「残雪期」って聞くと、冬の雪山より簡単そうだと思った人はヤバイかも・・・
いよいよやってくる春山のシーズン。「厳冬期」は無理でも、「残雪期」なら自分にも登れるかも?今年こそ挑戦したい……なんて思っている方もいるでしょう。でも、実は簡単そうなイメージの春山にもリスクはたくさん。特に残雪期の雪山で見られる「全層雪崩」には注意が必要です。
2023/04/18 更新
監修者
社団法人日本アルパインガイド協会認定 アスピラントガイド
山田祐士
社団法人日本アルパインガイド協会認定 アスピラントガイド
1978年、北海道生まれ。
高校山岳部に入部してから現在まで、20年以上に渡って山登りを続けています。
大学に入ってからは、アルパインクライミングやフリークライミングに没頭していました。
冬の谷川岳や穂高が好きなフィールドです。
谷川一ノ倉沢や幽ノ沢、穂高のバリエーションルートのガイドが最も得意です。
また、海外登山も好きで、マッターホルンなどの登頂経験もあります。
趣味は山で淹れる珈琲です。皆さまに最新の登山情報をお送りするべく、日々勉強をしています。
山田祐士のプロフィール
編集者
YAMA HACK編集部
月間350万人が訪れる日本最大級の登山メディア『YAMA HACK』の運営&記事編集担当。山や登山に関する幅広い情報(登山用品、山の情報、山ごはん、登山知識、最新ニュースなど)を専門家や読者の皆さんと協力しながら日々発信しています。
登山者が「安全に」「自分らしく」山や自然を楽しむサポートをするため、登山、トレイルランニング、ボルダリングなどさまざまなアクティビティに挑戦しています。
YAMA HACK編集部のプロフィール
制作者
naot
子供の頃から両親と山に登るのが好きでした。転勤族のため、色々な場所の山に登り、美味しいものを探す日々。今は北海道の山々を歩き回っています!
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アイキャッチ画像出典:PIXTA
「残雪期」って冬山より楽そうだと思ってない?

出典:PIXTA(残雪期の北アルプス爺ヶ岳)
いよいよ春山シーズンの到来ですね。「冬の雪山」と聞くと、上級者の登山というイメージで挑戦できなかった方も「春だから暖かそうだし、残雪期なら雪も少なくて安全そう」と思っているのではないでしょうか?
残雪期は危なくない!というのは違います

出典:PIXTA
たしかに冬期(12月~2月)の雪山は、雪の量も悪天候も多いです。しかし春の残雪期の山には、冬の雪山と違った危険も潜んでいます。
降雪量は冬期に比べると減少傾向ですが、雪山の危険度は「雪の降る量」だけではないんです……。
「暖かい」ということは、良いことばかりじゃない・・・

出典:PIXTA
冬の雪山の寒さに比べると、徐々に暖かくなる春は過ごしやすそうなイメージですが……何が問題なのでしょうか?
暖かい=安全 ではない!

出典:PIXTA
確かに寒いということは、体温の低下に直結するため危険です。気温が上がれば、寒くなくなり快適ですよね。
しかし、反対に暖かいと「雪が溶ける」というリスクが生まれます。では、雪が溶けるとどんなリスクにつながるのでしょうか?
恐ろしすぎる全層雪崩!

作成:emi
雪崩には種類があり、雪崩が発生した層によって「表層雪崩」と「全層雪崩」に分けられます。特に3月など、気温が暖かくなり始める春先に怖いのが威力が大きい全層雪崩。
雪解け水が流れることなどにより、地表面から積雪全体が滑り落ちます。春の雪は水分を多く含むため重く、大規模になりやすいためその威力は相当なもの。表層雪崩よりスピードは速くありませんが、それでも時速40~80kmとも言われており、逃げ切るのは不可能でしょう。
実際に痛ましい雪崩事故も

出典:PIXTA(画像はイメージです)
1992年5月には、北アルプス白馬岳大雪渓で全層雪崩が発生。登山者2名のが埋没して死亡、1人が負傷するという痛ましい事故も起きています。この雪崩の規模は幅約80m、長さ約3kmに達する大きなものでした。
山岳ガイドに雪崩をさける方法を聞いてみた