出てきます。患部をよく洗った後、保冷剤などで冷やすことで炎症やかゆみを抑えることが期待できます。登山時で冷やすものがない時は、流水に患部をしばらくつけて冷却することも有効。街中では、自動販売機で買った冷たい缶ジュースで冷やすという方法もあります。

③抗ヒスタミン薬を塗る

出典:PIXTA

冷やしたあとは、抗ヒスタミン薬を患部に塗りましょう。抗炎症成分入りのステロイド配合薬を塗布することで、症状の緩和が期待できます。

④症状が重い場合は病院を受診

出典:PIXTA

これらの応急処置を行っても、かゆみや炎症などの症状が重く辛い場合は、無理せずに医療機関を受診しましょう。1、2ヶ所なら自宅で様子をみるケースもありますが、数ヶ所以上刺されている場合は、特にかゆみなどの症状に悩まされることも多くなるので、受診することをおすすめします。

ヌカカ対策をして登山を楽しもう

虫除けスプレー
出典:PIXTA

とっても小さなヌカカですが、刺されると後がとても大変です。その場では症状が出なくても、遅れてしつこいかゆみがやってくるので、帰宅してからも油断はできません。登山中はできるだけの対策をして、ヌカカに刺されないようにしましょう。

今回教えてくれた方

\教えてくれた専門家/
セルズ研究所 西海氏
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏

 

神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍にすごく危険な毒せいぶつ図鑑(世界文化社)。
著書に、身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本(明日香出版社)など。

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