山で起こりがちな「トイレの大行列」
山でシビアな問題が「トイレ事情」。よく知られたメジャーな山ではトイレが設置されているところも増えてきていますが、そうではない山ではトイレ自体がないところも多いのが実態です。
あったとしても「大行列で使えない……」「汚れが気になって使いたくない・・」と感じたことのある人も多いのではないでしょうか?
「じゃあ外でこっそりしてしまえばいいんじゃ……?」と言われればもちろんNG。土壌や水質の汚染に繋がり、特に高い山の多くは水源にもなっているため、ちょっとした汚れでも広範囲に影響を及ぼしてしまうことがあるんです。
災害など緊急時の対策にも携帯トイレを!
また大規模な災害が当たり前のように発生するようになった今、ガス・水道・電気が止まり、トイレも使えないという環境もますます現実味を増してきています。
そこで備えておきたいのが「携帯トイレ」です。山での備えをしておくことは、そのまま災害への対策にも繋がります。
ただいざ使ってみたら「使い方がわからなかった……」「思わぬ悪臭が発生してしまった……」というような状況は避けたい所。そこで今回はよく選ばれている7つの携帯トイレを厳選し、その使い方や特徴を調査してみます!
実はこんなにある!携帯トイレのタイプ4つ
一口に携帯トイレといっても実はいくつかタイプがあります。今回は山との相性がいい4つのタイプをご紹介します。
- タイプ①:小さな筒になったタイプ(基本小のみ)タイプ②:大小兼用の手持ちタイプタイプ③:地面にビニールを広げるタイプ(大小兼用)タイプ④:便座もついた大型タイプ(大小兼用)
- 下記で詳しくご紹介していきます。
タイプ①:小さな筒になったタイプ(基本小のみ)
100円ショップでも購入できる、コンパクトな筒状になっているのがこのタイプです。凝固剤が予め入っているため、袋状の口を広げて利用します。使用後はチャックをして、外用の袋に詰めて処分します。基本的には小のみで、大はカバー範囲外です。
タイプ②:大小兼用の手持ちタイプ
両手で抑えることによって、大小ともに使える大きな袋タイプがこちら。両手はふさがりますが、しっかりフィットするため漏れの心配がありません。
タイプ③:地面にビニールを広げるタイプ(大小兼用)
地面に広げて使うのがこのタイプ。モンベルや好日山荘などの登山ショップでもこのタイプが多く売られています。大小兼用で使うことができます。
タイプ④:便座もついた大型タイプ(大小兼用)
タイプ③に折りたたみ式の便座がついたもので、現地で組み立てて使用します。災害時などでの使用を想定しているためサイズが大きく、携行性は低いですが、お子さんがいる登山など、安心したトイレ環境を整えたいときに活躍してくれるタイプの携帯トイレです。
厳選した携帯トイレ7つをチェック!
では山との相性がいい携帯トイレはどれなのか?多数ある携帯トイレの中から、よく選ばれている下記7つの商品をピックアップし、その使用感をチェックしてみます!
タイプ | メーカー | 商品画像 | 商品名 | 定価(税込) | 重さ | 内容物 |
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① | ||||||
| ![]() | プルプル | 242円 | 18g |
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| 110円 |
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② |
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| 1,320円 ※2個入り | 20g |
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③ |
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| 550円 | 100g |
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| 262円 | 38g |
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| ![]() |
| 500円 | 50g |
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④ |
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| 4,180円 | 1,050g |
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今回テストでチェックしたポイントはこちら。
