「パラコード」って知ってる?
「パラコード」って知っていますか? 色や柄のバリエーションが豊富な、細いナイロン製の丸紐です。ブレスレットやキーホルダーなど、アウトドアテイストのアクセサリーの素材として目にすることも多いかも知れません。
でも単なるカラフルな紐だと思ったら大間違い。その特徴を知ったら、きっと山に持って行かずにはいられなくなる、便利な万能アイテムなのです!
現代ではそもそもの用途で使われることはなくなりましたが、もともと人の体を吊るすために作られたものだけあって、軽くて丈夫、水にも強いという扱いやすさから、特に海外では、手軽で幅広く使える定番の細紐として、アウトドアのさまざまなシーンで使われています。
アクセサリーなどにも使われるもっとも一般的なものは、太さ約4mm。550ポンド(約250kg)の重さに耐える性能を備えるため、「550コード」 という別名でも呼ばれます。カラーや柄が豊富で、30mで1,000~1,500円程度と、価格が手ごろなのもうれしいところ。
細引ロープと何が違うの?
登山で使う細い紐といえば、「細引き」がありますよね。2~8mmくらいの細いナイロンロープの総称で、アクセサリーコードなどという名前で売られていることも。登山用品店に行くと、1m単位で切り売りしてもらえます。
8mm程度の太さのものは、安全確保のロープワークやレスキュー用として使われることもありますが、4mm程度のものは、物干しの紐やタープ・テントの張り綱としてや、シューズやバックパックの補強などが主な使い方。見た目もパラコードとさほどと違いはなく、どちらも同じ「いろいろな用途に使える便利な細紐」という位置づけです。
しかし細引とパラコードの決定的な違いは、端を切ってみれば一目瞭然。パラコードは、中に7本の芯が入っていて、表皮と芯が独立していているので、簡単にバラして使うことができるのです。
7本の芯はそれぞれが3本のより糸からできていて、さらにより糸をほぐせば、繊維1本分のとても細い糸も手に入れることができます。
活用シーン別に姿を変える、マルチっぷり! パラコードの特徴を生かした使い方
① 取り出した芯を糸として使う
木の枝に引っかかってパンツが破れたなどというときは、パラコードの中芯をほぐして縫い糸にしましょう。バックパックやテントのほつれには、もう少し太い状態で使えば強度を確保できます。1本あればいろいろな太さの糸を用意する必要がないし、ナイロン糸は強度があるので、市販のソーイングセットの糸よりもアウトドア向きです。
食べ物が歯のすき間に挟まっていつまでもとれないときは、撚り糸を細くほぐして、デンタルフロス代わりに。丈夫で滑らかな糸なので、本物と遜色ない使い心地です。
② 芯を抜いて太さを調整する
例えば登山靴の靴ヒモが突然切れてしまったとき、パラコードはぴったりのお助けアイテムですが、少し太すぎて穴に通りそうもないと思ったら、芯を何本か抜いて太さを調節しましょう。
芯を抜いた分だけ強度は落ちるものの、用途に合わせて何種類もの紐を用意しなくても、1本で太さを変えられるので、他にもいろいろな用途が考えられそうです。
そして、パラコードは切り端のほつれ止めが簡単なのも便利なところ。ライターなどで端を軽くあぶって溶かし、つぶすようにして先端を細くまとめれば、小さな穴にもスムーズに通せます。
③ 強度を生かして歩行のサポートに
パラコードは、耐荷重420kgの強度がありますが、これはあくまでも静かにゆっくりと荷重をかけたときの実験値。登山用ロープのように、ぶら下がって崖を下るような使い方をするためのものではありません。
摩擦の影響が強い使い方にも注意が必要でしょう。危険箇所のあるコースを歩くなら、必ず専用のロープを用意しておく必要があります。
それでも、ちょっとしたピンチのとき、何もないのとパラコードが1本あるのとでは大違い。例えば
・鎖やハシゴを登るのに荷物を背負ったままではちょっと不安……というとき、先行の仲間にバックパックを引き上げてもらう
・急な登りでの足を上げられない場所で、木の幹にパラコードをかけて手がかりをつくる
などという場面で、安心して行動するための手助けとして、充分な働きをしてくれるはずです。
1本で多彩な使い道のあるパラコード。ロープ持つほどではないときでも、持っていて損のないアイテムに間違いありません。ただし有効に使うためには、ロープ同士を結ぶ、木にしっかり固定するなどの、登山で必要なロープワークの基本を覚えておきたいですね。
「今日に限って持ってない!」そんなことを防ぐためのおすすめの携行法
パラコードが日本で注目されるようになったのは、ブレスレットが防災グッズとして取り上げられたのがきっかけかもしれません。普段はアクセサリーとして身につけて、災害時など必要なときには、すばやく解いて3mほどのロープ代わりに使えるというもの。バックル部分には、自分の居場所や緊急事態を人に知らせるホイッスルが備えられているものもあります。
完成品も販売もされていますが、作り方は意外と簡単。好みのカラーを選んで、オリジナルを作ることができます。WEBなどで編み方が紹介されているほか、編み方のワークショップなどでも行われているので参加してみるのもいいでしょう。
山にもって行く紐をすべてパラコードに変えるという提案
でも、「せっかく作ったものを、使うために壊すのはちょっとためらわれる……」というなら、登山に持っていく荷物の中にあるあらゆる紐を、パラコードに変えてみるのはどうでしょうか?
サコッシュや帽子のあご紐、携帯やサングラスの落下防止用ストラップなど、改めて見ると意外とたくさんの紐を持ち歩いていますよね。それぞれは短くても、必要に応じて繋げば、ある程度の長さが確保できます。
もちろん最初から使用目的がはっきりしているなら、必要な長さを束ねて持って行けばいいですが、「もしかしたら何かに使うかもしれない」という予備装備としてならこれもあり。手もとにある紐のすべてが高い強度を備えていたら、それだけで心強いですよね。
今回紹介した、太さ4mm程度のパラコード以外にも、同じ構造で中芯の本数が違うものもあるので、太さや強度などを考えて、用途に応じて使い分けるといいでしょう。
他にもカラフルな色を利用して、バックパックの中でまぎれやすい荷物や、屋外で失くしがちなペグなどに結んで目印にしたり、適度なクッション性と濡れに強い特性を利用して、ツールやマグカップなどの持ち手カバーにしたり、アイディアは無限に広がります!
普通のパラコード以外にも、中芯に着火材を仕込んであり火起こしに使えるものや、
約4時間の蓄光性能があり、暗闇でもよく見えるものなどもあり、いろいろなものを組み合わせて使えば、便利で楽しく、安心感もアップするはずです。たかが紐、されど紐。登山に持っていく紐にこだわってみてはいかがでしょうか?
Brotree パラコード 反射材入り 5mm
Soomloom パラコード4mm
アトウッド・ロープ タクティカルコード
SOTO マイクロトーチ ACTIVE