“スタッキング”が登山の快適さを左右する!?
大きさが限られているバックパックに『どんなものを・どのように収納するか』というのは登山者の永遠のテーマ。中でもばらけがちな山メシ調理器具の収納は、頭を悩ませる1つのポイントです。
できるだけコンパクトにぴったり収め、美しく!
「クッカーとストーブ、そしてカトラリーなんて、大してかさばるものじゃないしどんな組み合わせでもいいじゃない!」
そう思う方もいるかもしれません。しかしハイクの快適さを左右するパッキング(荷物を詰めること)は、小さな道具の組み合わせ=スタッキングから始まっているといえます。
調理道具はまとめて収納できるので、忘れ物も減るでしょう。だからこそ、スタッキングにはこだわりたいのです。
クッカーやストーブは目的によってさまざま!
スタッキングを考えるにあたって、
・自分の目的に合わせたクッカーを先に選ぶ
・火力を優先してストーブを選ぶ
・とにかく軽量コンパクトにこだわる
などあらゆる条件が想定されます。しかし「そんなことで悩んでいる暇なんてない!」、そう思う方はストーブとクッカーが最初から美しく組み合わさった低燃費ストーブシステムの『ジェットボイル』を選べば解決です!
でも『ジェットボイル』は湯を沸かすことに長けていて便利ですが、今回紹介するスタッキング例と比べると、少しだけ重いんです。
軽量コンパクトを最優先するなら、アルコールストーブがあります。カトラリー、風防等を収めるクッカーやクッカー代わりに使うマグカップの組み合わせに、1g単位で試行錯誤する猛者達もいます。しかしアルコールストーブの火力はガスストーブに比べて弱く、湯沸かしだけでなく、調理もしようとするとちょっと時間が掛かるのです。
そこで今回は、いいとこ取りの欲張りな組み合わせを徹底的に模索! 多くのハイカーにオススメできる『軽さを求めつつ、素早く湯を沸かしたり、調理もできるソロ用クッカーと小型ガスストーブのコンパクトで美しい組み合わせ』を紹介しようと思います。
110ガス缶も収納できるオールインワンセットで、192.4g
カップ麺とお茶に必要な量の湯(700ml程)を一度で沸かせるクッカーに、ガス缶・ストーブ・カトラリー、さらにカップを収納できる組み合わせはないか? 900mlのクッカーになれば可能なものがほとんどですが、750ml以下だとガス缶とストーブだけでも収納できるものが限られ、カップは金属製だとダメ。カトラリーは、折り畳めるフォールディングタイプでも長いものが多い・・・。
ありました!オールインワンの最軽量
クッカーの高さとカトラリーの収納長がキモ
しかもガス缶を逆さに入れれば缶の底部の凹みに、折りたたんだ長さ8.9㎝のGSI/フォールディングスポーク収まります。そしてカップは、あらゆるスタッキングで役立ってくれるウィルドゥ/フォールダーカップ。これ、小型ストーブを収納すればガタつきを抑えるカバーになるだろうと気が付いた時は、ガッツポーズでした!
ストーブは軽さよりも収納サイズのコンパクトさが重要
今回のソロ用オールインワンクッカーセットを可能にしてくれたのは、プリムス/115フェムトストーブです。炎が真っ直ぐ伸びる集中炎タイプのストーブは、バーナーヘッドがとてもコンパクト。ただ、クッカーがチタン製なので、集中炎タイプのストーブだと鍋底が焦げ付きやすいので、調理はせず、湯沸かし専用と考えてラーメンをつくるくらいまで。
それでも『ジェットボイル』最軽量モデルが400gに対し、このセットはカップもスタッキングして192.4g(※どちらもガス缶の重さは除いたもの)。湯沸かしまでの1~2分の差か、重さ200gの差か。どちらを選ぶかはアナタ次第!
使用したアイテム
エバニュー チタン パスタもクッカーS RED
エバニューのチタン製品の詳細はコチラ
プリムス 115フェムトストーブ
GSI フォールディングスポーク
ウィルドゥ フォールダーカップ
軽さではなくコンパクトさを目指した、236g
エバニューのチタンカップ400を使ってみたかった
エバニュー/チタンカップ400 FD REDというアイテムがあります。容量は400mlとなっているけれど、実際に沸かせるのは350ml程。それでもカップ麺に必要な湯を沸かせ、リフィル麺もこのカップのフタにできるエバニュー/マルチディッシュを使えばつくれます。
カップとフタで63gと軽いので、ウルトラライトハイカーにも愛用者が多いもの。これで煮炊きをしていたら、かなりできるハイカーに見えます。
でも快適さも目指したいところ。これにスタッキング可能なカップはないかと探したところ、見つかりました!
