よく言われるように国内IT業界は米国のそれとはかなり異なっています。日本独特の特殊な業界の構造を作り、根付かせたのは、かつての日本IBMです。この業界構造のおかげで日本のビジネス界にコンピュータが一気に普及したといっても過言ではないと思います。けれどもクラウド時代を迎えて、「IBMモデル」ともいうべき国内IT業界が岐路に立たされています。
IBMモデルに代わる新しいITサービスの在り方に転換すべき時期が来ている――。2016年6月1日から3日にかけて開催されたAmazon Web Services(AWS)イベント「AWS Summit Tokyo 2016」で私自身がモデレーターを務めた二つのパネルディスカッションでその思いをあらためて強くしました。
私がモデレーターを担当したのは6月1日(エンタープライズデイ)の「エンタープライズ IT を改革するデジタルトランスフォーメーションとクラウドコンピューティング」と、6月2日(ジェネラルコンファレンス)の「エンタープライズ IT からみたクラウドコンピューティングの課題(エンタープライズ IT とクラウドの間をつなぐもの)」です。パネリストには日本を代表する有力企業や組織で、それぞれITの第一線で活躍されておられる方々をお声がけしました。
初日の参加者は招待客のみだったからか、会場全体の雰囲気は比較的落ち着いていました。とびきりの有名人が集まったせいもあり、私たちのパネルの会場には立ち見も出るほど混雑していました。パネラーの発言もその熱気に負けないほど強烈な内容でした。
NTTドコモの栄藤 稔さん(同社執行役員イノベーション統括部長)には、自社センターにあった大規模システムを全面的にAWS上に移したお話をしていただきました。ひょっとするとNTTドコモがAWSのデータウエアハウスサービス「Redshift」の世界最大のユーザーになるかもしれないとか。全てをAWS上に移すことで、いろいろなものが変化します。アプリケーション開発やセキュリティ管理、ひいては企業文化までも変化していくというのが栄藤さんの主張でした。
日本経済新聞の渡辺 洋之さん(同社執行役員デジタル事業担当補佐兼電子版統括)には「日経電子版」の新しいプラットフォームにAWSを大胆に採用し、マイクロサービスを応用したDevOpsにも取り組んでいる現状をご紹介いただきました。