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北アルプス屈指の急登に挑む!烏帽子岳(えぼしだけ)

標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
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2628m | 長野県大町市・富山県富山市 | 北アルプス | 16.2℃ | 5.6℃ |
烏帽子岳は北アルプスのほぼ中央に位置する山。花崗岩の白砂とハイマツの緑のコントラストが美しい日本二百名山です。山名の由来ともなっている烏帽子形のオベリスクがそそり立つ特徴的な姿をしています。
日本三大急登のひとつ、ブナ立尾根を登る!

登山口から山頂までは、黒戸尾根・西黒尾根と並んで日本三大急登といわれる「ブナ立尾根」を登ります。4時間ほどの急登が続きますがよく整備されていて難所はないので、ただひたすらに頑張るのみ。稜線に出ると北アルプスの大展望が待っています。
「裏銀座縦走コース」の起点

裏銀座縦走コースとは、ブナ立尾根の入り口から烏帽子岳、野口五郎岳、鷲羽岳、双六岳から西鎌尾根を通って槍ヶ岳に至るコースのこと。烏帽子岳はその起点として登られることが多く、ロングコースのため山頂近くにある小屋は重要な宿泊地にもなっています。
烏帽子岳登山の難易度や注意する点は?
「信州 山のグレーディング」では、4C(1泊以上が適当・地図読み能力、ハシゴ・くさり場などを通過できる身体能力が必要)とされているコースです。健脚者なら日帰りも可能ではないですが、自分のレベルに合った山行計画を立ててください。
急登中に水場なし!十分な水を持っていこう
七倉ダムから烏帽子小屋までは急登を5時間半近くかけて登りますが、水場は不動沢の先にある序盤の1か所のみ。特に夏場は水が足りなくならないよう、十分な水を確保した上で登りましょう。
下山時にタクシー利用の際は10円玉を忘れずに!

行きは七倉ダムに許可タクシーが待機していますが、帰りの高瀬ダムでは待機していないこともあります。
高瀬ダム付近は携帯電話の電波状況がよくないため、ダム管理所前のコイン式公衆電話より迎車を依頼する必要があります。その場合に使用する「小銭」を忘れないように注意しましょう。
烏帽子岳の天気と地図をチェック
烏帽子岳に行く前に現地の天気をこちらでチェック!また、事前に地図を用意してルートを確認してください。
烏帽子岳のふもと(大町市)の10日間天気
日付 | 03月28日 (金) | 03月29日 (土) | 03月30日 (日) | 03月31日 (月) | 04月01日 (火) | 04月02日 (水) | 04月03日 (木) | 04月04日 (金) | 04月05日 (土) | 04月06日 (日) |
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天気 | ![]() 曇 | ![]() 曇一時雪 | ![]() 晴時々曇 | ![]() 晴時々曇 | ![]() 曇一時雨 | ![]() 曇時々晴 | ![]() 晴 | ![]() 曇時々晴 | ![]() 晴時々曇 | ![]() 曇時々雨 |
気温 (℃) | 16 9 | 9 1 | 6 -3 | 8 -6 | 5 0 | 13 2 | 14 0 | 12 0 | 18 -1 | 15 5 |
降水 確率 | 30% | 60% | 40% | 20% | 70% | 40% | 20% | 40% | 20% | 70% |
データ提供元:日本気象協会
烏帽子岳の登山指数
日付 | 03月29日 (土) | 03月30日 (日) | 03月31日 (月) | 04月01日 (火) | 04月02日 (水) |
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登山 指数 |
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登山指数の留意点
登山をするための快適さを、山頂や山麓の気象条件から、気象学的知見を用いて登山指数A~Cで表現をしています。降水量、風速、雲量などを総合的に考慮し、気象条件を独自計算したものです。
ただし、以下のリスクは含まれておりません。
- 雷の発生の可能性
- 前日の天気による道のぬかるみ
- 局地的大雨
- 土砂災害の発生の可能性
- 雪崩の発生の可能性
- 噴火の可能性
- 積雪の有無
- 濃霧
- 低温または高温
- 虫やヒルなどの発生状況
山の天気は大きく変わりやすいため、登山指数はあくまで目安としてご利用頂き、最新の気象データや天気図、各登山道情報をご確認ください。
なお、本情報に基づいた行為において発生したいかなる人物の負傷・死亡、所有物の損失・損害に対する全ての求償の責は負いかねます。ご了承下さい。
データ提供元:日本気象株式会社
烏帽子岳周辺の山と高原地図
昭文社 山と高原地図 鹿島槍・五竜岳
ブナ立尾根往復コース|日本三大急登を登った先に広がるパノラマ
最高点の標高: 2572 m
最低点の標高: 1256 m
累積標高(上り): 2490 m
累積標高(下り): -2490 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:約10時間25分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
ブナ立尾根を登り、烏帽子岳を往復するコースです。難所はありませんが、急登であることや山小屋まで水の補給ができないため、十分注意して登りましょう。
高瀬ダムまでの道路は東京電力の管理用道路となり、マイカー乗り入れは七倉ダムまでとなります。七倉ダムにてタクシーに乗り換えて高瀬ダムへ向かいます。タクシーで15分ほど、徒歩だと1時間半の距離です。

