※日経エンタテインメント! 2024年11月号の記事を再構成
注目のバーチャルタレントに、ニッポン放送の吉田尚記アナと一心同体の“バーチャル部下”である一翔剣アナが聞く連載。今回のゲストは、バーチャルライバー事務所にじさんじに所属する謎のいきもの・ルンルンさん。2024年6月にデビュー。同事務所内ではおよそ4年ぶり、通算4体目の非人型ライバーです。わずか3カ月でYouTube登録者数45万人を突破。雑談、歌、ゲームなど幅広く配信をしています。人間に強い興味関心を持ち、さまざまな本から知識を吸収している勤勉家です。また自らのことを「ちょま」と呼びます。
――VTuberになるまでの経緯を教えてください。
ルンルン どこかから地球に落ちてきて、とある研究所に収容されたんです。研究所では本を読むことが好きで、本を通じて「お仕事」というものを知り、いつかちょまも働いてみたいと思っていました。
ただ、お人間さんとは体のつくりが違いすぎて、みなさんのような仕事をするのは難しいだろうと。タイピングができないので、事務作業も難しいですし…。
そんななか、言葉が話せることに目をつけられて、1度研究所からにじさんじへと引き渡されました。今はお人間さんと一緒に暮らしながら、VTuberとして活動しています。
――それまで配信は見ていた?
ルンルン 見ていました。それこそにじさんじ所属の先輩ジョー・力一さん、周央サンゴさんの「いちさんごラジオ」を聴いて、日本語の勉強をしていました。
―――人へ興味を持った理由は?
ルンルン 初めて触れ合った生き物が人間であることが大きいのですが、同時に言葉でコミュニケーションを取れることが興味深いと思いました。誕生日などの記念日を大切にしたり、生活リズムとして仕事の日やプライベートの日と1日を区切ったりしているところも興味深いですね。
いつお祝いしても、休日にしてもいいのに、律義に日を決めているのは面白いです。そういうところが大好きなので、お人間さんになることはできないけど、お近づきになりたいという夢はあります。
興味深い人間の考えと行動
――配信を始めて、リスナーに対して感じたことは?
ルンルン 「これってどういうこと?」と聞いたら、「これはね」と絶対に誰かが答えてくれるんですね。知っているってすごいことなのに、その知識を当たり前のように享受して、偉そうにもせずに教えてくれる。それがすごく不思議です。
知識だけではなく、日々働いている人も料理ができる人も「これが当たり前のこと」という顔をしているところが、あまりにもつつましい。もっと自慢したり、誇りに思ったりしてもいいのに、すごく不思議に感じています。
――ほぼ毎日人間相手に配信。大変さを感じることは?
ルンルン 全くないです。事務所のおかげもあり、毎日たくさんの人が会いに来てくれて、ちょまやリスナーの誰かが疑問に思ったことを、ほかのリスナーの誰かが答えてくれる。ちょまとリスナーさんは配信を通じて、毎日一緒に新しい発見をしていけるので、すごく魅力的です。例えば雑談で冷麺の話をしているとき、リスナーさんの「ととり冷麺にはドングリが使われているんだよ」とコメントから新しい知識を知った瞬間が印象に残っています。その方にとって、大事に持っていたけどこれまで世の中に発表する機会のない知識だったかもしれない。
それを「ここで出したら面白い!」と共有してくれて、ほかのリスナーさんたちが「面白い!」「初めて知った!」となる感覚の共有が楽しかったです。
――配信でリスナーを楽しませるために工夫していることは?
ルンルン 自分自身もリスナーのみなさんに新しい発見を与えられるように、できる限りいろんな本やマンガを読んだり、アニメを見たり、ゲームをしたり、何かしらのコンテンツに触れる機会を多くしています。
「最近、こんなことを知って」「これが楽しくて」と提供できるように、いろんな情報を吸収して、雑談でフィードバックをしていく感覚です。今でも本をたくさん読んでいて、特に谷川俊太郎さんがすごく好きです。最近では『コンビニ人間』(村田沙耶香)や『正欲』(朝井リョウ)といった作品が面白かったです。
言葉そのものが大好きで、いくつか書き溜めてはいるんですけど、まだ世に出したことはないですね。
――今後配信で力を入れていきたいことはありますか。
ルンルン 今はとにかくおしゃべりが好きだから雑談配信を定期的にしたり、混沌が極まっているお人間さんを勉強できるゲーム『龍が如く7』のゲームプレー配信をしたりしていますが、今後は朗読配信やオススメの本を紹介する配信を定期的にできたらと思っています。
お人間さんとは異なる生命体との交流、コミュニケーションを楽しんでいってもらえたら本望ですね。
――ユニット「いずれ菖蒲か杜若」の活動についてはいかがでしょう。
ルンルン ユニットメンバーのみんな、すごく歌がうまい子たちばかりなのですが、ちょまは歌に1番自信がなくて…ユニット活動をしている今でも本当に下手だと思っています。だから、とにかく今はユニットのみんなに追いつくことだけを考えています。
――デビューして間もないなか、格別に注目されています。
ルンルン いろんなものがかみ合った結果を「運がいい」というのだと認識しているつもりなのですが、今の状況はかなり幸運なことだと思います。
疑問に思ったことをそのままにせず、お人間さんが「縁」と呼ぶものをできる限り己で咀嚼(そしゃく)して、コツコツ続けていく。そうしてきたことで、いろんな方に支えていただきました。その積み重ねが今につながっていると思います。