ツエルトって、何ですか?
ドイツ語でツエルト、英語で言えばシェルター。軽量でコンパクトな簡易テントのことです。フレームやフライなどはなく本体の布のみを、トレッキングポールや木を使って張り綱で設営するのが一般的です。
突然の雨、雪や強風、気温の低下などの天候悪化や、日没までに小屋にたどりつけなかったなどの緊急時のビバーク時に、また、軽量化を目的にテントの代わりに使われることもあります。泊まることを前提に作られた、居住性重視のモデルもあります。
いざというときに本当に使える?
軽量性を重視したツエルトは作りがシンプルなため、テントに比べて設営にはテクニックが必要です。
あらかじめテント代わりに使うつもりなら、明るいうちにゆっくりと設営することができますが、稜線で突然の強風に見舞われたとき、テントより難しい設営をすばやくこなすことができるでしょうか。そのままツエルトをかぶって座り込むくらいが精一杯かもしれません。
エム・シェルターならテクニック不要!
そこでおすすめしたいのが「エム・シェルター」。緊急時の切羽詰った状況で、だれでも素早く避難体制をとれるよう、「かぶって座る」ことに特化したボックス型のツエルトです。
「エム・シェルター1ウルトラ・ライト」は大人2人で使用できるサイズ。写真は形がわかるように支えを入れて撮影されていますが、フレームなどはありません。
ボックス状に縫われた生地にベンチレーションが対角線状に2箇所。
底の両端にだけ、黒いシートがあります。頭からかぶって、この黒い部分に腰を下ろすというわけです。
ホントに簡単? 実際の使い方をチェック
説明するほどではありませんが、「被って座る」方法を、実際に行いながら説明しましょう。
まず、めちゃくちゃ小さい!
収納サイズは、直径9 x 長さ12 cmで、350mlの缶を少し太くした感じ。出し入れがスムーズにできるようかなり余裕のあるスタッフバッグに入っているので、ザックのなかではもっとコンパクトに持ち運べます。
①頭からかぶってザックにかける
スタッフバッグから取り出したエム・シェルターを頭からかぶり、おろしたザックにかぶせてしゃがみこみます。
②シートの黒い部分の上にザックを置く
シートの黒い部分の上にザックを置きます。
③反対側に座ってテンションをかける
次にもう一方の黒いシートに腰を下ろせば完了。たったこれだけ。自分の体でテンションをかけて内部の空間を広げます。
思ったより広い!
エム・シェルターのいいところのひとつに、内部空間の広さがあります。ボックス型になっているために、対面側にザックを置くことで顔周りに空間ができ、窮屈な感じがありません。
35ℓのザックを置いても足元に余裕があるので、食事や飲み物を置いたり、衣類の脱ぎ着をしたりすることもできます。
ベンチレーターが座ったときにちょうど顔の位置に来るので息苦しさがなく、ドローコードで開閉できるので温度調節も簡単。のぞき窓としても使えて周りの状況確認にも便利です。
2人でも使用可能
2人で使うときは、向き合って座ります。一緒に頭からエム・シェルターをかぶり黒いシートをつかんでお尻に合わせるようにして座るだけ。
お互いの体でテンションがかかり楽に座れます。中はこんな感じ。
もちろん一般的なツエルトの使い方もできる
その他にも、天井と黒いシートの両側についているループにトレッキングポールをかけて使う方法や、一般のツエルトのように外に付けられたループに細引を通して、木などに吊り下げることもできます。
簡単なだけじゃない、エム・シェルターが使える理由
結露しにくい
ツエルトは1枚の布でできているため、呼吸や体から出る水分、濡れた衣類などの湿気によって結露が発生します。
エム・シェルターももちろん1枚布なのですが、防水・透湿素材を使っているために通気性がいいことと、2箇所あるベンチレーターによって換気が効率的にできるため、結露を抑えることができます。
耐風性がある
簡易的な構造のツエルトは風に弱いのが欠点。うまく張らないと倒れたり飛ばされたりしかねません。その点エム・シェルターは、自分の体で本体を押さえるため、中に入っている限り風で飛ばされることはありません。
強風時でも扱いやすい
とりあえず頭からかぶるのなら普通のツエルトでもあまり変わりがないように思えますが、ツエルトは布のサイズが大きく、強風時にかぶろうとすると体にうまくまとうのが意外と難しいもの。もたもたしている間に風に飛ばされてしまう危険性も考えられます。
エム・シェルターなら袋を両手で持つようにして、強風時にもスムーズに被れます。
息苦しさがない
ボックス型で上部の空間にゆとりがあることと、顔の近くにベンチレーターがあるので息苦しさがありません。雨が降ったらベンチレーターを内側に入れれば、潰れて換気ができなくなることもありません。
出し入れしやすい
スタッフバッグが大きめに作られているため、切羽詰った状況でも簡単に素早く取り出せます。使ったあとも、きれいに畳まず丸めて押し込むだけ。時間がかからず素早く行動できます。
付属物がない
普通のツエルトには、ペグや細引き、ポールなどを別に用意し、一緒に持ち運ばなければなりません。パーツが多いということは、忘れ物や破損の可能性が増えるということ。本体だけで機能するエム・シェルターなら、そんな心配は無用です。
緊急時以外にも、こんなシーンでも使える!
雨の日や寒い季節の休憩・食事時に
歩いていれば温かくても、休憩時は震えるような寒さ。そんなときはエム・シェルターをさっと取り出して被れば、温かくゆっくりと休憩や食事ができます。雨のなかでは難しいコーヒータイムも楽しめます。
トイレの緊急時や着替えに
どうしても適切な場所が見つからないなどの緊急事態でも、携帯トイレとエム・シェルターがあれば切り抜けられます。雨や汗でベースレイヤーを濡らしてしまったときの着替えにも、あっというまに更衣室が出来上がります。
エム・シェルターの弱点は?
用途が限られる
普通のツエルトはそのシンプルな形を利用して、テントやタープとして使ったり、ポンチョのように身につけたりといろいろな使い方ができますが、被って座ることに特化したエム・シェルターには、使い方のバリエーションがありません。
ビバーク時に横になることはできても、足を伸ばしてゆっくり熟睡するのは無理。いろいろに使えるほうがいいのなら、普通のツエルトを選びましょう。ただし、どんな状況でも手早く設営できる技術は不可欠です。
価格が高い
国産のエム・シェルターは、ツエルトとしてはちょっと高め。でも、だれもが使える命を守るための道具として、機能に見合った価格だと言えるでしょう。
緊急時だけでなく休憩時にも使うことを考えれば、使い方がわからなくて出番がないツエルトよりも、安上がりかもしれません。
ツエルトを持つこと、使えることが命を守る
ツエルトを使ったことのある人なら、たった1枚の布がどれだけ温かく、体力の消耗を抑えてくれるかがわかるでしょう。雨ならレインウェア、低温対策ならレスキューシートで代用できるようにも思えますが、自分が守られる空間があることで、心細さがどれだけ和らげられるかわかりません。
グループでひとつあればいいように思えますが、何かのトラブルで自分だけが山中に残されたとき、グループが分裂したときを考えれば、ツエルトは個人で装備するべきもの。たった170gの布1枚が生死を分けるのです。
「エム・シェルター1ウルトラ・ライト」。まだツエルトを持っていない人、持っていても使いこなせない人に、ぜひ手に入れてほしい一品です。
ジュウザ・フィールドギア エム・シェルター1 ウルトラ・ライト(1〜2人用)