遭難しないためや、遭難した時のために登山者に気をつけて欲しいことを教えてくれました。
オールシーズン見つけやすいのは”青”
編:万が一の時、山で見つけやすいのウェアは何色ですか?
中村さん:季節によって変わりますね。春夏だったら山に緑が多いので赤、オレンジ、黄色、青なんかが見つけやすいですね。でも、紅葉の季節だと暖色系は見えにくいですね。なので、青は自然にはあまりない色なので見つけやすいですね。
編:最近多い、黒色のウェアはどうですか?
中村さん:黒は見にくいです!遠くから見たときに岩と間違えちゃうかもしれないですね。
登山道は変わるって、ご存知ですか?
編:道迷いしないために、登山者に知っていて欲しいことってありますか?
中村さん:季節によって登山道が変わるということですかね。
編:ルートは同じでも、登山道が変わる?
中村さん:はい。植物の成長具合で見え方が変わるんです。春に来たときは笹薮が30cmくらいだった。それが6月7月に行ったら1mになっていたりとか。笹薮が短かった時になかった道が、藪が大きくなった時にちょっとした隙間ができて、それを道と勘違いして迷ってしまうということも実際あったんです。
編:僕も昔、六甲山を登った時に春には短かった笹薮が夏に成長していて、全く別の景色だったことに驚いた事があります。
中村さん:そうなんですよね。なので、季節によって登山道の見え方が変わるということを知っていてほしいですね。
1番大切なのは体温管理。そして、自分の安全確保!
編:万が一迷ってしまったり、同行者が怪我や体調が悪くなった時はどうしたらよいですか?
中村さん:無理に下らない。沢に落ちてしまいますからね。その場にジッとしておくか、動けるなら上に登って見つけやすいところに行ってほしいですね。それと電波があれば救助の依頼をしたり、携帯の電源を入れておくとGPS機能で捜すこともできますね。
編:最近ではスマートフォンなど多彩な機能を持ったアイテムがありますもんね。
中村さん:あと大切にしてほしいのは、自分の安全を第一にすることです。どうしても、「何かしなきゃ」と思うんですけど、意外と何もできないものですよ。一番避けなければいけないのは二次災害ですからね。
編:元も子もないですもんね。自分の安全確保以外で何かすることはありますか?
中村さん:一番は体温管理ですね。実際に救助した人でもツェルトで体温管理をして助かった人もいますよ。
編:特別なことではなく、自分の安全を確保しながら体温管理などできることをして、2次災害を起こさないようにすることが重要ですね。
中村さん:体温管理をする上でも火を起こせるものを持っていくと良いですよ。
登山者に持っていて欲しい3つのアイテム
中村さんへのインタビュー中に出た、登山者に持っていてほしいものをご紹介します。
①「ココヘリ」や「ヤマモリ(ヒトココ)」
遭難者はソロの人が多いようです。ココヘリというサービスに入っていれば、ヤマモリやヒトココと呼ばれる電波を発信する子機を使って、ヘリで上空から捜索できるので安心ですね。
※ココヘリは「ヒトココ」を使った遭難捜索サービスです。また、ヤマモリはjROが会員に対して貸与しているヒトココの愛称です。
▼ココヘリに関して詳しい情報はこちら
②多めの水分
中村さんも熱い気温の日に水分不足を感じて不調を感じることもあったようです。体調や気温によって必要な水分は変わりますので、少し大目を意識して持って行きましょう。
▼水分をきちんと取って脱水症状をさけましょう
③体温管理のために、ツェルトやガスバーナー
万が一遭難してまった場合、一番大切なのは体温管理です。そのために、ツェルトや防寒着などを持っておくことが大切です。また、ガスバーナーなどを持っておけば火を起こして暖をとることもできます。
▼登山にオススメのガスバーナー&ツェルトに関して詳しい情報はこちら
遭難は自分だけでなく、家族も不幸にする
最近では、登山スタイルの多様化に伴い、山岳会に入っている一部の人だけでなく誰でも登山を楽しめるようになってきました。不幸にも遭難にあってしまった時、自分だけでなく周りの家族も不安な思いや悲しい思いをしてしまいます。安全に登山を楽しむために、山岳保険に入ったり、jROの山岳遭難対策制度を利用したりして、セルフレスキューについて学んでいきましょう。
■話を聞いた人:中村 富士美さん
山岳遭難の行方不明者捜索をサポートする民間団体 LiSS代表。国際山岳看護師、WMAJ医療アドバイザー、東京青梅市立総合病院外来看護師。遭難事故の不明者について、丁寧な取材をしながら、家族に寄り添った捜索活動を行っている。