高瀬ダムの堰堤から不動沢トンネルを進みましょう。吊り橋を渡ってからしばらく河原を歩き、丸太の橋を渡ります。

広い河原の右岸を上流へ進むとブナ立尾根の登り口があります。登山道には現在地の12番から烏帽子小屋の0番まで番号が付けられているので、目安にしてください。左手が水場です。小屋まで水場はないので、ここで補給してからスタートしましょう。

ブナ立尾根の取り付きからいきなりの急登。パイプで作られた階段が続きます。

その後もジグザグと急登を登っていきますが、よく整備された登山道なので歩きやすく危険個所はありません。9番付近では少し傾斜が緩い箇所もありますが、それでもつらい急登です。6番地点は少し広いスペースがあるので休憩におすすめ。

辛い登りなのでこまめに休憩を取りながら頑張りましょう。先に進むと少しづつ展望が開け、唐沢岳や餓鬼岳、針ノ木岳と蓮華岳も見えてきます。登山道には木の根が多いので転倒には注意して。

5番付近はやや緩やかになる場所もありますが、再びの急登が4番の「三角点」まで続きます。三角点の場所は小スペースがあるので、一息ついてから進みましょう。

三角点から先はやや緩やかに。途中にはタヌキ岩と呼ばれる大岩があり、木のハシゴがかかっています。

3番付近は南沢岳と不動岳の間にできた大崩壊地の脇を歩きます。ロープやハシゴのかけられた急斜面のトラバースがありますが、慎重に歩けば危険ではありません。展望の良い主稜線に上がったら少し下って烏帽子小屋に到着。

小屋から少し樹林帯を進むとすぐに展望が開け、ハイマツと砂礫のコントラストが美しい稜線が目の前に。前方にはニセ烏帽子岳が見えています。周辺はコマクサの群生地になっているのでロープ外に出ないように注意して進みましょう。

ニセ烏帽子岳に登るとようやく烏帽子岳が見えます。オベリスクのそそり立つ山容は、思わず声をあげてしまうほどかっこいい姿。

ニセ烏帽子岳と烏帽子岳との鞍部まで50mほど下り、烏帽子分岐を左手に進みます。烏帽子岳の北側から岩場に取り付き開始。

鎖を頼りに岩壁をトラバースしながら登ります。

幅が10cmほどの狭い岩棚に足をかけながらトラバースする場所は、やや高度感あり。すれ違いや落石には注意して。最後に岩場の割れ目をよじ登ると、烏帽子岳の山頂です。

狭い山頂に立つと、北側には立山方面の展望、南東側には表銀座縦走路と大パノラマが広がっています。

帰りは来た道を戻ります。烏帽子岳直下の岩場と急坂のブナ立尾根は、十分注意して下山してください。
5座縦走の周回ロングコース|上級者向けの渋い山々は達成感も抜群!
最高点の標高: 2599 m
最低点の標高: 1086 m
累積標高(上り): 3673 m
累積標高(下り): -3472 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:約10時間25分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
七倉から七倉岳、船窪岳、不動岳、南沢岳、烏帽子岳の5座を縦走するロングコース。強烈なアップダウンが続き、ハシゴや痩せ尾根など高度感がある箇所も。登山者数も多くないため、上級者向けのコースとなっています。
最低でも1泊以上かかるので、計画に合わせて、船窪小屋や鳥帽子小屋を利用してください。

七倉登山口からスタート。東京電力のゲートを抜けて橋を渡り、トンネル手前で船窪新道登山口へ。

標高140mごとに1番から10番までの看板があり、コメントも書かれているので励みになります。登山道はいきなりの急登で、ところどころハシゴがかけられている場所も。鼻突八丁では丸太のハシゴが連続します。

