ちょっとした油断が登山では危険かも・・・。
山岳遭難の理由として多いのが『道迷い』。登山用GPSアプリの普及など、道迷い遭難への対策も進化していますが、依然その数は多いまま。
道迷いは誰でにも起こりうる
遭難や道迷いと聞いても、自分は難しい山には登らない、地図を持っているから大丈夫など、どこか他人事のように感じていませんか?
道迷いは初心者からベテラン登山者まで、登山レベルや山域にかかわらず発生しています。分岐での地図の確認を怠るなどの”ちょっとした油断”が引き金となり、道迷い遭難をしてしまうことも。
今回、2018年8月に山形県朝日連峰の山で道に迷い遭難をした土屋さん(仮名)と救助にあたった山形県警に、当時の心境や様子を聞いてきました(2018年取材時の情報です)。
実際に遭難した人はどんなことを考えていたのだろうか
今回救助された土屋さんは30年の登山歴を持ち、北アルプスの山々も縦走するなど登山経験は豊富。そんな土屋さんがなぜ遭難してしまったのでしょうか?
経験豊富な土屋さんが遭難してしまって原因は?
当時を振り返ってみるとGPSもスマホも携行していませんでしたし、道迷いしてからのリカバリーなどを含め、いろんな油断と甘い行動が重なったなと思いました。
8月4日に入山して沢沿いを進んで、そこで一泊。5日には天気が一転し、雨が降ったりやんだりのあいにくの天気に。朝6時頃に出発したんですが、出発前もあまり丁寧に天気図を確認しなかったですね。
その後、11時頃に沢でルートを間違えたと思った時も3~4時間でわかる所に出られるだろうと思い、間違えたところまで道を戻らなかったんです。いま思えば、なんでこんな行動をしたのかと思うことばかりですね。
遭難してからはどんな心境でしたか?
持っていた地形図も濡らしてしまって使い物にならないし、尾根に出たものの霧が深く何も見えない状態で、自分がどこにいるのか、まるで見当がつかなくなってしまいました。
天気が回復すれば、自分でも対応できると思ったんですが、万が一天候が回復しなかったら救助がさらに遅れてしまうので、救助依頼をする判断を。
ただ体は元気だったので、ここで諦めて救助をしてよいのか?という気持ちも少しありましたね。
救助要請をすると決めてからは落ち着いて行動していたと思います。ココヘリ(※1)というサービスに入っていて、ココヘリの発信機を持っていましたし、電話もつながる状態だったので。
所属の山岳会に連絡をして救助を要請してもらいました。その時に今後の天気予報も聞いておきましたね。
救助依頼をした時間からして捜索が行われるのは翌日になることもわかってましたし、保温や体力の温存などの、待っている間にやっておくべきこともわかっていたので不安な気持ちはなかったです。
※1 ココヘリ・・・ヒトココという小型の発信機を使い、ヘリや地上から遭難者を探すサービスのこと
実際に遭難して気づいたことは?
ココヘリに入っていたので、かなりスムーズに探してもらえたと思います。かなり視界が悪かったんですけど、地上からの捜索でも対岸の尾根からピンポイントで見つけてもらえたので、発見能力はかなり高いと思います。この発信機を持っていればヘリが飛べない天気でも、地上捜索で使えるのがいいですね。
ココヘリは自分を探してもらうものだけど、自分が帰ってこなくて不安になっている家族や探してくれる救助隊の人にとってもメリットがあると感じました。
道迷い遭難の場合は、どこにいるのかを探すのに一番時間がかかります。救助してもらう以上、捜索時間を短くするためにも、ココヘリに入会しておくべきだ思いましたね。価格もそんなに高価じゃないし、軽いからいいですよね。
救助の現場はココヘリで変わったのか
土屋さんは「ココヘリは救助してくれる人のためにもいい」と感じたようですが、実際に遭難救助に関わっている人はどう感じているのでしょうか。
今度は、山形県警察本部地域課 課長補佐の三澤さん(2018年11月取材時)に捜索する側の考えを伺いました。