電力系統に接続して、電力の平準化を図るための大規模蓄電システム(系統蓄電所)が国内で急速に増えている(図1)。これまでは、いわゆる実証実験がほとんどだったが、ここへきて事業化を進めるフェーズに移行した。
大きな背景としては、出力が不安定な再生可能エネルギーが増え、地域によっては発電しても余剰電力となって捨てられるケースが目立ってきたことがある。系統蓄電所が増えれば、再生可能エネルギーの出力の不安定さを吸収する電力の平準化が進む上に、それらの電力の価値の暴落を防げる。
こうした動きはまずオーストラリア、米国、そして中国などで先に顕在化し、特に2022年から2023年にかけては出力ベースでの伸び率が50%を超えた(図2)。日本でも電池の価格が下がり、電力市場の環境整備が進んだ。具体的には、2024年4月から蓄電池が得意とする応動時間†が短い「二次調整力(2)」「二次調整力(1)」「一次調整力」といった市場取引の商品区分における調整力としての電力の調達が始まった(図3)ことである。これにより、電力系統における余剰電力が増えて市場価格が下がった時に電力を蓄電(買電)し、不足気味の時間帯に放電(売電)する「アービトラージ」と呼ばれる運用などで、高い収益を得られる可能性が広がった。
さらには、国や地方自治体の補助金制度なども充実してきた。こうした結果として、事業に参入する企業が急増してきたのである(表1)。
接続検討は既に120GWh超に
資源エネルギー庁は2024年5月29日、「系統用蓄電池の現状と課題」というリポートを公表した。その中で系統蓄電所ビジネスを手掛ける事業者が増えていることを報告し、接続を検討する段階では、既に定格出力ベースで40GW弱に達したことを明らかにした(図4)。一般に、系統用蓄電池の定格容量は定格出力の3~4時間分であることを考慮すると容量ベースでは120G~160GWhに達している計算だ注1)。
ちなみに日本の電力系統における消費電力は平均で約90GW、最大で160GW前後。仮に、これらの接続検討段階の蓄電池すべてが実際に電力系統に接続されると、少なくとも約1時間は蓄電池だけで必要な電力を供給できることになる。
実際には2030年時点で14G~23GWhか
もちろん、接続検討のすべてが実際に電力系統に接続されるわけではない。申し込み後、様々な審査や金融機関の査定などが入るからだ。資源エネルギー庁は、実際に電力系統に接続する契約を結び、稼働する蓄電池はその10~20%だとみている。結果として同庁は、2030年までに国内に導入される系統蓄電所の容量が約14.1G~約23.8GWhになるという推定値を明らかにした。
表1の事業者の蓄電容量の合計は日経クロステックの推定で、2027年度までで約6GWh、2030年度までで約8GWhと、資源エネルギー庁の推定値よりも少ない。事業計画を持ちながら一般向けには公表していない事業者が相当数いるようだ。