- <チェックポイント>
(1)携行性:持ち運びに適したサイズか
(2)価格:手頃な価格か
(3)使いやすさ:外でもスムーズに使えるか
(4)防臭力:匂いの漏れはないか
(5)袋の強度:破れたりしなそうか
(6)付属品の豊富さ(ポンチョ、ティッシュなど)
なおテストには変化が見えやすいよう、青色に染めたテスト用の使用します。量は成人の平均的な一回の量が200-400mlで有ることを踏まえ、多めの400mlを投入します。また水にはニンニクチューブをたっぷり溶かして、匂いの漏れもチェックしてみました。固形物については紙粘土で表現しています。
※検証を踏まえた、シーン別のおすすめ商品を最初から知りたい!という方は下記をクリックしてください。
タイプ①:小のみの手持ちタイプ
ケンユー 「プルプル」
まずは一度は見たことがあるかもしれないケンユーの「プルプル」から。不織布とポリエチレンをあわせた丈夫な本体と、使用後に包む廃棄用の袋が同梱されています。
受け口はやわらかい素材でできているため、曲線にもしっかりフィット。予め凝固剤が袋の中に入っているため、患部に当ててそのまま使用します。
水を注いだ瞬間からあっという間にゼリー状に!容量は600ccのため400cc入れてもまだ余裕があります。ただ片手で支えるには若干重たくなってくるため、最終的には両手で支えました。
使ったあとはチャックでしっかりロック。専用の白い外袋で包んで完了です。袋が白いため若干中身が透けてるのはちょっと気になる所。また、匂いもほのかに漏れ出してきていました。
- <総評>
(1)携行性:★★★★★
(2)価格:★★★★☆
(3)使いやすさ:★★★☆☆
(4)防臭力:★★★☆☆
(5)袋の強度:★★★☆☆
(6)付属品の充実度:★★★☆☆
<良かった点>
固まるのが早いのはかなり安心でした。受け口のフィット感も高く、こぼす心配も少なめ。価格が安く、手にも入れやすいため、小のみの利用なら選んで間違いのない商品です。
<気になった点>
フィット感が高い一方で片手で使うとだんだん重くなってくるため、量が多いときは両手で使うなどの工夫が必要です。また袋が白いため、中身が若干透けるのが恥ずかしい気持ちになりそうでした。匂いについては小のためそこまで気にしなくて良いかもしれませんが、長期間破棄できないなどの環境だとやや不安になりそうです。
ダイソー「携帯用ミニトイレ」
次はダイソーで100円で購入したこちら。プルプルと同じく、凝固剤が袋の中に入っています。本体はケンユーと似た素材感ですが、ケンユーと比べると若干薄め。やや細身な本体のため、片手でも持ちやすくなっています。一方で口も狭いため、こぼさないよう注意が必要です。
受け口は男性はそのままで、女性は受け口を折り返して使用します。ただ特に折り線などもついていないため、若干形を作りづらく感じました。
注いだ瞬間から固まっていきますが、ケンユーよりはやや緩めな印象。固まるのにもやや時間がかかりました。
使用後は黒いポリ袋に入れて完了。中身が透けないため恥ずかしさはなさそうです。ただ気になったのが匂い‥。外袋に入れた状態でも、かなり匂いが漏れてきました。
- <総評>
(1)携行性:★★★★★
(2)価格:★★★★★
(3)使いやすさ:★★★☆☆
(4)防臭力:★★☆☆☆
(5)袋の強度:★★☆☆☆
(6)付属品の充実度:★★★☆☆
<良かった点>
100円ととにかく安く、店舗も多いため手に入れやすいのがメリットです。本体が細長いため、持ちやすいのもGoodポイントでした。
<気になった点>
匂いが強めに漏れてくるのが一番のネックポイント‥。外袋もチャック部分に引っかかって簡単に破れてしまったため、漏れの観点でもやや不安になりました。登山向きというよりも、安定して保管できるドライブなどで使ったほうが相性は良さそうです。
タイプ②:大小兼用の手持ちタイプ
チカ21 「万能トイレくん」
手持ちの中でも両手で持つタイプがこちら。本体に加えて凝固剤と処理用の外袋がついています。大小兼用で使えます。
使い方は本体を股に挟んで、取っ手部分を持ってグッと引き上げる感じ。両手はふさがってしまいますが、その分しっかりフィットしてくれるため、溢れる心配が少ないのが特徴です。
凝固剤が小袋に入ったまま使うため、このままで大丈夫なのかな?と最初は不安になりましたが、すぐに凝固剤が袋から溶け出し、しっかり固まりました。容量としても1,000ccまでOKなため、400cc+固形物を入れてもかなり余裕を持って使えそうでした。
使用後は同梱のポリ袋に入れて縛って終了。使用後すぐは匂いませんでしたが、少し時間が立つとやや匂いが漏れてきました。
- <総評>
(1)携行性:★★★★★
(2)価格:★★★★☆
(3)使いやすさ:★★★★☆
(4)防臭力:★★★☆☆
(5)袋の強度:★★★☆☆
(6)付属品の充実度:★★★☆☆
<良かった点>
