韓国 旅客機事故 179人死亡 国内航空会社の同型機を緊急調査へ

韓国南西部の空港で乗客乗員179人が死亡した旅客機の事故を受けて、韓国政府は、国内の航空会社が保有する同型機すべてを対象に、整備状況などを緊急に調査すると明らかにしました。

韓国南西部のムアン(務安)空港で29日、韓国のLCC=格安航空会社「チェジュ(済州)航空」のボーイング737型機が胴体着陸し空港の外壁に衝突した事故では、救助された2人を除いて乗客乗員179人が死亡しました。

韓国政府の事故調査委員会は、アメリカのNTSB=国家運輸安全委員会や旅客機の製造元であるアメリカの航空機メーカー、ボーイングなどと合同で事故原因を調査することにしていて、NTSBとボーイングの担当者は今夜、現地に到着する予定だということです。

一方、ボーイング737型機をめぐっては、30日朝、ソウル近郊のキンポ(金浦)空港から南部チェジュ島に向かっていた「チェジュ航空」の同型機が、離陸直後に車輪の異常が確認されキンポ空港に引き返したと、韓国の複数のメディアが報じました。

韓国の国土交通省は30日午後の記者会見で、国内の航空会社が保有する同型機すべてを緊急で調査すると明らかにしました。

調査の対象は、「チェジュ航空」を含む国内の6つの航空会社が保有する101機で、エンジンや今回の事故で正常に作動しなかったとされる車輪など主要な装置の整備状況を30日から1月3日までの間に調べるということです。

さらに国土交通省は、担当者3人を「チェジュ航空」に派遣したことを明らかにし、安全対策について監督を強化する方針を示しました。

【動画】衝突までの「9分間」に何が

韓国の国土交通省は30日の記者会見で、旅客機が最初に着陸の許可を得てから胴体着陸後に外壁に衝突するまでの9分間について、当時の詳しい状況を説明しました。

それによりますと、29日午前8時54分ごろ、管制塔は旅客機に対し北向きで滑走路に着陸することを許可しました。

その3分後の午前8時57分、管制塔は鳥が衝突するバードストライクに注意するよう旅客機に伝えました。

その2分後の午前8時59分、旅客機のパイロットは管制塔に対し、バードストライクが起きたと伝えた上で、救助を求める遭難信号を出し、着陸をやり直すと通知しました。

旅客機は着陸せずに上空で180度旋回し、午前9時1分、管制塔は当初とは逆の南向きで滑走路に着陸することを許可しました。

1分後の午前9時2分、車輪が正常に作動しないまま胴体着陸し、午前9時3分ごろ、滑走路の先の空港の外壁に衝突しました。

また、滑走路は、全長が2800メートルありますが、旅客機は1200メートルの位置から胴体着陸したとしています。

国土交通省は、旅客機の高度などより詳しい状況については、フライトレコーダーを解析するなどして調査を進めるとしています。

事故の前48時間で13回運航か 現地報道

韓国の複数のメディアは、事故を起こした旅客機が、事故の前の48時間で、あわせて13回、運航していたと報じました。

この間に、日本の長崎やタイのバンコク、中国の北京や台湾の台北など、韓国も含めてあわせて6つの国と地域の8つの空港を行き来したとしています。

また、通信社の連合ニュースは、事故を起こした「チェジュ航空」の1機あたりの1か月の平均運航時間は418時間で、韓国国内にある航空会社の中で最も長かったと報じています。

一方、「チェジュ航空」は29日の記者会見で、無理な運航は行っておらず、旅客機の整備にも万全を期していたと強調しています。

空港近くの体育館 涙を流す関係者の姿も

ムアン空港近くの体育館には、30日から犠牲者を追悼するための場所が設けられています。

正面の祭壇には、亡くなった百数十人の名前が書かれていて、訪れた人たちは、花や線香をたむけたり、手を合わせたりして悼んでいました。

なかには、涙を流す関係者の姿もありました。

この体育館には、大統領の職務を代行するチェ・サンモク(崔相穆)副首相兼企画財政相のほか、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表も訪れました。

ボーイング社 “支援する用意できている”

アメリカの航空機メーカーのボーイングは声明を出しました。

この中でボーイングは遺族に対し哀悼の意を示した上で「われわれはチェジュ航空と連絡をとっていて彼らを支援する用意ができている」としています。

韓国政府 4日までを国家の哀悼期間に

ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の職務を代行するチェ・サンモク副首相兼企画財政相は29日夜、各省庁の担当者らを集めた会議を開き、来月4日までを国家の哀悼期間と定め、各地に犠牲者を悼む場所を設置するとともに、遺族の支援に全力を尽くす考えを示しました。

空港ターミナルには乗客の家族集まる

事故のあとの29日午後、ムアン空港のターミナルには安否の確認や身元の確認をするために旅客機に乗っていた人たちの家族が大勢集まっていました。

集まった人たちはテレビやスマートフォンでニュースを確認していましたが、発表される死者数が増えるにつれて、涙を流したりうずくまったりする様子が見られました。

また当局の担当者らが集まった家族に対して最新の状況などについて説明していましたが、一部の家族からはさらに詳しい状況を求める声などがあがっていました。

ターミナルにはテントが設置され、家族たちが待機していました。