エバニュー同様にチタン製品で人気のベルモントのチタンシェラカップ深型250フォールドハンドル(メモリ付)です。
少し斜めになりますが、マルチディッシュのフタも閉められます。エバニューのカップで湯を沸かし、フリーズドライの白米の袋に湯を180ml、フリーズドライのカレーをベルモントのカップに入れ湯を150ml、冷めないようにマルチディッシュでフタができ、ストーブに掛けて温め直しも可能です。カトラリーは美しいデザインのバラデオを選んでみました!
使用したアイテム
エバニュー|チタンカップ400 FD RED
容量:400ml
サイズ:直径9.5×深さ5.8cm
重量:50g
エバニュー マルチディッシュ
エバニューのチタン製品の詳細はコチラ
ベルモント BM-329 チタンシェラカップ深型250フォールドハンドル(メモリ付)
ベルモントの製品の詳細はコチラ
プリムス 115フェムトストーブ
バラデオ|カトラリーセット アルティメイト
収納サイズ:9.2×3.4×1.6㎝
重量:59g
湯沸かしだけならケトルがいいんです! 309.4g
カップ麺とおにぎりとハーブティーがデイハイクの定番ランチの筆者は、湯沸かしにしかクッカーを使わないことがほとんど。ある時「ゴトクの上で安定感のない深型クッカーを使う意味ってあるのだろうか?」、ふとそう思い、使い始めたのがケトルです。
直径が大きいのでストーブの上で安定し、注ぎ口が備わっているのでカップに湯が注ぎやすい。収納サイズがちょっと大きなストーブも収納可能。クッカーでなくても問題ない、いやむしろ「これがいい」と気が付くのに随分時間が掛かりました。
GSI/エクストリーム ティーケトルは、容量1ℓで170g。フタの直径が大きいので、ベルモントのチタンシェラカップ深型250を110缶に被せて収納できます。加えてストーブもカトラリーも入るオールインワンのセットです。
重さは309.4g。ハイク時にカップがカタカタと鳴るのが気になったら、手ぬぐいやマイクロファイバーのタオルを緩衝材として入れてください。ストーブにケトルを掛けている風景はとても和め、写真に撮ってもかわいらしいです。
使用したアイテム
バラデオ|カトラリーセット アルティメイト
収納サイズ:9.2×3.4×1.6㎝
重量:59g
GSI エクストリーム ティーケトル
GSIの製品の詳細はコチラ
ベルモント BM-329 チタンシェラカップ深型250フォールドハンドル(メモリ付)
ベルモントの製品の詳細はコチラ
GSI フォールディングスポーク
ソト マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター SOD-310
焦げにくいフライパン付きクッカーセットが、280g
ベルモントの美しいクッカーは、長く使いたい逸品!
チタン製クッカーは軽いけれど、調理をするとなると炎が当たっている部分が焦げつきやすいのが難点。とはいえ、ソロ用のチタン製クッカーで、焦げ付き防止加工がされているフライパンがセットになっているものって今シーズンはほとんどありません。
ようやく見つけたのが、ベルモント/BM-271 チタンスタッキングクッカー650FCです。容量650mlのクッカーと直径約12㎝のフッ素コーティングされたフライパンになるフタのセットで、重量156g。クッカーは直径が大きめで安定感もあり、使いやすいです。
ただしフッ素コーティングされているとはいえ、フライパンも焦げ付かない訳ではありません。そのためストーブは拡散型の炎のソト/マイクロレギュレーターストーブ SOD-300Sをチョイス。このストーブもコンパクトなのでウィルドゥのフォールダーカップに収まります。カトラリーは、シリコン製でコーティングを傷つけにくいユニフレーム/カラカト。110缶を逆さに入れれば、まさにピッタリ、美しくスタッキングできます。重量280g。
フリーズドライご飯、スープ、炒め物、蒸し物をこの軽さでつくれる贅沢を味わってみてください。
使用したアイテム
ベルモント BM-271 チタンスタッキングクッカー650FC(ケース付)
ベルモントの製品の詳細はこちら
ソト マイクロレギュレーターストーブ SOD-300S
ユニフレーム カラカト
ウィルドゥ フォールダーカップ
