【冬山の悩み】手先・足先の「冷え」がつらい!
10月後半には名立たる山々で初冠雪を迎え、いよいよ冬山シーズンの到来。低山においてもグッと気温が低くなりました。
寒い時期の登山では、しっかりと防寒をしていても手足が冷えてしまうなんてこともしばしば。「行動しているうちに体はポカポカしてきたのに、手先や足先が全然温まらない……」そんな経験はありませんか? 冷えたままでは力が出ないですし、気分も上がりませんよね。
そこで今回は、つらい末端の冷えを改善する方法を調査。スポーツ科学の専門家に、原因と対策、そして簡単にできるホカホカ術を教えてもらいました。
そもそも、どうして冷える? 体温調整のメカニズム
体が冷えてしまう理由は、大きく以下の2つが考えられます。
【1】筋肉量が少なく、体内で熱を十分に作れていない
私たちは食べ物などから栄養素を取り込み、他の物質を合成したり、エネルギーに変換しています。この体内で起こる化学反応が「代謝」であり、代謝が行われる際に体熱が生み出されます。
代謝は主に、体を動かしたときに発生する「身体活動量」、生きるために最低限必要な機能を維持するための「基礎代謝」、食事をした後に発生する「食事誘発性熱産生(DIT)」で構成されています。中でも「基礎代謝」は代謝の60%を占めており、代謝量の内訳は、約20%以上が筋肉なんです。
つまり、筋肉量が少ないと、生み出せる熱も少ないということ。一般的に男性よりも筋肉の少ない女性の方が冷えを感じやすいのはこのためです。
【2】自律神経の乱れにより血流が悪くなり、体内で作られた熱が全身に上手く届いていない
内臓器官や血管の機能、体温調整をつかさどっている自律神経は、交感神経と副交感神経が互いにバランスを取りながら働いています。血管を収縮させる働きをするのは「交感神経」、血管を拡張する働きをするのは「副交感神経」といったように、1つの器官に対して相反する働きをしているのです。
交換神経は活動時に、副交感神経はリラックス時に活発になります。副交感神経が優位のリラックス状態の方が血圧が安定し、体も温かく感じられます。
一方で、疲れや睡眠不足、不安やストレスを感じると「交感神経」が優位に働き、血管が収縮。血行が悪くなり、手足への血流が必要以上に抑制されてしまうのです。
こうして自律神経のバランスが乱れることで体温調整が正常に行われなくなってしまい、体の冷えに繋がります。
“末端”が冷えやすいのはどうして?
寒冷な環境では、体内の熱を外に逃がさないようにする必要があります。そのため、私たちの体は寒さを感じると交感神経が反応して血管を収縮。血液をあまり流さないようにすることで、皮膚表面の温度を低く保ち、熱が外へ逃げることを防ごうとします。皮膚と外気の温度差が大きいと、熱がどんどん外へと拡散されてしまうため。
そして、脳や心臓など生命維持のために重要な器官の温度を保つことを優先。末梢への血流を抑制し、血液を体の中心部に集中させようとします。手先や足先は心臓から最も遠いだけでなく、血管が細く、収縮するとさらに血流が悪くなってしまう場所。そのため、手足の末端は特に冷えやすいのです。
冷やさないようにすることが大前提! やっておきたい2つの予防
人の体、特に手先や足先は一度冷えるとなかなか温まりません。そのため冷やさないようにすることが重要です。では、登山のときはどうしたらよいでしょうか? まずは、事前にできる末端の冷え対策を2つご紹介します。
【1】3つの「首」を温める
よくいわれるのは、「首」「手首」「足首」を温めること。この3つの首は皮下脂肪や筋肉が薄く、体温を保つのが難しい部位。皮膚の近くを動脈が通っているため、外気の影響を受けやすいためです。
冷えた血液が体内に巡ってしまうと体温が下がり、これ以上冷やさないようにと血管が収縮。前述の通り、末端の冷えに繋がってきます。
冬の登山では、極厚手のウールの靴下や冬用インソール、カイロや手袋で手先・足先の防寒をしていると思いますが、これらは一時的であることも。「手首」「足首」だけでなく、ネックウォーマーやバラクラバで「首」もしっかり保温しましょう。
【2】お腹を温める
生命維持のために重要な器官が冷えると、末端への血流が滞ってしまうことは前述の通り。そうならないためにも、内臓をしっかり温めておく必要があります。腹巻を活用するなど、お腹もしっかりカバーするのが◎。
また、温かい飲み物を持参する人も多いと思いますが、温かければなんでもよいという訳ではありません。コーヒーや緑茶はホットでも過剰摂取しすぎると体を冷やすといわれていますので、冬山には紅茶やほうじ茶がおすすめです。
冷えた手先・足先の血流アップ! 山で簡単ほかほかストレッチ
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