両手で持つことでしっかりフィットし、横から漏れる心配なく使えることが良かったです。受け口が広いため、前と後ろを同時にカバーしてくれるのも良い点でした。これなら若干不安定な足場でも安定して使えそうです。
<気になった点>
両手がふさがってしまうため、お尻をふくときは一度安定した所に置くなど、やや配慮が必要です。また、匂いが漏れて来たのは気になった所。念の為もう一枚ビニールでくるみ、使用後はザックに入れるのは避けて外付けしたほうが良いかなと感じました。
タイプ③:地面にビニールを広げるタイプ(大小兼用)
総合サービス 「Sanita – clean(サニタクリーン)」
一見携帯トイレとは見えないほどおしゃれなパッケージなのがこの「サニタクリーン」の携帯トイレ。凝固剤ではなく、紙おむつのような凝固シートが予め入っているタイプです。ポケットティッシュも同梱されているため、ティッシュを忘れる自信がある私のような人には嬉しい商品です。
<使い方>
使い方は、袋上部の切り取り線を切り取ってから地面に置くだけ。底にシートが入っているため、風に飛ばされにくく、形も作りやすいのが印象的でした。
水を注いでみるとあっという間に吸収。傾けても滴り落ちることはありませんでした。さらに布タイプなため、跳ね返りや嫌な音がしにくいのも嬉しいポイントです。
使用後はチャック付きの分厚めな処理袋に収納。匂いが漏れにくい「エリクシール」というチャックを利用しているようで、匂いは全く漏れてきませんでした。これなら安心してザックの中にも収納できそうです。
- <総評>
(1)携行性:★★★☆☆
(2)価格:★★★★☆
(3)使いやすさ:★★★★★
(4)防臭力:★★★★★
(5)袋の強度:★★★★★
(6)付属品の充実度:★★★★☆
<良かった点>
凝固シートが思った以上に快適でした!跳ね返り、音がしにくいのはもちろん、シートが水分を完全に吸収してくれるため、漏れの心配がないのは大きなメリットです。また匂いが漏れてこないというのも◎。デザインも「携帯トイレっぽさ」を感じさせないため、抵抗なく持ち歩けそうです。
<気になった点>
ややふんわりとした凝固シートが付属していることから、どうしてもかさばってしまいます。軽量化やコンパクトさを重視したい人にはややネガティブに感じられるかも。またティッシュはついていますが、目隠し用のポンチョはついていないため、気になる人は別で用意する必要があります。
モンベル「O.D.トイレキット」
ご存知モンベルからも携帯トイレが出ています。内容物はいたってシンプル。排泄袋と外袋、そして凝固剤の3つのみです。サイズがコンパクトなため、持ち歩きに適しています。
<使い方>
使用方法はビニールを地面に広げて使用したあと、凝固剤を上から振りかける形で処理します。使用後に正面から向き合う必要があるため、ちょっと気になる人もいるかも。
振りかけるとあっという間にゲル化。さっと済ませたいときにこのスピード感は助かります。
処理後は専用袋に収納します。分厚く、チャックもしっかりしているため匂い漏れは全くありませんでした。サイズ感もコンパクトなため、外のポケットに入れても中に収納しても問題なさそうです。
- <総評>
(1)携行性:★★★★★
(2)価格:★★★★☆
(3)使いやすさ:★★★★☆
(4)防臭力:★★★★★
(5)袋の強度:★★★★★
(6)付属品の充実度:★★★☆☆
<良かった点>
さすがモンベルと言うべきか、最低限ながら十分な機能を持った製品でした。コンパクトで軽量なため、「とりあえず一つ持っておこう」と思わせてくれます。匂いが漏れないのは安心ですし、防臭袋のデザインがそれらしくないというのも嬉しいポイントです。
<気になった点>
ただのビニール袋を地面において使用するため、使用中に風で飛ばされないか心配になりました。風のないところを探すか、石などで固定する必要がありそうです。またティッシュや目隠しポンチョはつかないため、別途準備しておく必要があります。
エクセルシア 「ほっ!トイレ」
付属品が一番充実しているのがこの「ほっ!トイレ」です。処理袋はもちろん、ポケットティッシュ、台座となる厚紙、さらに目隠し用のポンチョまで同封されています。過去には富士山で登山者向けに配布されたこともある、実績のある商品です。
<使い方>
使い方は台座となる厚紙を組み立てて、その上にビニールを設置。その中に凝固剤を投入して使用します。
またビニールポンチョがついているため、視線をそこまで気にせず使えます。
ポンチョを使った様子はこちら(中で座ってます)。
凝固剤がタブレットタイプなため、ちゃんと溶けるかなと最初は不安でしたが、注いだ瞬間に溶けて凝固。容量的にも余裕を感じました。
使用後はビニールを縛って携帯ポーチに収納。ポーチが密閉式でないためか、若干匂いの漏れはありましたが、僅かな範囲。凝固剤自体の消臭力が高いようです。