進むにつれ傾斜はだんだんゆるくなり、天狗の庭を過ぎると気持ちの良い稜線に。夏はお花畑がきれいな場所で、眼下には高瀬ダム、向かう烏帽子岳や続く裏銀座縦走コースの山々が見えてきます。

水平道を少し進むと船窪小屋に到着。小屋から西側斜面をトラバース気味に進んで、分岐を右に5分行くと七倉岳山頂です。

山頂を踏んだ後はいったん分岐まで戻り先へ進みます。分岐を過ぎて下るとテント場が登場。水場もありますが急斜面のため、滑落に注意を。利用の際は気をつけてください。崩壊地帯のピークが2つある痩せ尾根を、アップダウンを繰り返しながら船窪乗越へ下っていきます。

船窪乗越から船窪岳へ登り返し、船窪岳山頂(第1ピーク)からまた下ります。この下りからが当ルートで最も緊張感のある区間で、まずは高度感のある丸太のハシゴで急斜面を降下。続く片側が鋭く切れ落ちた幅30cmほどのナイフリッジは滑落に要注意です。小さなピーク越えたら再びの危険箇所。桟橋やハシゴが連続し、ザレた登山道をトラバースしながら下っていきます。

ロープを頼りに滑りやすい花崗岩の砂地を登り返したら船窪第2ピーク。樹林帯に囲まれて展望はあまりありません。

ここからさらに小さなピークのアップダウンが続いて、体力を消耗します。不動岳山頂直下の岩場には鎖がかかっていますが、難しくはありません。岩場を登り切ると目の前にはなだらかな稜線が。

稜線を進んで不動岳山頂に向かいます。

不動岳からハイマツの中を歩いて下りきると南沢乗越。目指す烏帽子岳が近づいてきます。

アリ地獄のような脆い砂地を登り、崩壊地の脇を歩いて急斜面を登ると南沢岳。広々とした砂地に三角点が設置されています。

南沢岳からハイマツ帯を下って烏帽子田圃に入ると、草原の中に池塘が点在しまるで楽園のような風景。四十八池は夏にお花畑がきれいな場所です。

烏帽子岳分岐からは前項で紹介したコースで烏帽子岳山頂まで登り、烏帽子小屋~ブナ立尾根を下って高瀬ダムでゴールです。
烏帽子岳登山の山小屋情報
烏帽子岳へは基本的に1泊2日での山行がおすすめです。ここでは烏帽子岳周辺で利用できる山小屋を紹介します。
烏帽子小屋

ブナ立尾根を登りつめた稜線上に建つ、1924年創設の歴史ある山小屋。赤牛岳や薬師岳の展望があります。また7月下旬には青いイワギキョウの花が小屋前を彩ります。
七倉山荘

七倉登山口のすぐ前にある小屋で、登山の前泊や後泊に便利。源泉かけ流しの温泉があり、日帰り入浴も利用できます。
船窪小屋

憧れの山小屋として名前のあがる船窪小屋は、北アルプスでも厳しいコースの稜線上に建っているランプの宿。心のこもった食事が評判で、常連客の多い山小屋です。
登山口へのアクセス情報
烏帽子岳登山ルートの起点となる七倉登山口へのアクセスと駐車場情報です。
クルマの場合
長野自動車道「安曇野」IC−国道147号−県道326号−七倉
公共交通の場合
JR大糸線「信濃大町」駅よりタクシーにて七倉登山口
※宿泊とセットの場合のみ利用できる「葛温泉・七倉温泉乗り合いタクシー」というサービスがあり(事前予約制)
※夏期のみ、高速バス「毎日アルペン号」で新宿から七倉山荘前まで直通で行くことができます
まいたび|毎日あるぺん号
七倉ダム〜高瀬ダムへのアクセス
七倉山荘より指定タクシーもしくは徒歩−高瀬ダム
下山後は七倉ダム周辺の温泉へ

登山口の七倉周辺には葛温泉があり、いくつかある温泉宿では宿泊だけでなく日帰り入浴も利用できます。湯量が豊富で内湯外湯とも源泉をかけ流し。ゆっくりと登山の疲れを癒して帰ることができます。
北アルプスらしい景色が見れる烏帽子岳に挑戦しよう!

烏帽子岳へのブナ立尾根は急登ですが、危険個所がないため登山経験と十分な体力があれば挑戦しやすいコースです。憧れの「裏銀座縦走コース」の入口だけでも行ってみる価値アリの大展望が待っています。七倉からの周回コースは、上級者であればチャレンジしてみてください。