グハァ! 足がつった!!!
あなたは登山中、体にトラブルが起きてしまったことはありますか? 下山時に膝が痛くなってしまったり、靴ずれや頭痛、腹痛など何かしらの経験がある人もいるのではないでしょうか。
なかでも意外と多いのが、「足がつってしまった!」という人。足がつったときの悶絶しそうになるあの痛み、できれば避けたいものです。では、足のつりを予防するにはどうしたら良いのでしょうか?
足がつりやすい人にはバナナが良いとか悪いとか聞いたのですが……
足がつるならバナナを食べろとか、いやいやバナナは体に毒で、◯本以上食べると死ぬだとか、バナナにまつわる様々な噂を耳にしたことはありませんか?
登山の行動食としてバナナを食べている人も多いですし、足のつり予防にバナナが良いのか気になるところ。実際のところ、どうなのでしょうか。管理栄養士さん、教えて〜!
管理栄養士に聞いた! 足のつりとバナナの関係
足のつりとバナナにまつわるあれこれを管理栄養士さんに教えてもらいましたので、早速みていきましょう!
そもそも、足がつるのはどうして?
足がつる原因は、筋肉疲労や冷え、ミネラル不足が考えられます。ミネラル不足というのは正直ピンとこないかもしれませんが、ミネラルは筋肉や神経の働きにとても重要な栄養素。
ミネラルの中でも、筋肉を収縮するように筋肉細胞に働きかける役割をしているのがナトリウムとカリウムです。2つのバランスを保つことで、筋肉は正常に収縮活動をしていますが、何らかの理由でナトリウムとカリウムのバランスが乱れると、足のつりに繋がるといわれています。
で、バナナと何の関係があるの?

ミネラルは体内で作ることができないので、食事で摂取する必要があります。一般的にバナナが足のつりに良いとされているのは、カリウムを多く含む食べものだから。現代人はナトリウム(塩分)過多のことが多いので、バナナを食べることでカリウムを取り、バランスを整えるという考え方です。カリウムにはナトリウムを体の外に出しやすくする働きもあります。
カリウムについては通常の食事で過多になることは稀ですが、腎臓機能が低下してる場合は、過剰摂取に注意が必要です。
ということは、バナナは正義!?
「バナナさえ食べておけば安心」ということではないんです。塩分であるナトリウムは汗や尿で体外に排出されます。そのため、登山中は気づかぬうちに不足していることも。汗をかきやすい夏場は特に、カリウムだけでなく、ナトリウムもきちんと補給しなければなりません。
つまりは……?
カリウムやナトリウムといったミネラルは、筋肉を使うことでどんどん失われていきます。不足したまま登山を続けていると筋肉疲労や脱力感が起こり、足がつる可能性が高くなってしまいます。
ですので、登山中に足がつりやすい人はバナナを食べればいいという単純なものではなく、あくまで、バランス良くミネラルを補給することが重要です。全身に栄養素を運ぶために必要な水分を補給する際も、水だけでなく、スポーツドリンクでミネラル類も一緒に摂るとベターです。
ミネラル摂取量の基準については、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」(2020年版)にて公開しています。
厚生労働省|日本人の食事摂取基準
登山に必要な栄養素はミネラル以外にも!
1.たんぱく質(アミノ酸)…筋肉の疲労回復に必要な栄養素。
2.炭水化物(糖質)…活動するためのエネルギー。たんぱく質と併せて摂取することで筋合成が促進される。
3.ビタミンB1…糖質からのエネルギー生成に必要。
4.ビタミンB2…脂質、たんぱく質、糖質の代謝。
5.クエン酸…疲労回復。
6.電解質(ミネラル)…神経系に関与する成分、不足すると筋痙攣や集中力の低下が懸念される。
バナナも状況によっては足のつり予防に効果的!
ミネラルのバランスが乱れていることも足がつる原因の1つだということが分かりました。極論ですが、バナナを食べすぎてカリウムが過剰になってしまったら、足がつりやすくなる可能性もあるということ。
登山中に足がつりやすい人は、ナトリウムとカリウムのバランスをぜひ意識してみてください。バランスを保持するための摂取であれば、バナナも有用です。みなさんの山行が、安全で楽しいものでありますように!
教えてくれた人
大迫 麻由美(管理栄養士)
誠文堂新光社 バテない体をつくる 登山食
▼登山での正しい食事の摂り方は?
▼運動後に摂取したい栄養素は?