熱効率のよさを組み合わせて、484g
ダグの蛇腹状リングを装備したHEAT-Ⅰを活用してみる
ダグ/HEAT-Ⅰという、底部に蛇腹状リングを装備してストーブの熱を効率的に利用する、容量1ℓのクッカーをさらに効率的に使えるようできないかと思い、GSI/ハルライト ミニマリストという保温カバー付きのクッカーを組み合わせてみました。ストーブはダグ/HEAT-Ⅰと組み合わせて使用するEPI/QUOストーブです。
GSIのハルライト ミニマリストは、110缶、ストーブ、カトラリー、グリッパーを収納できるクッカーなので、それをただダグのHEAT-Ⅰに収納しただけ。HEAT-Ⅰで温めた湯を使ってハルライト ミニマリストでフリーズドライのご飯類をつくれば、袋のままでつくるよりも効率的です。残った湯には具材を入れてスープや鍋にすれば、十分な食事にありつけます。
普通のクッカーだと冷めてしまうところを、冷まさずに味わうための総重量484g。2つのクッカー装備で、この重さなら十分に軽いです。
使用したアイテム
ダグ HEAT-Ⅰ
GSI ハルライト ミニマリスト
EPI QUO STOVE
ソロ~2人の料理をしっかりつくる、521g
トランギア/ツンドラ3ミニは、どんな料理にも対応
浅型クッカーでスタッキングできるモデルとして、愛用者の多いトランギア。筆者は別モデルを20年近く使用。2~3人での山行で使用してきました。焦げ付きにくいノンスティック加工がされ、鍋と別体のハンドルも効率的です。大きめのフライパンは、料理の幅を広げてくれます。
今回はオールインワンを目指して、ガス缶もクッカー内に収納していますが、これを入れなければ、調理の安定感が増す分離型ストーブ本体を収納できます。今回選んだストーブはソト/アミカスです。コスパに優れコンパクトなので、スタッキングを考える際にかなり重宝するストーブです。カトラリーはシリコン製のユニフレーム/カラカト。料理を楽しむハイクにぴったりのセットです。
使用したアイテム
トランギア ツンドラ3ミニ ブラックバージョン
ソト アミカス SOD-320
ユニフレーム カラカト
山クッカー角形に110缶を収納できて、532g
そのままでは110缶が入らないのです・・・。
ごはんが炊けて、フッ素樹脂加工のフライパンで炒め物ができて、角形なのでインスタントラーメンを割らずに茹でることができるユニフレーム/山クッカー角形3。同社が扱うストーブがカセットガスのみだからなのか、OD缶の110サイズを収納しようとすると微妙にフタが浮いてしまうのが悩みでした。
でも小クッカーのフタのツマミがネジ式で取り外せることに気が付き、ツマミを外して110缶をスタッキングしてみると、小鍋のフタはやや浮きくらい、外側の大鍋はしっかり閉じることがわかりました!
山クッカー角形3は分離型ストーブも収納できますが、その際は110缶は収まりません。110ガス缶、ストーブ、カトラリーのオールインワンのセットをこのクッカーでつくるなら、小鍋のツマミを外してスタッキングしてください。そうすれば山クッカーは真の意味で山クッカーとして活躍してくれるでしょう!
使用したクッカー
ユニフレーム 山クッカー 角形3
番外編:アルミ食器とエスビットのシンデレラフィット!
これで1週間の山旅ができました
小型ガスストーブではなく、固形燃料を使用するストーブ『エスビット』は、サブストーブとして使えるもの。ガスストーブと比べれば火力は落ちますが、ゆっくりでも調理は可能です。アルミ箔などで風防をつくれば火力も安定します。
そのエスビットがシンデレラフィットするのが、ユニフレーム/アルミ食器 ケースセット3です。他メーカーでもアルミやチタンの食器が出ていますが、フィットするのはコレのみ。また食器なのでクッカーとして使用する場合は自己責任でということになります。筆者はこの組み合わせで、1週間の島&山旅を経験しました。燃料込みで359g、これにカトラリーを追加。
ちなみにバーゴ/ステンレスチョップスティックがこれまたシンデレラフィットします。ゆっくりと山で時間を過ごすなら、この組み合わせ、かなりアリだと思います!
使用したアイテム
ユニフレーム アルミ食器 ケースセット3
エスビット ポケットストーブ・スタンダード
バーゴ ステンレスチョップスティック