- <総評>
(1)携行性:★★★★☆
(2)価格:★★★★☆
(3)使いやすさ:★★★★☆
(4)防臭力:★★★★☆
(5)袋の強度:★★★★☆
(6)付属品の充実度:★★★★★
<良かった点>
ポンチョからティッシュまで、オールインワンなところが嬉しいポイントです。これ一つ持っていればどんなシーンでも活躍してくれる安心感があります。一式まとめて準備しておきたいという方にはおすすめしたい商品です。
<気になった点>
携帯ポーチが密閉式でなく紐式なため、匂いがわずかながら漏れてしまうのは残念な点でした。また、オールインワンであるため、サイズ感がやや出てくるのも気になるところ。ただ本体とポーチだけ持っていく、というようなシーンに合わせた使い方もできそうなため、サイズ感については調整可能な範囲かなとも思います。
タイプ④:便座もついた大型タイプ(大小兼用)
サンコー 「非常用簡易トイレ」
ダンボールで簡易便座が作れるタイプがこちら。凝固剤と汚物袋が5つずつに加え、ポンチョもついてきます。
<使い方>
使用方法はまずダンボールを組み立て、その上に汚物袋をかぶせます。大人一人が座ってもグラつきがなく、いつものトイレの感覚で使えるのが嬉しいポイントです。凝固剤はあとから振りかけるタイプですが、袋が黒いため中が見えづらく、抵抗感が少ないのもグットポイント。
こんな感じで、いつもの感覚で使えます。
ただ気になるのが使用後に包む外袋がないこと。そのままの状態だと匂いがかなり漏れて来ました。使用後はポリ袋を用意して包むなどの処理が必要です。
- <総評>
(1)携行性:★☆☆☆☆
(2)価格:★★☆☆☆
(3)使いやすさ:★★★★★
(4)防臭力:★★☆☆☆
(5)袋の強度:★★★☆☆
(6)付属品の充実度:★★★★☆
<良かった点>
いつものトイレと変わらない気持ちで使えたのが嬉しいポイントでした。ポンチョがついているため視線もそれほど気になりません。頑丈な構造で繰り返し使えるため、車や家に常備しておくのにピッタリ。持ち歩くのはやや大変ですが、40L程度の登山リュックであれば背面に差し込めるサイズ感でした。お子さんと行く泊りがけの登山など、安心したトイレ環境を整えたいときに最適です。
<気になった点>
匂いを防ぐ外袋がないのはかなり残念なポイント。別途処理する袋を用意するようにしましょう。またダンボールであるため、水には弱いのも気になる所。雨の心配がない日や、室内での使用をメインにすると良さそうです。
状況別のおすすめを紹介!
それぞれ商品の特徴がわかってきた所で、状況別のおすすめ商品をご紹介します。
(1)コンパクトさで選ぶなら
・モンベル「O.D.トイレキット」
・チカ21 「万能トイレくん」
どちらも大小で兼用できながらも、かなりコンパクトで持ち運びがしやすい商品ということでピックアップ。とりあえず小のみで良いならケンユーの「ぷるぷる」やダイソーの携帯トイレもありです。
(2)一式そろえておきたいなら
・総合サービス 「Sanita – clean(サニタクリーン)」
・エクセルシア 「ほっ!トイレ」
付属品の豊富さと、使いやすさで上の2商品を選びました。個人的にはサニタクリーンの凝固シートの使いやすさに感動しました。ただこちらにはポンチョはついていないため、気になる人は別途用意するか、ポンチョ付きの「ほっ!トイレ」を選ぶのが良さそうです。
(3)匂いを一切漏らしたくないなら
・総合サービス 「Sanita – clean(サニタクリーン)」
・モンベル「O.D.トイレキット」
周りに人がいる環境では匂いはかなり気になるもの。上記2商品の密閉袋は本当に優秀で、数時間たったあとでも匂いの漏れは全くありませんでした。匂いの不安から開放されたい場合はこの2商品のどちらかで間違いありません。
(4)いつものトイレ環境を再現したいなら
・サンコー 「非常用簡易トイレ」
サイズの大きさから、持ち運ぶハードルはなかなか高いですが、実際に使ったときの安心感はかなりのもの。パッキングに余裕があり、トイレ環境も妥協したくないときには活躍してくれる商品と言えそうです。また、災害への準備という観点でも一つ持っておけると安心な商品です。
環境保全のためにもしっかりとした準備を!
楽しい登山も、トイレ環境一つで大きく変わるもの。長い山行の中で、「いざ」というときがいつ訪れるかわかりません。
携帯トイレを使うのはなかなかハードルが高いものですが、見た目も機能もかなり洗練されたものが増えてきました。「いざ」というタイミングで山を汚してしまわないよう、しっかり準備しておくようにしましょう!
今回ご紹介した商品
モンベル|O.D.トイレキット
総合サービス Sanita – clean
ケンユー プルプル
チカ21 万能トイレくん
エクセルシア ほっ! トイレ
ダイソー|携帯用ミニトイレ
公式サイトはこちら
サンコー 非常用簡易トイレ